こっち向いて? 黒バス/森山
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森山(無自覚浮気)×恋人
「あ、あの子可愛い…」
俺の横から聞こえたその言葉に、俺の視線は其方へと移る。
しかし、声を発したであろう男は俺ではなく車道を挟んで向かいの歩道を歩く女性2人を見つめている。
その熱い眼差しと言ったら…。
不審者に間違われるのではないかと思う程に見つめるものだから、俺は面白くない。
このまま電柱にぶつかってしまえ、と念を横の男に送るがそんな無様な姿は見たくないと心優しいもう一人の俺が念を送る。
それが届いたのか、彼はすれ違う女性に目移りしながら歩くが転ぶ事なく学校へと付いたのだった…。
……面白くない。
『黄瀬のばーか。駄犬。ヘタレ』
「ちょっ、何なんスか!?俺センパイになんかしましたぁ?!」
『うっせ。口開くなクソったれ』
「ナマエセンパイ酷いッス~」
部活の練習中、俺の苛立ちは最高潮に達しかけていた。
そしてその苛立ちを隣で休憩している無駄にイケメンな後輩、デルモ野郎へとぶつける。
隣でギャーギャー喚くが気にしない。
だってほら、俺が何もしくても我らが主将笠松に「うるせぇ!」ってシバかれてるし。
ざまあみろ。
「…にしても、後輩に八つ当たりってのも大人気ねぇな。何時ものお前らしくねぇ」
小堀達の所に避難した黄瀬の代わりに今度は笠松が隣にくる。
俺の顔を呆れた様に見つめながら。
『……、言われなくても自覚済みだよ』
「まぁ、お前の気持ちも分からなくもないけどよ」
俺の言葉に笠松は溜息を溢し、俺から体育館の出入り口へと視線を移す。
それに釣られ、俺も出入り口へと視線をやる。
其処には黄瀬ファンの子を口説く男の姿が…。
清々しいほど満面の笑みを浮かべるその男に、俺は今日何度目かの溜息を零す。
「…森山も懲りねぇよなー」
「センパイが女の子口説く度に俺八つ当たりされるんで、ホントやめてほしいッスよ…」
小堀と共に再びやってきた黄瀬。
俺の不機嫌オーラを察したのか、さり気なく小堀の背後へと隠れたが…。失礼だな。
俺はお前の中でどんだけ怖い人なんだよ。
「お前アレよく堪えられるよな…俺だったら絶対ブチ切れてる」
「1~2回ならまだしも、その数十倍だろ?ひでー時なんて一日に10回位ナンパしてたし」
「センパイほんっとよく我慢できるッスよねぇー…」
『まぁ……慣れ?なのかなぁ…あんだけ眼の前で何回もやられちゃぁね…嫌でもそうなる』
苦笑交じりにそう返せば、笠松達は何とも言えない表情をしていたが、困った様に…だけど優しく笑いながら俺の頭を撫でた。
「頑張れよ」とか「無理はしないで下さい」とか「グチくらいなら何時でもきいてやる」とか。
そう言い残して、3人は休憩を終えて練習しに行った。
あの男…もう察している方もいるだろうが、俺の恋人。
女の子が大好きなアイツに、俺は惚れた。
切っ掛けは…まぁ、いろいろだろうなぁ。
アイツと俺は小学校からの付き合いで、家も割と近所。
簡単に言ってしまうと幼馴染。
女の子ナンパしてはフラレ続けるアイツを励ましたり。バスケ一緒にやったり。中高と同じクラスでおまけに部活も一緒。
ほぼ一日一緒にいる時間が多いせいか、俺は抱いてはいけない感情を持ちはじめて…。
一緒にいたらこの感情が溢れ出そうで…俺から距離とったりした時期もあった。
だけど、やっぱり俺はアイツの事が“好き”で。
無いかもしれないけど、何時か…女の子にアイツが取られてしまうんじゃないかって、想って。
一世一代の告白して。 「いいよ。」なんてあっさり返事が返ってきて。
コイツ理解出来ていないのでは…?
とか思ったり。
だけどそれから数日して、誰も居ない帰り道とかに手を繋いで来たり。
俺の家で初めてキスしたり。
恋人らしい事はやった。そん時は幸せ過ぎて泣いてしまいそうになったっけ。
「……ナマエ?」
アイツとの思い出を思い返していると、頭上から聴き慣れた聲が俺を呼ぶ。
それに伏せていた顔を上げれば先程まで女の子とオハナシしていたアイツ…由孝が俺を不思議そうに見下ろしていた。
『…どうしたの?あの仔達は?』
「ああ、女の子達は急用だとかで居なくなった。そしたらナマエが一人でいたから…どうしたのかと」
俺の問に返しながら由孝は眼の前に腰をおろした。
ちゃんと俺の事もみてるんだ…。嬉しいって、想うけど。少ししたら、ホラ―…。
「あ、あの子可愛い…今日あの子の為に頑張ろう」
俺以外を見てる…。
“やめて”“おれだけをみて”云いたいけど言えない。
嬉しそうに微笑む横顔を見る度に、出かけた言葉を飲み込んで。
それで少し前に口論した。我慢の限界で。
浮気ではない、って…反論されたけど、でも、でもさ。…でもね…。
他の子に目移りしないで。心配なんだ。隣から離れる気がして。
由孝の性格は充分知ってる。だから絶対に見るなとは言わない。
けど、2人でいる時くらい…さ。
俺を見ていて……。
こっち向いて?
眼の前の黒い髪に、そっと…口付けを落とした。
髪…《思慕》。
恋しく思うこと。
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