落乱
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『鉢屋先輩、お願いがあるのですが。』
「何だスズネ、素顔なら見せないぞ。」
近頃やけに絡んでくる奴がいる。
絡んでくる理由はだた一つ、私の素顔が見たいから。
断り続けているにも関わらず、スズネは会うたびに素顔を見せろと言ってくる。
それしか言うことないのかよ。
『見せてくれないんですか?』
「そう簡単に見せられるもんじゃないんだって。」
『でもどうしても見たいんですよ先輩の素顔!一回で良いですから。』
「だから無理だって!」
そう言って私はその場から逃げ去る。
こんな感じのやり取りが続いてるのが現状だ。
「またスズネちゃんが?」
「そうなんだよ、全くよく懲りないよな。」
あまりにもしつこいんで、雷蔵に相談をしてみた。
雷蔵もスズネと会ったことはある。
俺と一緒にいた時なんだが、その時も素顔を見せろと言ってきた。
そういう訳で、雷蔵もスズネがどんな奴なのかは一応知ってる。
「それだけ、三郎の素顔に興味があるってことだよね。」
「だけど、一度も何かされたことがないんだよなぁ。何度も頼めば、いつかは見せてくれると思ってんのか?」
私の素顔が知りたい奴なんて山ほどいるし、スズネ以外にも多くの奴らに素顔を見せてほしいとせがまれてきた。
中には強行手段に出る奴も少なく無かったが、ほとんどの奴らは諦めた。
でもスズネは、諦めることもなければ、無理やり素顔を暴こうともしない。
逃げても追ってきたことがない。
本当に私の素顔を見たいのかと疑いたくなる。
変わり者だ。
「何もしてこないんなら別に良いじゃない。放っておけば。」
「だけどなぁ。」
「会いたくないなら会わないようにすればいい。変装すれば誰だかわからないんだし。」
「そうはいっても、俺としては。」
「・・・三郎、もしかして君。」
「スズネ、また来たのか。」
『こんにちは。つかぬ事をお伺いしますが、鉢屋先輩ですか?』
「あぁ、そうだ。」
スズネはいつも私が本当に鉢屋三郎なのかを訪ねてくる。
そして確認をしてから、本題に入る。
『鉢屋先輩、どうしたら素顔を見せてくれますか?』
「どうしたらって言われてもなー。」
今ではこうやって普通に会話をしているが、最初の頃はまるで関心がなかったから、適当に相手をしていたものだ。
でもあまりにしつこいもんだから、いろいろ考えるようになった。
何と言えば諦めるのか、いつになったら飽きるのか。
そのうち段々と興味が沸いてきて、それからまともに話すようになった。
それがいけなかった。
『誰も知らない先輩の素顔がどうなってるのか知りたいです。』
スズネは興味津々といった目で私を見てくる。
きらきらとしていて、自分をまっすぐに見つめるその目を直視して、ドキッとしてしまったことがある。
『なんだったら、今日は先輩の顔の特徴を言うだけでも結構です。』
顔の面を剥がそうとしないもんだから、挑発のつもりで顔を触らせたこともある。
でも許可をもらわないと剥がそうとも思わないようで、ひたすら確認するように触るだけだった。
よく考えたら今まで誰にも触らせたことなんてなくて、急に気恥ずかしくなって止めさせた。
「よく諦めないよな、こんなに断ってるのに。」
『だって、気になって仕方無いんです。』
なにより、こいつの言葉をよく聞くようになってしまった。
スズネの言葉は熱心というより熱烈で、時々告白でもされてるんじゃないかと思わされる。
『先輩の素顔が気になって夜も眠れません。』
「お前なぁ;」
他のくの一より、話をしている間柄。
だけどまさか、興味が深まるどころか愛情が芽生えてしまうとは!!
実は内心緊張もしてるし、ときめいてもいる。この気持ちを隠すので精一杯だ。
「なぁ、どうして私の素顔に興味があるんだ?」
『え?・・・・・・・・んーーー。』
「そこ悩むのかよ。」
雷蔵からは「彼女も好きなんじゃない?」と言われたが、正直わからなかった。
「直接聞いてみたら」と言われたから、それとなく聞いてみたらこれだ。
『何となく、ですかね。』
「そんな理由じゃ駄目だ。」
『じゃあ鉢屋先輩はどうして顔を見せてくれないんですか?』
「・・・秘密。」
あえて理由を上げるなら、お前に興味を持っていて欲しいから。
だからまだ見せる訳にはいかないんだ。
私自身に、興味を持つまでは。
「理由によっては見せてやるよ。」
『本当ですか!?』
「そ、そんなに喜ぶな!!///」
ただ、私の気持ちがばれるのも時間の問題かもしれない。
〆