寝落ちた。


 いやむしろ寝る前より怠いのでは、と自分にツッコミを入れつつ、時間を確認しようと枕元に腕を伸ばす。

 しかしそれより先に、襖の向こうにまだ明かりが点いていることに気付いてしまった。
 うそ、と華倉は呟きながら慌てて起きる。

 時刻はまだ真夜中。
 まさかまだ起きてるの、と華倉はまず、襖を開けずに声を掛ける。

「魅耶、まだやってる?」

 しかし返答はない。

 華倉が静かに襖を開けると、文机に突っ伏して動かない魅耶の背中が見えた。
 立ち上がり、魅耶の傍まで向かう。

 電気も本もそのままに、魅耶は眠ってしまっていた。
 あらら、と呟く華倉だが、その表情には笑みが零れていた。

 華倉は初め起こそうとしたが、折角寝ているところをわざわざ邪魔するのも良くないな、と思い直す。
 電気を消し、机の上はそのままに、華倉は魅耶の身体を抱え上げた。

 静かに布団の上へ下ろす。
 外した眼鏡は、いつも魅耶がしているように目覚まし時計の横に置いて。

「んー……」

 何やら小さく唸り、ごろ、と魅耶は向こうへ顔を向けてしまった。
 何で、と驚く華倉だが、仕方がないのでそのまま、後ろから魅耶を抱っこする。

 よく眠っているようで、気付く気配がまるでなかった。
 無理するなって言ったのに、と心の中で文句を漏らしつつも、華倉は魅耶の髪を撫でていた。

 自分もまたすぐ寝るだろうと考えていたのだが、暫く華倉は起きていた。
 魅耶の手を何度か握り直したり、肩に顔を埋めたり。

 何してんだろ、と自分に対する僅かな羞恥心を認識しながらも、何故かこの時間が嬉しくも思えた。

「良い……」

 ひとりで楽しむのも悪くないんだな、なんて。

 さすがにそろそろ寝ようと華倉は目を閉じてじっとする。
 握ったままの魅耶の指が、微かに握り返したように感じながら。


2021.3.6
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