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自分の姿を見て満足そうに笑うスズネ。
こいつは、いつだってそうだ。
『ねぇ、あなたにも見えてるんでしょう?ミラーマン。』
「もちろん、俺にも君の真実の姿は見えてるぜ。」
『酷く滑稽なものよねぇ、素敵だわ。』
鏡に映るのは、いたって普通の女。
しかし彼女は俺に映ったその姿を、狂った者の成れの果てだと思っているようだ。
彼女の眼は、曇ってしまったんだろうか。
それとも、それが彼女にとっての真実なのか。
『この姿が見れることが、本当にすごく嬉しいわ。だって、やっと普通じゃなくなったんだもの。そう、あの時の私とは違うのよ。』
彼女の事は散々聞かされたものだから、よく知っている。
彼女は、周りに慰めてもらえる存在への憧れと嫉妬心を抱いてきたらしい。
だから彼女は今ここにいる。
そして、俺の鏡を見てからというものの、そこに映る自分の姿を凝視しては陶酔しているのだ。
『皆、私を放っておいたことを後悔すればいい。私が病むと知らずに行った自分の罪に苦しめばいいのよ。』
「そうだな、君は病んでいる。」
この世界に来た奴は皆そうだ。
病んでいることを喜ぶお前もまた、その一人。
スズネは他の鏡には見向きもせずに、ただ真実の姿のみを求めて俺の元へと訪れる。
そして君は自分の姿を見つめて、さも愛しそうに俺に触れては笑うんだ。
『それ、どうしたの?』
ある日、いつものように真実の鏡を見せてやったのだが、彼女の反応が違った。
「それって何だ?」
『鏡が割れてる。』
「あぁこれか。ある客に真実の姿を見せてやったらやられたんだよ。」
『それだけのことで?』
「お前とは違うんだよ。」
大抵の奴は皆そうだ。自分の真実の姿を見て動揺する。
あの時は忠告までしたってのに、イスを投げつけられた。望んだのはそっちだろうに。
お前だって本来なら醜い姿を望んでたんだから、普通の姿が映ればそうしてても可笑しくないんだがな。
お前の眼は、まだ曇り続けているのか。
『でも、鏡を割ることは無いと思うわ。酷い客。』
「そうかい。」
『それにしても、あなたって目がそこにあったのね。知らなかったわ。』
その時、スズネは初めて【俺】を見た。
『血が流れてる。痛い?』
「こんなの、大したことないさ。」
スズネの眼が、俺の眼をとらえる。
その目は、驚きや悲しみといった表情を見せる。
くすんでいるように思えたその眼は、まだ輝きを残しているように見えた。
『鏡が本体なの?』
「今更そんな事聞いてどうする。」
『だって・・・もしそうなら、あなたに触れないように気をつけないと。』
「なんでだ?」
『いつか、誤って割ってしまいそうなんだもの。』
そんな事を気にするあたり、スズネは本当に普通の奴なんだと思わされる。
「スズネ、お前はそんなこと気にしなくて良いんだよ。」
実際、スズネが病んでても病んでなくてもどうでもいい。
お前だって、自分が苦しんでいると理解してくれる奴さえいれば良いんだろ?
「俺はお前が、俺を見てくれるだけで良いんだ。その分だけお前が望む姿を見せてやるからよ。」
だって、その間はずっとお前を独占できるんだからな。
どんなくだらない話でも何でも聞いてやるから
だからお前は、俺だけを見ていれば良い。
〆
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