酷暑体験

 真夏の直射日光は、レーザー光線よりも凶悪だ。
 最近本当にそんな気がしている。

 まぁ、俺自身も歳を食ってしまって、打たれ弱くなっている部分もあるだろうけれど。

 にしても、痛い。
 陽射しが痛い。

 しかもレーザー光線と違って、何本もが一度に刺さって来る。
 それもまたつらい。

「華倉、こっちは終わったぞ」

 がさがさと植え込みの方から物音を立てながら、袋いっぱいに雑草を取って来た鳳凰が出て来た。
 お疲れー、と俺も頭を上げて、一旦息を吐く。

「華倉、顔が真っ赤だぞ。休憩は取っているのか?」

 がさり、と袋を縁側の傍に置いて、鳳凰が俺を見て訊ねる。
 えー、取ったよー、と返しながら時計を見ると、さっき休んだときから1時間近くが過ぎていた。
 やべぇ、ちょっと時間空き過ぎた。

 なんて認識してしまった途端に、急に身体中から熱が湧いてきた気分になる。
 よろよろと縁側まで戻ってくると、そのまま床に倒れ込んだ。

「華倉さん?! もー、また休憩忘れましたね!?」

 麦茶の準備が出来たらしい、魅耶が台所から戻って来て俺に気付いた。
 やはりか、と鳳凰も苦い表情を浮かべながら俺の傍に座り込む。

「ほら、これ飲めます? それともやっぱり水風呂出しますか?」

 魅耶が俺の上体を軽く起こして、まず麦茶を差し出す。
 おう、と曖昧な返答をしながら麦茶を受け取り、自分で飲む。
 魅耶はそんな俺の首に、よく冷えたタオルを巻いてくれた。

「しかし酷暑だな、まことに。日本では夏場の死者が増えていると聞いたが……これでは当然だな」

 ぱさ、と麦わら帽子と手拭いを取り、鳳凰が感想のような独り言を漏らす。
 そうなの、と俺は顔だけ鳳凰に向けて訊き返す。
 鳳凰も麦茶を飲みながら頷き、訝し気に話す。

「ここ10年ほど、顕著にその傾向が見られてな。どういうことかと気にはなっていた」

 あー、そう言えば鳳凰って、何かそういう……調査してるんだっけ。
 以前何となく聞いた話を思い出しながら俺は鳳凰を見ていた。

 鳳凰って確か……地球の見張りというか、動向の監査業務みたいのしてるんだったよね。
 そういうデータってちゃんと取れるんだね、と俺は鳳凰に呟く。
 鳳凰は頷いて、しかし、と続ける。

「我自身は暑さに強い個体であり、日頃は棲んでいる場所が違うからな……まさかこんなに酷いとは知らなんだ」
「だねぇー……」

 ふう、とひとつ息を吐く。
 ようやくだるさが無くなって来た。

「華倉さん、やはりそろそろ一旦切り上げましょう? もう陽も高いですし」
「そー……だねぇ……」

 朝、暑くなる前に始めたつもりだったんだけど。
 さすがにこの炎天下での農作業は自殺行為に近いなぁ。
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