好きで居続けたら、こうなった。

 こりゃー完全に酔ってるなぁ……。

 でも確かにそういうタイトルの漫画ありそう、ってなって、遥がググり出した。
 てゆーか、うちの社長……俺様か?

「そう言えば! そういう遥はどうなのよー。彼氏とはどんな感じ?」

 どういう流れで思い出したのはよく分からないけれど、優花が不意に遥にそう訊ねる。

 遥は確か、売れっ子イラストレーターと付き合ってるって言ってたなぁ。
 わたしも気になって遥を見ていた。

 その遥はスマホの検索画面から視線を外さない。
 でも優花の話はちゃんと聞いていたようで。

「あー、そういや今度親に挨拶行ってくれるって言ってたような」
「えええええあんたそんな重要なことをそんなさらっと!!」

 吃驚して大声になった優花とは裏腹に、遥はやっぱりスマホで検索を続けている。
 わたしも勿論驚いていた。

 遥は結婚かぁ、と嬉しいような羨ましいような、微妙な感じで。
 現在結婚の予定もなければ彼氏もいないわたし。

 だけど……別の意味では初恋が叶った、のかも知れない。
 うちの会社はいわゆる音楽事務所である。

 所属しているのはヴィジュアル系バンドが殆ど。
 そんな事務所の現社長が、自身も元ヴィジュアル系バンドをやっていた、栂野(とがの)高汰(こうた)さん。
 彼はわたしが10歳くらいの頃までバンド活動をしていたらしい。

 バンド名は「黒輪-BLACK LINK-」。
 うちの母が大層ハマっていたらしい。

 母はわたしを妊娠中のときも胎教代わりに「黒輪」の音楽を聴かせていただとか。
 その影響なのかは定かじゃないけど、すっかりわたしも黒輪ファンである。

 しかし、まぁ、本当に人生何があるか分からんもんだ。
 わたしもチューハイを呑みながらしみじみ思った。

 幼い頃、よく知る手段もなくファンになったバンドの人と、解散してから一緒に仕事をするようになるだなんて。

「なかったか」
「まだ探してたんかい」

 ち、と遥がスマホを置いて溜め息を吐いていた。
 思わずツッコミを入れて、わたしは笑った。


2017.1.26
(これ書いた頃は、そういうタイトルのえろーいTL漫画出始めだったんよ)
3/3ページ
スキ