落乱
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いつものように転んで、周囲に散らばった包帯に涙目を浮かべた時。
手を差しのべてくれた君との出会いが、僕の人生で最大の幸運だったと。
恋した今ではそう思うんだ。
『伊作くん、大丈夫?』
「うん、いつもありがとう。」
彼女には、かっこわるいところばっかり見られてしまっているなぁと苦笑いを浮かべる。
かといって、かっこいいところがあったかというと、あまり思い浮かばないのだけれど。
『どうせなら見てないところで転んでほしいな。心配しちゃう...。』
「あはは、ごめんね。」
『あ、転んでほしいとは思ってないからね?』
「わかってるよ。スズネちゃんは優しいもの。」
できることなら、毎日でもスズネちゃんに会いたい。
だけど、この想いを自覚してからというものの彼女と会う機会が激減している気がする。
これも不運なのかなぁ。
「うわっと!?」
なんて一人で考えてたところで、また穴に落ちてしまった。
今日は二回目だ...。
「はぁ。」
落ち込んでいてもしょうがない。
自力でなんとか脱出を試みる。
こんな不運でも、彼女に見られていないのが救いかな...なんて。
そう、僕には不運が付き物だ。
『「わぁ!?」』
今度は彼女にぶつかってしまった。
彼女の持っていたお茶が、宙に飛んで降りかかる。
僕だけならまだしも、彼女にまで!
「ごめんっ!大丈夫!?火傷はしてない?倒れた時、どこか痛めてない?は、早く医務室へ!!」
『だ、大丈夫だよ伊作くん。私っ。』
「大丈夫じゃなかったらどうするの!」
有無を言わさず、スズネちゃんを抱えて医務室に向かって走った。
きっと僕は、真っ青だったに違いない。
ー
『本当に、大丈夫だから。』
幸いにも、彼女に怪我はなかった。
彼女が言うにはお茶も冷めていたのを入れ直そうとした時だったらしい。
言われてみれば、僕も熱くはなかった。
「でも、もしも熱いお茶が入ってて、君に怪我までさせてたらと思うと...。」
『それはもしもの話でしょ?』
「でも僕、不運だし。君も、巻き込んじゃうかもしれない。」
皆が言ってる。
僕は不運で、僕の入ってる委員会も不運で、それに。
君とは会うたびに、迷惑をかけてしまっている。
「だ...から。」
僕はおそらく、君を幸せになんかできないんだ。
『伊作くん。』
泣いてしまっている僕の手を、彼女が優しく包みこむ。
『私の幸運って、なんだと思う?伊作くんに会えたことだよ。』
「.....ぇ?」
『私ね、伊作くんと話すのが楽しいんだ。一緒にいると、幸せな気持ちになれるの。』
「僕といると、幸せ?」
『最近は滅多に会えないから、会えた時は幸運だなぁなんて思ったりして。』
「そんなこと...ないよ。」
君は、本当に優しい。
僕なんかのために、そんな言葉。
「僕、いつも迷惑かけてるし。」
『その分、いっぱい助けてくれたじゃない。』
彼女はまっすぐ僕を見つめた。
『私は伊作くんといるのが幸せなの。伊作くんと会えない方が嫌だよ。不運だよ。』
「スズネちゃん...。」
『伊作くんは違うの?私と会うのは不運かな?』
そんな、わけ。
「そんなわけ........ないじゃないかぁ…っ。」
大好きだ。大好きなんだよ。
「僕は...君が好きなんだから...!」
ーーーー
…さて、後日談。
泣きながら告白した話を聞いていた食満は、さっそくスズネに出くわしていた。
伊作は相変わらず出会えていないようなのにと、哀れみながら会釈する。
『ちょうど良かった。来週の予定、聞いても良い?』
「来週?聞いてどうするんだ。」
まさか伊作とのデートに付き合ってほしいなんて話でもあるまいに。
疑問に思って問いかけると、少し小声でこう答えられた。
『来週、雨だと困るかもしれないでしょ?』
間をおいて、合点がいく。
不運な伊作を誘ったもんなら、デート当日は雨になるかもしれないと予想したらしい。
つまりは、来週デートに誘う予定だけど、雨が降って困る用事はないだろうか。
彼女はそう聞きたいのだ。
「そうだな、来週は用具の...いや、それは今週に回そう。ぜひ来週にしてくれ。」
『やけに来週を推しますね。』
「いやぁ、ちょっとな。」
『あー...なんだかわかった気がします。』
潮江が関わってるな、と悟った様子。
そんなスズネに改めて、問いかけた。
「なぁ、あいつが不運だと思うんだったら、どうして付き合おうと思ったんだ?」
彼女は、それはもう幸せなんだといった顔でニカッと笑う。
『好きって気持ちは、不運なんかに負けてられませんから!』
なんてったって、伊作との恋が成就するまでに彼女はものすごく頑張ったのである。
どんな不運でも対応できるように準備したり。
なかなか会えないものだから、出会ったら不運になりそうな状況を何度も計画してみたり。
とまぁ、そんな努力があることを、後に食満は知ることになる。
彼女は不運も味方につけるのだ。
潮江「なんだか、最近になって外出する日は雨に降られてばかりいる気が...。」
七松「てるてる坊主にでも嫌われたか?」
長次「もそ...。」
〆
手を差しのべてくれた君との出会いが、僕の人生で最大の幸運だったと。
恋した今ではそう思うんだ。
『伊作くん、大丈夫?』
「うん、いつもありがとう。」
彼女には、かっこわるいところばっかり見られてしまっているなぁと苦笑いを浮かべる。
かといって、かっこいいところがあったかというと、あまり思い浮かばないのだけれど。
『どうせなら見てないところで転んでほしいな。心配しちゃう...。』
「あはは、ごめんね。」
『あ、転んでほしいとは思ってないからね?』
「わかってるよ。スズネちゃんは優しいもの。」
できることなら、毎日でもスズネちゃんに会いたい。
だけど、この想いを自覚してからというものの彼女と会う機会が激減している気がする。
これも不運なのかなぁ。
「うわっと!?」
なんて一人で考えてたところで、また穴に落ちてしまった。
今日は二回目だ...。
「はぁ。」
落ち込んでいてもしょうがない。
自力でなんとか脱出を試みる。
こんな不運でも、彼女に見られていないのが救いかな...なんて。
そう、僕には不運が付き物だ。
『「わぁ!?」』
今度は彼女にぶつかってしまった。
彼女の持っていたお茶が、宙に飛んで降りかかる。
僕だけならまだしも、彼女にまで!
「ごめんっ!大丈夫!?火傷はしてない?倒れた時、どこか痛めてない?は、早く医務室へ!!」
『だ、大丈夫だよ伊作くん。私っ。』
「大丈夫じゃなかったらどうするの!」
有無を言わさず、スズネちゃんを抱えて医務室に向かって走った。
きっと僕は、真っ青だったに違いない。
ー
『本当に、大丈夫だから。』
幸いにも、彼女に怪我はなかった。
彼女が言うにはお茶も冷めていたのを入れ直そうとした時だったらしい。
言われてみれば、僕も熱くはなかった。
「でも、もしも熱いお茶が入ってて、君に怪我までさせてたらと思うと...。」
『それはもしもの話でしょ?』
「でも僕、不運だし。君も、巻き込んじゃうかもしれない。」
皆が言ってる。
僕は不運で、僕の入ってる委員会も不運で、それに。
君とは会うたびに、迷惑をかけてしまっている。
「だ...から。」
僕はおそらく、君を幸せになんかできないんだ。
『伊作くん。』
泣いてしまっている僕の手を、彼女が優しく包みこむ。
『私の幸運って、なんだと思う?伊作くんに会えたことだよ。』
「.....ぇ?」
『私ね、伊作くんと話すのが楽しいんだ。一緒にいると、幸せな気持ちになれるの。』
「僕といると、幸せ?」
『最近は滅多に会えないから、会えた時は幸運だなぁなんて思ったりして。』
「そんなこと...ないよ。」
君は、本当に優しい。
僕なんかのために、そんな言葉。
「僕、いつも迷惑かけてるし。」
『その分、いっぱい助けてくれたじゃない。』
彼女はまっすぐ僕を見つめた。
『私は伊作くんといるのが幸せなの。伊作くんと会えない方が嫌だよ。不運だよ。』
「スズネちゃん...。」
『伊作くんは違うの?私と会うのは不運かな?』
そんな、わけ。
「そんなわけ........ないじゃないかぁ…っ。」
大好きだ。大好きなんだよ。
「僕は...君が好きなんだから...!」
ーーーー
…さて、後日談。
泣きながら告白した話を聞いていた食満は、さっそくスズネに出くわしていた。
伊作は相変わらず出会えていないようなのにと、哀れみながら会釈する。
『ちょうど良かった。来週の予定、聞いても良い?』
「来週?聞いてどうするんだ。」
まさか伊作とのデートに付き合ってほしいなんて話でもあるまいに。
疑問に思って問いかけると、少し小声でこう答えられた。
『来週、雨だと困るかもしれないでしょ?』
間をおいて、合点がいく。
不運な伊作を誘ったもんなら、デート当日は雨になるかもしれないと予想したらしい。
つまりは、来週デートに誘う予定だけど、雨が降って困る用事はないだろうか。
彼女はそう聞きたいのだ。
「そうだな、来週は用具の...いや、それは今週に回そう。ぜひ来週にしてくれ。」
『やけに来週を推しますね。』
「いやぁ、ちょっとな。」
『あー...なんだかわかった気がします。』
潮江が関わってるな、と悟った様子。
そんなスズネに改めて、問いかけた。
「なぁ、あいつが不運だと思うんだったら、どうして付き合おうと思ったんだ?」
彼女は、それはもう幸せなんだといった顔でニカッと笑う。
『好きって気持ちは、不運なんかに負けてられませんから!』
なんてったって、伊作との恋が成就するまでに彼女はものすごく頑張ったのである。
どんな不運でも対応できるように準備したり。
なかなか会えないものだから、出会ったら不運になりそうな状況を何度も計画してみたり。
とまぁ、そんな努力があることを、後に食満は知ることになる。
彼女は不運も味方につけるのだ。
潮江「なんだか、最近になって外出する日は雨に降られてばかりいる気が...。」
七松「てるてる坊主にでも嫌われたか?」
長次「もそ...。」
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