GHS
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「惚れたぜ、セニョリータ!俺様の女にならねぇか?」
突然見知らぬ男に求婚されれば誰だって戸惑うはずだ。
それも、自分の部屋のドアを壊して入って来た男ならば。
その男は私へのプレゼントにバラの花束を持って来たのだけれど、正直嬉しくもなんとも無い。
なにせ、私はつい先日バラに襲われかけたばっかりだった。タイミング悪いにもほどがある。
『えっと。あの、困ります。』
どうしたものかと悩みながら出した返事を聞いて、その男は「何でだ!?」と言って私を掴もうとした。
それは別に良いのだけれど、その男はサボテンなのだ。つまり体中が棘だらけな訳で・・・絶対痛い!
それに気づき、私はとっさに近くのイスで殴ってしまった。
男はそれで気絶してしまう。
正当防衛、ってことになるのかしら?この場合でも。
相手は特に怪我も無く気絶で済んだ訳だし、私も身を守るために思わずしてしまったことだ。うん、しょうがない。
よって、この時の私の返答や行動はそう間違ったものでは無かったはずだ。
そのはずだったのだが、なぜこんなことになってしまったのだろう。
「スズネ、覚悟しなさい!!!」
私は今、サボテンの女の子に睨みつけられている。
あの後すぐ部屋から逃げ出して倉庫に隠れていたのに、どうして居場所がばれたのかしら。ジェームスか?
とりあえず、現状を把握する。
あの子、あの男の知り合いなのよね?
ってことは仕返しに来たと考えて良いはず。
やっぱり、気絶させちゃったのがまずかったかな。
「あんちゃんの純情を踏みにじるなんて許せない!!」
『ちょ、ちょっと待って!』
とりあえず、このままでは何をされるかわからない!話し合いを試みてみよう。
『いきなり告白されて困っただけ!あなただって、見ず知らずの人に急に好きだって言われてすぐにOKできる!?』
「それなら、あんちゃんと付き合え!」
いや、だから困りますってば。
どんな人なのかもわからないのに付き合うとかできないでしょうが。ここの住人なら尚更だ。
でも彼女は有無を言わせずに、それを実行に移す気らしい。
『とにかく!どんな人なのかを知ってから検討しても遅くないと思うの!!』
彼女だって、あの男が大切だからこんなことをしているのだ。私がどんな人物だか知りたいだろう。
そうやって、説得をし続けてやっと彼女を納得させることができた。
が、
「会いに来たぜ!セニョリータ!!!」
それからというものの、この男は毎日のように私に会いに来くるようになった。
名前はカクタスガンマンというらしい。
会うたび会うたび口説くわプロポーズするわで結構鬱陶しい。
他の住人よりは、マシな人だということは知ったけど。
『お願いだから触らないで、あんまり近寄らないで。』
「うぅ、相変わらずセニョリータは冷たいな。」
『話してあげるだけありがたく思ってよね。』
それでも、私はまだこの男のことが信じられない。
愛なんて幻想だ。という言葉のように、その愛が永遠だなんて保障はないもの。
『あなた、こんな私のどこが良いの?』
「そりぁあ全部に決まってるだろ!スズネの冷たい所も、そっけない所も全て愛してる!!」
この男の言うことはこんなことばかりだ。
何で惚れたのかと聞けば、「一目見て、運命だと感じたのさ!」と言う始末。
それを聞いたカクタスガール(あの子が妹だったとは!)も私と同じような反応だった。彼女も少しはまともらしい。
こんな惚れ方をする人を信じろというのは無理がある。
何より、私は愛というものがよくわからない。
恋愛に興味なんてなかったし、異性を好きになるという感情はいつのまにか消えてしまったのである。
そんな私が、こんな男を好きになれるのだろうか。
そう思っていたのだけれど
「こっちだセニョリータ!!」
カクタスガンマンに誘導されて部屋に逃げ込む。
というのも、キャサリンに採血されそうになったので慌てて逃げ来たところにこの男に出くわしたのだ。
普段はヘタレなくせにキャサリンに立ち向かって、私を庇って怪我までした。
まさかこんな一面があったとは思わなかった。普段からこれぐらいかっこよければいいのに。
カクタスガンマンの部屋に非難させてもらって、キャサリンがいなくなったことを確認した私は、お礼に彼の怪我を治療する。
棘が怖いが、そもそも私のせいだしね。
『ありがと、おかげで助かった。』
「せ、セニョリータのためなら、当然さ!」
何でもないさ!と言いたげにしているけれど、体が震えている。
安心したからか、それがどうも面白くなって笑ってしまう。
『何言ってんのよ、無理しちゃって。』
「っ!///」
『何?どうかした?』
「あっいや。お、お前の笑顔・・・・・その、かわいいなって思って。////」
『え?』
カクタスガンマンは、そう言って顔を赤くして目を逸らしてしまう。
こっちも初めてまともな告白を聞いたものだから、驚きと同時に照れくさくなってきた。
これはもう、惚れても仕方が無いのかもしれない。
『あのさ。』
「なっ!なんだ!?」
『私に一切触らないんだったら、付き合い始めてもいいわよ?』
「っ・・・セニョリータ!」
話を聞いて、内容を理解したらしいこの男は目を輝かせた。しかも泣いてる。
こんな返事でも、そんなに喜んでくれるものなのかと感心する。
「愛してるぜ!!セニョリータ!!!!」
そう言って、抱きしめようと飛び出してきた。
『今の話聞いてないでしょ馬鹿っ!!』
そうして私は、近くにあった樽を投げつけた。
前にもあったわね、こんなこと。
「す、すまねぇ。今後は気をつける。」
全く、この調子ではいつまた抱きつこうとするかわかったもんじゃない。
まぁ、もしどうしても抱きつきたいと言い始めたら棘を全部切ってしまおう。そうしよう。
今切ってしまわないことが、私なりの優しさだ。
〆
ーーーーーーー
蛇足
今回はアニメ通りの展開として(?)体がサボテンであることを重視していますが、今後は全無視にする可能性が高いです。
その方がやれること多いですしね。