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「ジャッジメーーーント!!!」
毎度のように威勢よく叫んだ。
そうして答えを述べた僕に向かって、スズネは睨みつける。
ジャッジをする客にそんな態度を取られることは少なくない。僕の審判が気に食わないからと、逆らおうとする者だっている。
ただ、彼女は睨みつけながらも反抗的な行動に出たことは無い。
「スズネ、キミはいつも僕のジャッジに不満そうな顔をしているね。」
『勝手に人の意見を決めるんだもの。まぁ、そのおかげで私は何も決めなくて良いんだけど。』
「悩める者にジャッジをするのが、僕の仕事だからね。」
特にスズネは決断というものができないタイプだ。
それゆえに、常に何かの選択をせまられている。
その選択にいちいち真剣に悩んで、一向に決着がつかないものだから、大抵はこうして僕や他のメンバーが変わりに決める。
「悩める君のためにジャッジをしてあげているというのに、どうして喜んでくれないかなぁ。」
君ほどジャッジが必要で、数々のジャッジを受けるに相応しい人間は滅多にいないだろう。
そのあまりに、他の審判の練習相手にされることも少なくないほどだ。
何より君自身が必要としているはずだ。それなのに、嫌がる理由なんてあるのかい?
『理由なんて、他にもあるわよ。』
「ほう、是非聞いておきたいね。たとえば?」
『あなたのジャッジが不確定すぎる。』
僕のジャッジが不確定だって?
そんな事を言われるとは思わなかった。
唖然とする僕に、スズネは続ける。
『あなたのジャッジはあなたが判断したもの?既に決まっているもの?それとも気まぐれ?』
「・・・・さぁね。」
『その答えがわかりもしないのに、ジャッジされても意味無いわ。何よりあなたのジャッジは選択肢の意味すら持たないことが多いもの。』
「それが、真実だからさ。」
『だったら、選択肢って一体何なのかしら。誰かが勝手に決め付けた選択肢から選べというのに、結局何を選んだとしても望んだ未来が得られるとは限らないなんて。』
スズネはよほどジャッジが嫌いだったらしい。憎らしそうに話す言葉はまだ終わらない。
『だから嫌いなのよ。何かを決めることなんて。』
その言葉の一つ一つが、僕の中の何かを刺激してくる。決断のできない子、最初はそう思っていたのだけれど、彼女は違ったようだ。
今まで出会った誰よりも、多くのことを考えているんだ。己の選択の意味について深く考えているんだ。だからこそ、いつまでたっても結論にたどり着かない。
「君にとって選択は、そこまで思いつめることなんだね。」
『あなた、私がどうしてここに来たと思ってるの?』
今更何を言っているのかと言いたいのか、スズネは自身をあざ笑うかのように話す。
『立ち向かうどころか、逃げる勇気もなかったからよ。何もできず、選べずにいたら、ここにいたわ。』
彼女はその時の選択の内容をまだ覚えているのだろうか。
常に最良な選択を探し求めてここにたどり着いたのだとしたら。
「もしかしたら、君は審判に向いているのかもしれないね。」
『・・・・私に何かが決められると思う?』
おっと、そういえばそうだった。
『そういう訳だから、助かりはするけどジャッジは嫌いなのよ。』
「それはわかったけど、さっきの僕のジャッジが不確定っていう発言はどうにかならないかなぁ。」
『それは無理ね。』
「どうしてだい。」
『あなただったら本当に、どんなことでも選択することが出来るというの?』
もちろんだ。
ただそう言うだけだったのに。その時の僕はその問いに答えようとしなかった。
そのことが不思議でたまらなかった。
いや、答えることができなかったんだ。
きっと心のどこかで、その真実を僕は知っていたんだろう。
・・・僕は、どうしたらいいんだろう。
スズネは日ごとにますます病んでいる。
このままの調子でいけば、グレゴリー達に魂を奪われるのも時間の問題だ。
いや、ここにいた頃からそんな状況は当たり前だったじゃないか。
理解していて僕は手助けをせずに彼女と接していたんだ。
だってそんなことをしてしまったら、スズネは現実に帰ってしまう。
ずっとこの場所に留まって欲しかった!
どうして最良の選択が存在しないんだろう。
どうして選択する時間に制限なんてものがあるんだろう。
わかっていたはずの答えを見失う。
彼女と一緒にいた時間が長過ぎたんだろうか。彼女の思考が混ざってしまったんだろうか。
親分に相談してみたけど、自分でジャッジをしろと言われてしまった。
だけど見つからないんだ。
真実の天秤は動かない。
このままではたどり着く先は一つだけ。
それを防ぐ方法は決断だけ。
傾いていく未来に、僕は最後の手段を見出した。
そういえば君は、ある時言っていたね。
『未来は、未知に来るものだから未来っていうんだと思わない?』
今なら、その意味がわかる気がするよ。
さぁ、聞いてみようか。
君は何て答えるだろう?
全ては、それで決まるんだ。
〆
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愛の文字があったので、曖昧というタイトルにしました。
曖もはっきりしないって意味みたいですね。