変えてゆくもの


「そんなこと考えてたの?」

 そのせいか、華倉は思わず訊き返してしまった。
 自分でも気に留めてなかったようなことを、だ。

 そんな華倉の言葉に、そりゃ、と口籠りながら魅耶は一旦視線を外す。
 けれど次の言葉をすぐには続けられない。
 暫し流れる沈黙の後、魅耶が軽く息を吐き、呟く。

「……ようやく僕も、余裕が持てましたので」
「ようやく」

 恋敵の心配が出来るくらいの余裕、か。
 ふふっ、と華倉は笑みをこぼす。
 その笑みのまま、ありがと、と華倉は続けた。

「うん、構わないよ。どちらかというと、延々付き合わせてて申し訳ないと思ってたから」

 鳳凰のことは、嫌いではない。
 でも、もう恋愛対象として考えることはないと、華倉の中で結論は出ている。
 なのに、まだこうして巻き込んでいていいのだろうかと。

「……そろそろ、鳳凰も憂巫女から解放させた方がいいよな、ってどっかで考えてた」

 だからきっと、これはチャンスなんだと思う。
 華倉はそう、迷いなく言った。
 魅耶にとっても予想外に思えるほど、はっきりした口調で。

 でもそれは、魅耶にとっても嬉しい態度だ。
 はい、と満足気に頷く魅耶。

 その後も暫く2人は寄り添って、夜の空を眺めていた。


2020.6.1
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