落乱

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昼の学食。

一人席についていたスズネを見つけて、食満は顔をほころばせた。


スズネ!」


声をかけてから、当然のように隣に座る。


「今日はA定食にしたんだな。」

『うん。今日も分け合いっこする?』

「当然!すぐとってくる。」


なんとも近い距離感に、呆れたような笑みを浮かべたのが数名。
同級生が「いつもあんな感じなのか?」と聞いてみれば、食満が「当たり前だろ」と即答した。


「だって、俺たち付き合ってるんだからさ。」


理解力のある人物は、その言葉だけで腑に落ちる。
「だって同室じゃないか」と伊作を助け続けてきた彼である。
義理堅いというか何と言うか。
同室、というだけでそれなのだから、付き合っている彼女は尚更だ。
手取り足取り構ってしまうのも仕方のないことである。


立花「とはいえ、構いすぎだろ。」


それでも、現状をよく知っている立花が異議を唱える。
毎日手紙を贈ったり、暇さえあれば会いに行ったり、お揃いの鉄双節棍を渡したり、二人だけの暗号を作ったり、二人だけの矢羽音を考えたり。
付き合ってるなら当然、とも言えなくはないが。どうも度が過ぎている気がする。


『私も驚いてはいるんだよね。ここまで大事にしてくれるなんて思ってなかったから。』


食満はまるで気にした様子もなくご機嫌な様子で、スズネの隣へと座る。


「今度はいつ出掛けようか。新しく出来た店にでも行ってみるか?せっかくだから、この間買ったお揃いの髪紐でもつけて...。」


だからそういうところだよ!と周囲の心の声がツッコミをいれる。
別に悪いことじゃないが、そこがまた厄介なところである。


立花「スズネ、お前からもなんとか言ってくれ。」

『んー。』

立花「よーっく考えろ。こんな調子で、これから大丈夫か!?」

『これからって、いうと。』


「ふ、夫婦になったら、か!?」


顔を赤くしながら動揺する食満。

そんなこと言ってねーよ、と周囲は呆れた目で見ていた。

というか今さら照れる意味とは。


「そ、そんなことになったら。そうだなどうすれば。」


今以上にどう尽くせと悩む食満に、こっちが聞きたい...いや聞きたくない、と呆れた目線が集まる。
ただ一人、スズネは悩む食満を見かねて思いだしたことを呟いた。



『夫婦になったら、毎日一番におはようって言えるらしいよ?』



間をおいて、食満は机に突っ伏した。


「お前ほんと...好き。」


もう勝手にしてくれと、立花がうなだれたあたりで、食堂のおばちゃんの「早く食べなさい」というお叱りの声が届いたのだった。





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