知りたかったこと
「亜紀って腐女子だっけ?」
部屋に戻って来たらそんな言葉に出迎えられた。
わたしがトイレに立った数分の間に、雪路に何があったと言うのか。
はい、と首を傾げて応えるわたし。
何でいきなりそんな話を始めるんだ?
別に腐女子じゃないぞ?
つうか雪路そんな言葉知ってたのか……それの方に驚きだ。
いやいや、だってさっきまで「今年は旅行行きたいねー」ってる○ぶ一緒に見てたじゃん。
え?? ときょとんとしているわたしに、雪路が何かを手に取って見せて来た。
……!!
それはわたしが高校時代にとある理由で買ってみたBLコミック。
そうだ、昨日雪路が来るっていうから掃除してて、棚の奥底から見付けたはいいけど、さてどうしようかと考えながら床に置いたらクッションの下に隠れてしまったやつ!!!!
なんて、その表紙を見せられた途端、記憶が一気に蘇った。
ひょえ―――っっ!? と変なところから声が出た。
そんなわたしを雪路は苦笑を浮かべながら「落ち着いて」と宥める。
取り敢えず座るように諭しながら、雪路は続けて話した。
「いや、俺は別に腐女子とかオタクに偏見があるわけじゃないんだけど……亜紀からその手の話聴いたことなかったから」
吃驚して、と説明してくれた雪路に、ああ、と納得してちょっと落ち着きを取り戻す。
さてこれは何から話そうか。
わたしはさっきと同じように雪路の隣に腰を下ろし、それねー、と切り出す。
「ちょっとあの……わたし腐女子ではないんだけど、個人的な問題を解決したくて……参考書がてら」
参考書、のつもりで買ったよな、うん。
そうか、でも3年くらい前のことなんだよな、まだ。
しかし雪路にとって気になったのはどちらかというとこっち。
「……どんな問題にBLの関わりが?」
ですよね。
自分で言っておいて何だけど、これ結構めちゃくちゃな話だな??
おおう、と反応は返したけど、うん、うーん?? この話、した方がいいの?
わたしはとうとう腕組みをして考えた。
これ、結構面倒くさい話になるんじゃないか?
雪路は「腐女子に偏見はない」って言ってくれたけど、わたしはそもそも腐女子じゃない。