おそ松
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「スズネちゃーんv」
『ひゃあああああああ!!』
おそ松は読書をしていたスズネに向かって背後から抱きついた。
『何するんですか!』
「ぐはぁ!」
突然のセクハラが許されるはずもなく、スズネはおそ松に向かって一撃を食らわせる。
「いやーごめんごめん。」
『そう言いながらどこ触ってるんですか変態!』
「そう怒らないで。男のサガだよ、さーが。」
悪びれた様子もなくヘラヘラと笑う目の前の男、おそ松。
スズネはそんな彼を憎らしく思いながら睨みつけた。
『いい加減訴えますよ?』
「うわごめんごめんごめん!それマジ勘弁してって神様仏様スズネ様っ。」
スズネとおそ松が出会ったのは最近のこと。
本屋に通っていた彼女が、本を買おうとしたおそ松が困っているのを目にしたことから始まる。
ご近所に住んでいる有名な6つ子なだけあって、彼女はたまに見かけていたその顔なら覚えていた。
「せっかく財布もってきたってのに5円足りないなんて!何で5円無いの!?まじかよーっ!」
財布は自分のではなく兄弟たちの物なのだが、スズネがそれを知るはずもない。
よっぽど本が読みたかったらしく、彼はカウンターでうなっていた。
『(そういえば、さっきここで5円玉を拾ったけど、あの人のだったり?)』
スズネは彼に話しかけてみることにした。
そう、話しかけてしまった。
『あのー。』
「っへ!?」
ドキッとした反応をしながらおそ松は振り向いた。
悪巧みを考えたのがバレただろうかと一瞬ひやっとしたのだが、声をかけてきたのは女の子ではないか。
途端にテンションがあがる。
「え、何?君俺に用?」
『あの、もしかしてお金。』
「うっわ、もしかしてこれ俺にくれんの?サンキュー!」
スズネは、お金を落としたんですか?と聞こうとしたのだが、その前に持っていた5円をひったくられた。
呆然としている間に、店員が複雑そうな顔をしながら会計を済ませてしまう。
「いやぁー助かったわ。君、もしかして俺に気があったり?」
『無いです。』
「照れなくても良いって~。どっか行こうよ。近くに良いホテルが。」
『結構です!』
それからというものの、スズネは彼に毎日のようにちょっかいを出されるようになってしまい、現在にいたる。
教えてもいないのに、いつの間にか名前も知られていた。
あの時声をかけなければ、と後悔するばかりである。
『あなたは、どうしていつも私のところに現れるんですか!』
「いつも探してるから!」
『とんだストーカーじゃないですか!』
クズな暇人はこれだから困る。
やはり警察につきだすことを真剣に考えることにした。
「てか、また本読んでたんだ。好っきだね~。」
『わかってるなら邪魔しないでください。』
「だって俺が暇なんだもん。相手してよー。本と俺、どっちが大事なの!?」
『本ですね。』
「ひどい!」
スズネが冷たくあしらうのも無理はない。
おそ松は会うたびセクハラのごとくベタベタするわ、相手しないと悪戯をやらかしているのだ。
おかげで図書館に通うこともあまりできなくなってしまった。
彼女にとってはいわゆる本のお邪魔虫、もとい虫食いのような存在であった。
「俺は本より君が大事だよ!?」
『はいはいそうですか。』
「そんな顔しないで。ほら、笑って笑って!」
『ちょ、あははははは!く、くすぐらないでよっあっはは!』
無理やり笑わせようと、手をすべりこませて体をくすぐるおそ松に、スズネはついに切れた。
『も、もうやめてくださいってば!!』
本人も出したことがないほどの怒声に、おそ松は固まる。
これまでは嫌がりながらも、ここまで怒られたことはなかった。
『もういい加減にしてください!迷惑なんです!』
「スズネ、ちゃん。」
彼はしばらく黙っていたかと思えば、急に真面目な顔になった。
「ごめん。俺、調子にのってたよね。」
『え。』
「女の子に話しかけてもらえたからさ、すごく嬉しかったんだ。」
今度はスズネが固まる番だった。
どこか遠くを見つめて、彼はしずかに語る。
「だけど俺、馬鹿だからさ。こんなやり方しかできなくて。嫌われて当然だよな。ウジ虫って言われても仕方ないよな。」
『そこまで言ってませんけど。』
「いや、いいんだ。もう迷惑はかけないよ。」
『それって、どういう。』
「じゃあな。」
背を向けると、彼は一瞬顔をこちらに向けた。
「それでも、俺は本気だったよ。」
そう言って立ち去っていく。
スズネは動揺するばかりだ。
いつもはどれだけ怒っても平気そうに笑っていたくせに、あんな真剣な顔は初めて見た。
彼のしてきたイタズラも、お遊びでなかったというのは本当なのだろうか。
本気で、仲良くなろうとしていただけなのだろうか。
まさか、二度と会わないつもりなのだろうか。
『なによそれ。』
付きまとうのをやめて欲しいと、ずっと思っていた。願っていたことだった。
それでも、これで本当にいいのだろうか。傷つけてしまっただろうか、言いすぎたのではないかと悩みながら俯いていた。
というか、あれだけ迷惑かけておきながら何のお詫びもないのだろうか。
そんなことを考えていると、いつの間にか誰かが目の前にまでやってきていた。
顔を上げる。
「まじで行っちゃうと思った?」
悪戯大成功、と言わんばかりのいつもの笑顔。
一息おいて、彼女は憎らしいその顔に再び制裁を与えた。
『いっそ滅べ!』
しつこい汚れはなかなか落ちないものでして。
おそ松が追いかけて、スズネが逃げる日々はそう簡単に終わらない。
そんな彼女が最近買った本。それは。
【クズ男の対処法】である。
ちなみにまだ読めていない。
〆
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リクエストで、【おそ松に追っかけられて嫌がる読書好きヒロイン】でした。
一度思いついた時は糖度の低い話は初めてだなと思っていたのですが、書いてみると、あれ?甘い??
おそ松を助ける出会い方は、ヒロイン目線からの好感度等がなるべく高くならないように考えた結果こうなりました。
夢小説を意識しながらも、最後まで嫌がる感じになるよう調整できましたかね?
最後の最後でタイトルに合う終わり方が思いつけてよかったです。