寝落ちた。


 遅めの風呂を済ませ、華倉が寝室へと戻って来た頃には、日付が変わっていた。
 今日もしんどかったー、などと独り言を洩らしつつ、伸びを一回。

 布団は敷いてあったものの、先に休んでいるはずの魅耶の姿がなかった。

 隣の部屋とを区切る襖へと目をやる。
 隙間から明かりが漏れていた。

「魅耶~寝よー?」

 襖を開けながら華倉が声を掛ける。
 しかし魅耶は文机に向かい、何やら作業をしているようだった。

 その手を一旦止め、魅耶が華倉の声に振り向いた。

「済みません華倉さん。先に寝ていてください」
「どしたの?」

 申し訳なさそうに控えめに笑う魅耶の方へ、ちょっとだけ近付く華倉。
 魅耶は一旦華倉の方へ、姿勢を向け直して続けた。

「どうしても明日までに目を通しておきたい資料がありまして」

 本なのですが、と断りを入れる魅耶の背後には、なるほど確かに開かれたままの書籍があった。
 しかし華倉の見間違いでなければ、1冊ではないようだ。

「大丈夫? 終わる?」

 魅耶は日頃から夜更かしや徹夜も少なくはない。
 本も読み慣れているだろうことは華倉にも分かる。

 けれど1冊ならまだしも、「3冊くらいあるように見えるんだけど」と華倉はつい心配そうに呟いた。
 魅耶はそんな華倉からの心配を受け、大丈夫です、と笑う。

「すぐ終えますから」

 お先に、と魅耶に再度促される。

 正直なところ、華倉も今日はもう眠気が強かった。
 出来るなら魅耶が来るまで待っていたくもあったが、華倉は頷いて返す。

 無理しちゃ駄目だよ、と言い残し、華倉はひとり、寝室へ戻った。





 しかし。
 疲れているはずなのに、眠りは浅かった。

 数時間も経たないうちに、華倉は一度目を覚ます。
 全然寝た気がしなかった。
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