- シェフ -
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最近のシェフの料理は、見た目は変わってはいないが普通に美味しいものばかりだ。
普通というより、以前まで作っていた料理より美味しくなった気がする。
料理が美味いのは別に問題無い。だが、喜ばしいという結論で済ませて良いことでは無いのだ。
シェフは客に毒を与えては苦しむ顔を見るのが好きだったはず。
そんな彼がどうして美味い料理しかださなくなったのだろうか。
シェフの変化に疑問を持ったグレゴリーは直接聞いてみることにした。
なにせ、彼の料理は客をじわじわと苦しめるのに最適だったからだ。
「シェフ、少々よろしいですかな。」
「・・・なんだ。」
ハーブを摘んでいるところへ話しかける。
料理の邪魔をされることを嫌うものだから、こういう時で無いと彼に話しかけるのは困難というものだ。
「近頃のシェフの料理は、以前とは変わった気がするのですが。」
「変わった・・・?」
「スズネが、何か関係しているのか?」
シェフの動きが止まる。
やはり、スズネが関係していたのか。
うすうす気がついてはいた。シェフの料理が変わり始めたのは、スズネがこのホテルに訪れてからだ。
それに、スズネとシェフが一緒に行動するのをよく見かけるようにもなった。
「美味いのを食べれらるのはかまわんが、そろそろ刺激も欲しいとは思わんか?」
「俺は、美味い料理が作れればいい・・・。」
「スズネもお前らしい料理というものを、新鮮で刺激的な味というものを求めておるかもしれんぞ。」
「俺らしい・・・料理?」
「何より、それを食わせたことで今まで見せたことの無い表情を見せてくれるやも」
シャキンッ!
話の途中で、シェフに包丁を向けられる。
シェフの思いがけない行動にグレゴリーは驚いた。
「スズネに、何かしたら許さない~。」
「わ、わかった。わかったからそれを下ろしてくれ。」
「わかればいい・・・。」
口ではそう言っているものの、まだ警告を続けているかのような目線でゆっくりと包丁を下へと下ろす。
「ふぅ、そこまでスズネに執着しておったのか。」
「スズネは・・・美味い料理を作るのに必要~。」
シェフは怪しく笑う。
美味い料理が作れることに喜びを感じていることが見てとれる。
その様子は、いつものシェフとあまり変わらないようで、グレゴリーはひとまずこの件を置いておくことにした。
「まぁ、それなら良いが。」
『シェフ!それにグレゴリーさんまで!』
噂をすれば何とやら。例の女が現れた。
普通であればシェフに好んで近づこうとする者などいないというのに。怖いもの知らずなのか、単に彼女も普通でないのか。
『何の話をされていたんですか?』
「くだらないことでございますよ。」
『そうなんですか?ところでシェフ、今日の料理は?』
「・・・お前が、好きなもの。」
『本当!?楽しみ!』
スズネは無邪気に笑う。それを見たシェフも、スズネに向かって微笑んだ。
「今日も、厨房に来てくれ・・・。」
『もちろん。ねぇ、本当に手伝わなくて大丈夫?』
「そばにいるだけで、良い。」
『そっか。あ、それじゃあね!グレゴリーさん。』
スズネが挨拶を済ませると、早くと急かさんばかりにシェフが厨房へと引っ張っていく。
それも強制的に、ではなく。
「もしや無意識、という訳ではないでしょうね。」
スズネが一緒にいるだけで、料理が美味くなるなどと。
そんな理由で済む話ではあるまいに。
「スズネ・・・スズネは俺らしい料理が、食いたいか?」
『そうねぇ。私は、シェフが作りたい料理を食べたいな。』
「ならいい。」
今はずっと、このままで。
〆