preparation
やっぱり目が覚めた。
全然寝た気がしない。
さっきから何度もこの繰り返し。
眠りたいのに、眠りに入っていけない。
このまま布団の中にいても、ますます寝付きが悪くなるだけだな。
そう思ったので、一旦布団から出ることにした。
ドアがちゃんと閉まっていないせいで、リビングからの灯りが入って来てる。
ということは、龍一まだ起きてるんだ。
キィ、と小さな音を立ててわたしが開けたドアの方へ、案の定龍一は視線を寄越した。
どしたの、と訊いて来たから、つい、こう答えていた。
「お腹空いた」
子どもか、と、心の中ですぐ自分にツッコミを入れた。
でも、よく考えてみたら、それは本当だったかも知れない。
もしかしたら、眠れない原因も。
しかしわたしの口から出たその発言が予想外だったのも事実らしく、えぇ、と龍一が吃驚したように苦笑いを浮かべた。
「帰って来る前にご飯は済ませたって言ってたじゃん?」
「そうだけど~……何か食べたい」
今日、此処――龍一がひとり暮らししているマンションに帰って来る前に、確かにご飯は済ませて来た。
済ませて来た、と呼べるほど、ゆっくりしっかりではなかったかも知れないけど。
それでもその時はそれで充分だと思ったし、取り敢えず食欲よりも寝かせろ!! っていう状態だったから、そのまま龍一のベッド占領して寝てたわけだ。
しかし、現在夜中の1時半。
やはり夕飯にするには量が少なかったのか、寝たから空腹感を覚える程度には回復したからか、分からないけど、お腹空いた。
何か作ってー、と龍一の隣まで行って、ぽすんと座り込みながら龍一の肩に凭れた。
えー、と拒否感を出しながら、読んでいた本を閉じつつ龍一は返答する。
「俺が作れそうなもんなんかないよ……。冷凍物で良ければ焼きおにぎりあるけど……」
「嘘
龍一はそう、食べるものはあるけど、という流れで話を進めて来た。
でもわたしはそんな龍一を上目で捉えてはっきり告げる。
ん、と表情が固まる龍一。
わたし知ってるんだからねぇ、とわたしは続けた。
「あんたが最近初心者向けレシピ本買って、料理の練習してるの知ってますからねぇー」
「まじで!?」
何でバレてんの!? と本気で驚いてる龍一。
あれで隠してるつもりかよ、とわたしは龍一の脇腹を小突いた。