◆THE STRAY CHILD
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『あれ?いない。』
干からびた死体と別れてホテルに戻って来たスズネだったが、フロントにグレゴリーはいなかった。
変わりにいたのは、カウンターをあさって遊ぶ子供。
「あれ?もしかしてお客さん?」
『いえっその、お客さんっていうか・・・グレゴリーさんに用があって。』
「ふーん。おじいちゃんなら見回り中だよ。」
『そうなんですか。わかりました、ありがとうございます。』
ホテルの支配人がいないのではしょうがない。
スズネは帰ってくるまで待つことにする。
「ねぇねぇ、おじいちゃんに用って何なの?」
『えっと、できればここで働きたいなと、思いまして。お金無いので。』
「敬語なんていーよ。ここで働きたいなんて人、珍しいなぁ。他に行く当て無いの?」
『え?』
「あれ?違った?」
『違わなくは、無いけど。』
道に迷ってホテルの外を歩き回ってはみたものの墓地ばかりで建物が無く、寝泊りできるような場所は見つからなかった。
そういう意味では【行く当てが無い】というのは正しい。
しかし子供の言い方はまるで、違うことを意味しているように聞こえた。
とりあえず、気になったことがあるので子供に聞いてみることにする。
『おじいちゃんって言ってたよね。支配人さんの孫なの?』
「そうだよ。」
『おじいちゃんと一緒に働いてるの?』
「時々お手伝いしてあげてるんだー。偉いでしょ。」
本当はお手伝いと言う名のおせっかいや悪戯ばかりなのだが、スズネが知るはずもない。
『そうですね。』と答えると子供は機嫌を良くしてキャハハと笑う。
「僕、ジェームス。君は?」
『私はスズネ。』
「へぇー、スズネっていうんだ。スズネはさ、お手伝いしたことある?」
『あるよ。でも、仕事の手伝いはしたことないな。仕事の話も聞いたこと無いし。』
「何の仕事してるか知らないの?」
『うん。』
思い返してみても、両親から仕事についての話を聞いた覚えがまるでなかった。
何の仕事をしていたのだろう、と考え込むスズネを見て、ジェームスは問いかけてみる。
「じゃあ、他に知ってることは無いの?」
『他に?』
「仕事以外でさ、知ってることって何かある?」
『なんだろう。』
「無いの?」
『うーん・・・。』
「誕生日とかさ。」
『知らない。』
「もしかして、名前も知らないの?」
『知らないや。』
「名前も知らないの?変なの~。」
『そう言われても、知らないことは知らないし。』
さも当然のように、スズネは言う。
『名前なんて聞いたことない。【お父さん】と【お母さん】としか、私も周りの人も言わなかったもん。』
話を聞いて、ジェームスは笑った。
「やっぱりスズネって面白いね。キャハハ!」
『お、面白い?』
「うん!スズネって変わってて面白い。そうだ、僕からもここで働けるように頼んであげるよ!!」
『え!?そんな!悪いよ!!』
「それじゃさっそく出発ー!」
有無も言わさずにジェームズはスズネの腕を掴んでひっぱる。
ジェームスに振り回され、戸惑いながらもスズネはその後をついて行った。
『でも、私ちゃんと働けるかな?』
「大丈ー夫、簡単簡単!結構面白いよ?採用決まったら一緒に遊ぼうね、スズネ。」