「え、別れたの？」

『うん。捨てられ、ちゃった。』


悲しそうに俯きながら、スズネちゃんはそう言った。

今日は僕と彼女だけの、静かなしろくまカフェ。
店に入って席についた彼女が、なんだか元気が無さそうだったので僕は無言でコーヒーを差し出した。
すると彼女は、付き合っていた彼氏にフラれたことを僕に告げたのだった。

捨てるだなんてもったいない。
むしろ僕が拾ってもらいたいぐらいなのに。


『大好き、だったのにな。』


コーヒーに口を付けることなく、スズネちゃんは胸の内をつぶやいていく。
彼女が付き合っていた彼氏は見たことがある。
ペンギンくんたちも言っていたけど、見た目も中身もチャラい感じの男性だった。
彼女の話を聞いていくうちに、どうやら他に仲良くしていた女の子と付き合うから別れて欲しいと言われたようだった。


「そっか。」


大変だったね。辛かったね。
そう思いながら何て言ったら良いだろうと悩んだけど、余計なことは言わないことにした。
彼女の話なら、付き合っていた間のことでも何でも、何時間でも付き合える。
だって、ここに来てくれたから。
僕に会いに来てくれたから。


『何が、いけなかったんだろう。』


誰にも話せなかったことを、誰かに言いたかったことを、話してくれている。
それだけで僕は十分だったし、できるだけ彼女の好きなようにしてあげたかった。

話したいこと、いっぱいあるんだよね？
いいよ、好きなだけ話してごらん。
僕は君の全てを受け止めるから。


『結構、頑張ったのに。』


そうだね。
綺麗になる努力してたよね。
服装も、髪型も。一生懸命にオシャレして。
プレゼントだって、喜ぶものを贈りたいからって僕のカフェでバイトして。
君がどれだけ努力してきたか。
僕はよく知っている。


『なんで、どうして。』


いたたまれなくなって、僕は彼女の流した涙をハンカチで拭った。
さすがに、泣いた顔は放っておけなかった。
密かに下げた冷め切ったコーヒーの代わりに、用意していた新しいコーヒーを差し出す。


「どうぞ。」


暖かいコーヒーに、かわいい白熊のラテアートを施してみた。
彼女が一瞬だけ、目を瞬かせたように見えてホッとする。


「今回は、隠し味に塩を入れてみました。」


そんなジョークをかましてみると、彼女がくすりと笑ってくれた。。
うん。やっぱり笑顔が一番だよね。
彼女はラテアートがもったいない、と言いながらも一口。


『しょっぱいです。』


そう言いながら彼女が笑う。
少しでも元気になってくれたことが、とても嬉しかった。


「ねぇ、スズネちゃん。」


ここで、本題に入る。



「彼と別れたなら、今度は僕と付き合ってみない？」


他に気になる相手がいないなら。


「僕じゃ、だめかな？」


当たり前のことを言うように、さらりと告白してみた。
本当はドキドキしてるくせに、隠して余裕なフリをする。

どんな理由でもいいからOKしてほしい。すぐにでも返事が欲しい。
だってずっと前から。ずっとずっと前から。


君のことが好きだったんだ。





〆

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リクエストで、チャラい元彼に捨てられて涙を流すヒロインを慰めるしろくまさん夢でした！
いろいろ考えた結果、しろくまカフェは他キャラと交えた話が多かったので今回はしろくまさん主軸にしてみました。
たまには二人っきりもいいですね！
リクエストどうもありがとうございました。