addicted to you
ほんとに来た。
熱出して寝てる、ってメール返したら、見舞い行く、って返信があった。
風邪引いてるわけじゃないし、確かに日中は家に独りだけど、別に大丈夫だよ、って続けてメールしたけど、それへの返信はなかった。
もう1回寝るか、と布団に入り直したとき、今度は着信があって、出られるか、という扇(せん)からの確認だった。
俺はパジャマのまま玄関先で、コンビニのレジ袋を提げた扇を出迎えた。
「……まだ学校じゃないの?」
現在午後1時半。
まだ午後の授業の最中のはずだ。
俺はご覧の通り、発熱で欠席なので問題ないんだけど……。
取り敢えず制服姿の扇をこのままにしておけないので、家に上げた。
「昨日の夜から返事ないから心配だったんだよ」
扇がそうちょっと拗ねたように答えた。
ああ、と曖昧に返事をして、俺は扇を連れて部屋に戻った。
確かに、昨日はまだ動けたけど、夜中の扇とのメール中にとうとうダウンして、そのままになってたっけ。
「具合悪いなら先に言えよ」
メールやめたのに、とローテーブルにレジ袋を置きながら、扇は続けた。
尤もな意見だけど、俺が謝るのも何か違うし、と思って、俺はまたも曖昧に、ん、とだけ呼応していた。
「……熱は?」
ベッドに腰掛ける俺の顔を覗き込んで、扇が俺の体調を窺う。
一応朝も薬飲んだし、今は落ち着いてる、と答える俺に、扇はそれでも表情を緩ませない。
……俺はどう対応すれば?
えーと、と要点をまとめるように言葉を脳内でリストアップしながら、大丈夫だということを何とか伝える。
「母さんも夕方にはパートから帰ってくるし、おかゆとかポカリとか、そういうのも揃ってるから……寝てれば大丈夫だから……」
自分でそう説明していながら、何か、胸がざわざわしてた。
何だろう、ちょっと、怖い? そんな気持ちが込み上がって来てた。
扇はそんな俺の説明に、そうか、とワントーン落ちた声色で呼応する。
けれど、帰るつもりはないみたいで。
扇は俺のベッドの脇に腰を下ろすと、それまで付いてる、と告げた。
「おばさん帰ってくるまで居るよ。やっぱ心配だから」
……正直、それを聞いて、ほっとしていた俺が居て。
うん、と小さく答えて、俺は布団に横になった。