・うつし身
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食満「伊作。おい、伊作!」
伊作「・・・あ、ごめん。何?」
食満「ったく、しっかりしろよ。」
留三郎に声を掛けられて、ハッとする。
いけないいけない、ついぼーっとしてしまったようだ。
もっと注意しないと。
食満「お前なんか変だぞ?まだ調子悪いなら休んどけよ。」
伊作「うん。心配させてごめんね。」
気分転換にと言い訳をして外に出て、池まで来た私は水面を覗き込んだ。
伊作「どうして、こんなことになっちゃったのかな。」
水面に映っていたのは私ではなく、伊作という少年。
ー私は、スズネだ。伊作じゃない。
何故か忍術学園の生徒になっていた。
目覚めてみれば知らない場所で、知らない人になっていて。
最初はどうなるものかと心配だったけど、なんとか誤魔化せている。伊達に忍者はやっていない。
けど、いつまで誤魔化せるか。いつまで、このままなのか。
現実なのかも疑いながら戸惑いと不安にさいなまれて過ごしていた私の元に、予想もしていなかった人物が現われた。
雑渡「やぁ、伊作くん。」
タソガレドキの組頭。
私の勤めていた城の、敵だ。
『ど、どうも。』
雑渡「久しぶり、驚かせちゃったね。なんかいつもと様子が違うみたいだけど、大丈夫?」
『あっはい。ちょっと今、調子が悪くて。すみません。』
雑渡「いやいや、こっちも急だったからね。たまたま近くに用事があったから寄ってみたんだ。」
思わず身構えるも、それなりの態度で接してみれば、どうやら正解だったらしい。
この【少年】とこの人は、たまに会う程度には仲の良い間柄のようだ。
相手が相手だし、慎重に対応しなければ。
雑渡「はぁ。」
『どうしました?なんだか疲れているようですけど。』
雑渡「いや、この頃仕事が大変でね。」
そう言って遠くを眺めて再び、ため息をついた。
この人も、こんな表情見せるんだな。
この人と会ったのはこれが初めてじゃない。
とある戦で、彼は突然私の目の前に現われて言ったのだ。
「ねぇ、君気に入ったよ。タソガレドキに来ない?」
組頭直々にスカウトをしに来るとは思わなかった。
一体私の何が気に入ったのかわからなかったけど、それはすごく嬉しいことだった。
でも、私はもう別の城の忍。一生仕えていくと決めたから、その誘いは断った。
なのに何度も何度も、彼は諦めずに私をスカウトしようと現われたっけ。
雑渡「だけど、そろそろ片付きそうだよ。」
『そう、ですか。』
私のことなんて、覚えてないんだろうな。