白熊cafe
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路上を歩きながらスズネはため息をついていた。
彼女の頭を悩ませていたのは、グリズリーのことである。
「どうかしたの?スズネちゃん。」
『あ、しろくまさん。』
偶然にも、最近お世話になっているしろくまさんと鉢合わせした。
思い切って、相談してみることにする。
『実は、グリズリーさんからの嫌がらせというか、悪戯に困ってまして。』
「悪戯って、何かされたの?」
『その、いろいろと。』
グリズリーとの過去を振り返る。
ミスを笑われたり、隙さえあれば驚かしたり、頬をつねってきたり。
自分を困らせることを楽しんでいるようだった。
一番酷かったのは、「映画見ようぜ!」と誘われて見せられたのがホラー映画だったことだ。
苦手だと言ったのに、無理やり見せられたのは拷問以外の何物でもなかった。
『私、そろそろ限界なんです。』
「スズネちゃん、それはね。」
しろくまが何かを言いかけたところで、後ろから走ってきたバイクが真横に急停止する。
「二人で何してんだ?」
バイクに乗っていたのは、まさに話題にしていたグリズリー本人。
スズネは、獲物を見つけたと言わんばかりの彼の目に思わずひるむ。
「ったく。なんでまたしろくまと一緒なんだよ。」
憎たらしそうに彼は呟く。
どうも彼はスズネがしろくまと一緒にいることが気に食わないようだった。
『(悪戯しにくいからなんだろうけど。)』
「まぁいい。スズネ、もっと面白いとこ連れてってやるから来いっ。」
スズネはグリズリーに引っぱられて強引に後ろに乗せられそうになる。
『い、いえ。結構ですから。』
「遠慮すんなっての。」
『(遠慮じゃないのにっ。)』
前にも同じようなことがあった。
「しっかり捕まらないと振り落とされるぞ」と
威圧されたので、いつ落とされるかと不安の中で必死に彼にしがみついたのをよく覚えている。
しかも着いたのは強面ばかりの彼のバーで、どう考えても自分にはふさわしくない場所に連れ出す意味がわからない。
あんな思いはもうたくさんだった。
「し、しろくまさんっ。」
思わず、しろくまさんに助けを求めてしまった。
「ちょっと待ってよグリズリーくん。」
「あ゛?なんだよ。」
しろくまさんが声をかけてくれたが、グリズリーの機嫌が悪くなったのが分かる。
スズネは自分のせいで揉め事になったらどうしようかとハラハラする。
「グリズリー君。意地はってないで、好きな子にはもっと優しくしないと駄目だよ。」
「なっ!!馬鹿言うなっ!別に好きなんかじゃねぇ!!」
わかりきっていたはずの言葉が、スズネの胸に突き刺さる。
グリズリーはしろくまさんからの忠告を聞かずにバイクを走らせようとした。
「ほら行くぞっ・・・て。」
が、スズネを見て固まった。
彼女が、ぽろぽろと涙を流している。
「スズネ!?!?」
突然なスズネの泣き顔に驚き、グリズリーは激しく動揺する。
慌てて彼女を下ろして様子を伺う。
「な、泣くな!おい、どうしたんだよ。何で泣いてるんだよっ。どっか怪我でもしたのか!?俺のせいなのか!??」
元気を出せと背中や肩を叩いてみても、訳やら何を聞いても彼女は泣くばかりでグリズリーは更に狼狽える。
「なぁおい、何か言ってくれよスズネ!~~~しろくまぁ!!」
ついには彼も泣きながら相棒に助けを求めていた。
「…意気地無しー。」
どこかでみた風景だなと思いながらも、しろくまさんは「だから言ったのに」とため息をついた。
「乱暴に扱わないで、優しくしてあげなくちゃ。」
叩いてどうにかなるのは古いテレビぐらいなんだからと思いながら彼女の背中をさすってやれば、グリズリーも同じようにした。
頭も優しくなででみせると、「こ、こうか?」と言わんばかりに不安そうな顔でまた同じようにマネをする。
『き、気を使わないで、いい、です。』
落ち着いてきたのか、スズネは泣きながら言葉を出した。
『嫌いだってことは、十分、わかりましたから。もう、放っておいてくださぃ。』
そこで、やっと泣いてる理由を彼らは理解できた。
彼女は前から不思議に思っていた。
周囲の人からはグリズリーが悪い人、もとい悪い熊ではないという評判はたくさん聞いていた。
それなのに、どうして自分にはあんなに意地悪なのか。
もしかして嫌われているのではないか?
グリズリーの「好きじゃない」という発言が、彼女の中でその疑問を確信にしたのだった。
「違ぇんだっ。俺は、ただお前が…なのに。」
『…?』
「っだああああ!!俺は何て馬鹿野郎なんだ!!」
突然の雄たけびに、スズネは驚く。
「好きな奴を泣かすだなんて。最っ低じゃねぇか。」
「え、え?」
驚きのあまりに、涙もいつの間にか止まっていた。
『好き、って?私のこと?』
「そうだよ。俺は、お前が好きなんだ。」
顔を真っ赤にしてグリズリーはそう答えた。
だがスズネはいまだに信じられない。
『でも、さっきは好きじゃないって。』
「グリズリーくんは、素直じゃないから。」
しろくまが丁寧に説明してくれた。
好きだけど、内気なスズネはなかなか近寄ってくれない。
素直になれないグリズリーが関わるには意地の悪い接し方をするしかなかったのだと。
「グリズリーくんは、照れ屋だから。」
「人の心情を勝手に語ってんじゃねぇ!あ、いや。嘘じゃねぇんだけどよ。」
今度はグリズリーが恥ずかしそうに、改めて自分の口から事情を話した。
自分には乱暴だったり、ちゃかしたりする接し方ぐらいしかできなかったこと。
「ホラー映画見せたのも、抱きついてくれたらなとか期待してのことだったんだよね?」
「だから人の心情を勝手にばらすな!!」
あれよあれよとばらされていくグリズリーの本音。
その全てが自分を好いてのことだったと知らされて、スズネは困惑する。
「とにかく、今まで悪かった!すまない!!」
土下座をする彼。
スズネはその彼の横に、転がったまま放置されたバイクがあったことを思い出した。
バイクを放ってまで、こんなにも自分のことを想っていてくれたのだ。
それがわかって、スズネはやっと彼を信じられる気がした。
『本当に、私のこと嫌いじゃないんですか?』
「嫌いじゃねぇ!大好きだ!!!」
ようやく腹をくくったらしい彼の告白に、胸が熱くなるのを感じる。
『良かった。』
また、涙が出た。
今度は安堵によるものだったが、また彼が慌て始めたのを見て、笑う。
意地もプライドも捨てた彼は、滑稽ながらも愛らしく見えたのだった。
〆
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内気で大人しいヒロインと意地悪なグリズリー夢でした。
意地悪するグリズリーさんのイメージがなかったので難問でしたね。お気に召さなかったらすみません;
女の子が泣いてるのに狼狽えて自分も泣きながら「どうすりゃいいんだ!?」とばかりに振り返るシーンは個人的に結構しっくりしました。いぬのおまわりさんに似てますね。
彼女の頭を悩ませていたのは、グリズリーのことである。
「どうかしたの?スズネちゃん。」
『あ、しろくまさん。』
偶然にも、最近お世話になっているしろくまさんと鉢合わせした。
思い切って、相談してみることにする。
『実は、グリズリーさんからの嫌がらせというか、悪戯に困ってまして。』
「悪戯って、何かされたの?」
『その、いろいろと。』
グリズリーとの過去を振り返る。
ミスを笑われたり、隙さえあれば驚かしたり、頬をつねってきたり。
自分を困らせることを楽しんでいるようだった。
一番酷かったのは、「映画見ようぜ!」と誘われて見せられたのがホラー映画だったことだ。
苦手だと言ったのに、無理やり見せられたのは拷問以外の何物でもなかった。
『私、そろそろ限界なんです。』
「スズネちゃん、それはね。」
しろくまが何かを言いかけたところで、後ろから走ってきたバイクが真横に急停止する。
「二人で何してんだ?」
バイクに乗っていたのは、まさに話題にしていたグリズリー本人。
スズネは、獲物を見つけたと言わんばかりの彼の目に思わずひるむ。
「ったく。なんでまたしろくまと一緒なんだよ。」
憎たらしそうに彼は呟く。
どうも彼はスズネがしろくまと一緒にいることが気に食わないようだった。
『(悪戯しにくいからなんだろうけど。)』
「まぁいい。スズネ、もっと面白いとこ連れてってやるから来いっ。」
スズネはグリズリーに引っぱられて強引に後ろに乗せられそうになる。
『い、いえ。結構ですから。』
「遠慮すんなっての。」
『(遠慮じゃないのにっ。)』
前にも同じようなことがあった。
「しっかり捕まらないと振り落とされるぞ」と
威圧されたので、いつ落とされるかと不安の中で必死に彼にしがみついたのをよく覚えている。
しかも着いたのは強面ばかりの彼のバーで、どう考えても自分にはふさわしくない場所に連れ出す意味がわからない。
あんな思いはもうたくさんだった。
「し、しろくまさんっ。」
思わず、しろくまさんに助けを求めてしまった。
「ちょっと待ってよグリズリーくん。」
「あ゛?なんだよ。」
しろくまさんが声をかけてくれたが、グリズリーの機嫌が悪くなったのが分かる。
スズネは自分のせいで揉め事になったらどうしようかとハラハラする。
「グリズリー君。意地はってないで、好きな子にはもっと優しくしないと駄目だよ。」
「なっ!!馬鹿言うなっ!別に好きなんかじゃねぇ!!」
わかりきっていたはずの言葉が、スズネの胸に突き刺さる。
グリズリーはしろくまさんからの忠告を聞かずにバイクを走らせようとした。
「ほら行くぞっ・・・て。」
が、スズネを見て固まった。
彼女が、ぽろぽろと涙を流している。
「スズネ!?!?」
突然なスズネの泣き顔に驚き、グリズリーは激しく動揺する。
慌てて彼女を下ろして様子を伺う。
「な、泣くな!おい、どうしたんだよ。何で泣いてるんだよっ。どっか怪我でもしたのか!?俺のせいなのか!??」
元気を出せと背中や肩を叩いてみても、訳やら何を聞いても彼女は泣くばかりでグリズリーは更に狼狽える。
「なぁおい、何か言ってくれよスズネ!~~~しろくまぁ!!」
ついには彼も泣きながら相棒に助けを求めていた。
「…意気地無しー。」
どこかでみた風景だなと思いながらも、しろくまさんは「だから言ったのに」とため息をついた。
「乱暴に扱わないで、優しくしてあげなくちゃ。」
叩いてどうにかなるのは古いテレビぐらいなんだからと思いながら彼女の背中をさすってやれば、グリズリーも同じようにした。
頭も優しくなででみせると、「こ、こうか?」と言わんばかりに不安そうな顔でまた同じようにマネをする。
『き、気を使わないで、いい、です。』
落ち着いてきたのか、スズネは泣きながら言葉を出した。
『嫌いだってことは、十分、わかりましたから。もう、放っておいてくださぃ。』
そこで、やっと泣いてる理由を彼らは理解できた。
彼女は前から不思議に思っていた。
周囲の人からはグリズリーが悪い人、もとい悪い熊ではないという評判はたくさん聞いていた。
それなのに、どうして自分にはあんなに意地悪なのか。
もしかして嫌われているのではないか?
グリズリーの「好きじゃない」という発言が、彼女の中でその疑問を確信にしたのだった。
「違ぇんだっ。俺は、ただお前が…なのに。」
『…?』
「っだああああ!!俺は何て馬鹿野郎なんだ!!」
突然の雄たけびに、スズネは驚く。
「好きな奴を泣かすだなんて。最っ低じゃねぇか。」
「え、え?」
驚きのあまりに、涙もいつの間にか止まっていた。
『好き、って?私のこと?』
「そうだよ。俺は、お前が好きなんだ。」
顔を真っ赤にしてグリズリーはそう答えた。
だがスズネはいまだに信じられない。
『でも、さっきは好きじゃないって。』
「グリズリーくんは、素直じゃないから。」
しろくまが丁寧に説明してくれた。
好きだけど、内気なスズネはなかなか近寄ってくれない。
素直になれないグリズリーが関わるには意地の悪い接し方をするしかなかったのだと。
「グリズリーくんは、照れ屋だから。」
「人の心情を勝手に語ってんじゃねぇ!あ、いや。嘘じゃねぇんだけどよ。」
今度はグリズリーが恥ずかしそうに、改めて自分の口から事情を話した。
自分には乱暴だったり、ちゃかしたりする接し方ぐらいしかできなかったこと。
「ホラー映画見せたのも、抱きついてくれたらなとか期待してのことだったんだよね?」
「だから人の心情を勝手にばらすな!!」
あれよあれよとばらされていくグリズリーの本音。
その全てが自分を好いてのことだったと知らされて、スズネは困惑する。
「とにかく、今まで悪かった!すまない!!」
土下座をする彼。
スズネはその彼の横に、転がったまま放置されたバイクがあったことを思い出した。
バイクを放ってまで、こんなにも自分のことを想っていてくれたのだ。
それがわかって、スズネはやっと彼を信じられる気がした。
『本当に、私のこと嫌いじゃないんですか?』
「嫌いじゃねぇ!大好きだ!!!」
ようやく腹をくくったらしい彼の告白に、胸が熱くなるのを感じる。
『良かった。』
また、涙が出た。
今度は安堵によるものだったが、また彼が慌て始めたのを見て、笑う。
意地もプライドも捨てた彼は、滑稽ながらも愛らしく見えたのだった。
〆
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内気で大人しいヒロインと意地悪なグリズリー夢でした。
意地悪するグリズリーさんのイメージがなかったので難問でしたね。お気に召さなかったらすみません;
女の子が泣いてるのに狼狽えて自分も泣きながら「どうすりゃいいんだ!?」とばかりに振り返るシーンは個人的に結構しっくりしました。いぬのおまわりさんに似てますね。