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「僕が君を一生幸せにしてみせる。」
それは、以前から私に尽くしてくれた人からの告白だった。
このホテルに迷い込んでしまったのは、私を愛していたからだと。彼の経緯と愛の強さを聞かされた。
「一緒に逃げよう。大丈夫、何があっても君を守ってみせる!」
そこまで言われても、私は彼と一緒に行くと決断することができなかった。
別に彼が嫌いという訳じゃない。このホテルの恐ろしさを知らない訳じゃない。帰るのが怖かった訳じゃない。
彼の言葉が私の心に響かなかった。
ただ、それだけ。
「返事、待ってるから。」
それだけ言い残して彼は去ってしまう。
ここがどんな場所かをわかっていて、あなたは私を一人にするの?
そんな思いがよぎる。
こんなことを考えてしまう私がワガママなのだろうと考えていると、審判小僧が現れた。
「あの男は君の知り合いなのかい?」
『えぇ。もしかして、話聞いてた?』
「・・・・。」
どうやら聞いていたらしい。
でも、審判が黙り込むのはなんとも珍しい。
いつもであればすぐに今の出来事をジャッジしそうなのに。
『ジャッジ、しないの?』
「・・・・。」
審判は、ずっと黙り込んだまま俯いていた。
本当にこんなことは珍しい。
あまりに珍しかったものだから、そのまま様子を見ていたら、何かを決心したかのような顔で私を見た。
「これから、君をジャッジしてあげよう!」
そして、いつものようにジャッジが始まった。
「君は不安や絶望から危機的状況に追い込まれてしまった哀れな女性。」
だけど、審判の目はいつも以上に真剣で、
「そこへ突然、君をそんな状況から救ってくれる男性が現れた!!その男性なら、きっと君を幸せにしてくれるだろう!」
かつ大げさともとれるほど熱心に言葉を発していた。
「しかし、君を愛する男性はもう一人。」
そこで、急に話し方が変わった。
「だがその男性は、決して君を君を幸せにすることができない。一生不幸にしてしまうだろう。」
そこからの言葉は、さっきまでとは違って少し弱めになっている。
「でも、それでもその男は、君のことを心から愛してる。」
『ねぇ、その男って・・・・。』
「一生、手放したくないほどに。」
そこで、やっと私は内容の意味を理解した。
「君を幸せにしてくれる男性と、幸せにできないくせに愛を求めてしまう男性!!さぁ!君は・・・・どっち?」
最後は、切なそうに私に問いかける。
「さぁ、答えてくれ。スズネ。」
天秤が揺れる。
吊るされたゴールドとハートがゆらめく。
金と愛情、か。
ゴールドが落ちて、ハートが残れば正解、という話を聞いたことがある。
現実への希望をハートとするのならば、留まるワガママを突き通した場合、残るのはゴールドなのかしら。
「何を悩んでいるんだい、簡単なことだろう。」
『・・・その通りね。』
とっくに、答えは決まっていたんじゃない。
『私が選ぶのは、好きなのは、幸せをくれる人じゃないわ。』
「え?」
審判は私の答えが予想外なようだった。
普段はわかったような口を聞いてる分、それが何だか面白い。
「君は、何を言ってるんだい?」
『あら、鈍感ね。』
さっきの言葉で理解できないようだから、今度は審判を抱きしめて、わかりやすく答えてあげた。
『あの人は、与える幸せしか知らないの。だけどあなたは私の心の傷を癒してくれてた。だから私は彼じゃなくて、あなたが側にいてほしい。』
結局天秤から落ちたのはどっちだったのかって?
さぁ?
どっちだったんでしょうね。
〆