落乱
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最近出来た、美味しいと評判の団子屋。
今日も大繁盛で、お昼頃には評判を聞きつけた客で賑わっていた。
そんな店の様子を、遠くから密かに観察している影が一つ。
その影の人物こそ、フリーの売れっ子忍者として活躍している山田利吉であった。
「今日はいつもより人が多いな。」
ひっそりと隠れて何をしているのかというと、だ。
忍者の仕事で、怪しい者が立ち寄っている団子屋のことを調べている、という訳ではなく。
『いらっしゃいませー!』
「よっ!お団子3つね。」
『お団子3つですね。かしこまりました!』
彼が熱心に見つめているのは、団子屋で働く看板娘。
名はスズネ。
そう、彼は今まさに恋の真っ最中なのだ!
「(相変わらず元気が良くて素敵な人だ。)」
スズネはいつも元気で明るく、また気が利くところもあることから人気があり、団子でなく彼女を目当てに来る客も少なくない。
利吉もスズネのそんなところに惹かれた一人だ。
それならば遠くで見ていないで、とっとと団子屋に入れば良いのだが、そう簡単な話ではない。
忙しい時に話かける訳にはいかないし、かといって人が少なくても彼女は声をかけられやすい。邪魔者は多いのだ。
そのため、様子をうかがいながらタイミングを見計らっているのである。
ついでに、悪い虫が近づいてないかもチェックしていたり。
「おっと、そろそろかな。」
人が少し減ってきたのを確認し、団子屋へと近づいていった。
スズネは利吉に気づくと、再び笑顔で出迎える。
『あら利吉さん!いらっしゃい。いつものですか?』
「あぁ。」
『ギリギリでしたね、ちょうど利吉さんの分で売り切れなんです。』
本当は計算どおりなのだが、「それはよかった。」と言って利吉は座る。
お茶を渡された後しばらくして、大体の人がいなくなった頃に団子が運ばれて来た。
『今日は私のおごりです。』
「え?いいのかい?」
『この間、絡まれていたのを助けてくださったじゃないですか。だからそのお礼です。』
「お礼なんて良いのに。」
『そういう訳にはいきませんよ、贈り物までいただいてしまいましたし。』
「わかりました。じゃあ今回はありがたく。」
それは数日前のこと。利吉は偶然スズネがいかにも悪そうな連中につっかかれているのを見かけた。
もちろんすぐに駆け寄って追い払い、その後ちゃっかりプレゼントまで渡していた。
「やっぱりスズネさんのいれたお茶は美味しいです。」
『そんなことないですよ。普通のお茶です。』
「少なくとも、私にとっては特別ですけどね。」
人もほとんどいなくなり、世間話に花を咲かせる。
結構アプローチを仕掛けているのだが、彼女はなかなか攻略できない。
とはいえだいぶ仲良くなってはいるので、ここからが本番だとばかりに利吉は張り切っていた。
「そういえば、近くに美味しいと噂のうどん屋さんができたらしいですね。」
『あ、知ってます!ずっと気になってたんですよ!!』
ちなみに彼女が噂のうどん屋のことを気にしていたというのは、事前に団子屋の主人から聞いてあった情報だったりする。
「よろしければ一緒に食べにいきませんか?」
『いいんですか!?喜んで!!!すごく楽しみです。』
利吉は喜ぶスズネの顔を見て思わず微笑む。
特に進展しなくても、この笑顔が見れるだけでいいなという思いにふけながら、またお茶を飲む。
『ところで利吉さん、お仕事は何をされているんですか?』
「それは・・・秘密です。」
『ふふっ、そうですか。』
『じゃあ、私も秘密です。』
「え?」
意味深なことを告げ、スズネは楽しそうに店の奥へと戻ってしまう。
気になりはしつつも、自分の秘密も思いも明かしていない利吉は深く追及しないことにした。
その言葉の意味は、あと少しの時が過ぎてから知ることになる。
そう、忍者とは忍ぶ者なのです。
〆
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主人公も忍者でした。という話。
後にそれを知って無事に両思いです。