最終兵器



2005年7月19日朝。
 大戸島へと帰島する船の中に、島民以外の顔がいた。軽く染めた髪にラフなシャツを着ている割に清潔感のある男、迷探貞であった。
「ほれ、コーシーじゃ。………しかし、無茶をさせおって、ばれたら笑って許しちゃ貰えんでよ?」
 缶コーヒーを差し出して、信吉爺さんは迷に言った。
「ありがとうございます。………まぁ、依頼を解決する為には、名探偵は時として危険な橋を渡らなければならない時があるのですよ」
 密航者の迷は、軽く笑ってコーヒーを飲んだ。
「それに、他にもあの島へ向かう面々がいる筈ですし………」
 迷は海の先に見える大戸島の影を見ながら言った。
 その時、迷は気が付いていたのかはわからない。しかし、その船にはもう一人、密航者がいたのであった………


2005年7月19日午前中。
 三神は所長に言われた通り見舞いをする為に、島の広場に設置された簡易テント内で治療を受け、休んでいる耕助の元を訪ねていた。
「どう?気分は?」
「おぉ。平気じゃ。流石に74歳の体には、あの戦闘は大変じゃった。あぁ、あの小童に謝らんとのぅ。大切なガルーラを墜落させてしもうたわ」
 耕助は笑った。点滴を打たれてはいるが、元気である事は間違いない。
「でも、生きていて良かった」
 三神は軽く顔をほころばせて言った。
「………じゃが、わしは守る事が出来なかった。こんな老いぼれなんぞが生き残るよりも、あの若造が生き残った方が、どれほど今後大切か………」
「じぃちゃん………」
 耕助の目から一滴の涙が伝った。三神も、無性に自らの無力感を覚えた。祖父や蒼井、そしてもう還っては来ない沖田や近藤は、三神とはまるで違う。本当の戦いの世界に身を投じている。その姿は、三神には7ヶ月前のグリーンと重なって見えていた。
「孫よ。お前は悔やむでない。………お前も立派に今を生きておる。わしよりもずっと、あいつらに誇れるわい」
 耕助は三神が何を思ったのか感じ取り、ゆっくりと語りかけた。今度は、三神の目から涙が流れた。そして、祖父の胸の中で、泣いた。
「………よしよし。ほれ、もう十分苦しみは流したじゃろう?………電話も鳴っておるぞ、さぁ。行くのじゃ、小五郎よ」
 耕助は三神のポケットの中で震える携帯電話に気付き、促した。三神も、涙を拭き取り、携帯を見た。メールであった。
 メールの文章を読んでゆくにしたがって、その目は次第に泣いた後の充血したものから、次にやる事を見つけた決意のものへと変わっていった。
「じぃちゃん。………行くよ。ミジンコな僕にもやる事はまだある。グリーンやみんなの為にも、精一杯やれる事をやって生きる!」
 携帯をしまって、三神は耕助に言った。耕助は頷いた。そして、三神はテントを後にした。


2005年7月19日昼過ぎ。
 大戸島に船が戻ってきた。そして、港には先ほどメールで迷の密航の事実を知っていた三神が人目を気にしながら待っていた。
 船が到着すると、一斉に人が押し出てきた。
 そして、その中から信吉爺さんの一家と紛れていた疎開の様な大荷物のリュックを背負った迷を見つけ、一気に合流した。
「お久しぶりです。信吉爺さんもありがとうございました」
 三神は迷に挨拶し、信吉爺さん達に礼を言う。
「良いって事よ。それより、早く行きな!見つかっちまう!」
 そう言い信吉爺さんは、三神と迷を行かせた。
「ありがとうごさいます」
 迷は一礼して、二人は人込みから離れ、真っ直ぐ三神の家に向かった。
 三神の家は、位置的にゴジラのいた場所の反対側に位置する為、全くと言って良いほど問題のないエリアだ。
「とりあえず、ここならば問題はありません。実は、助っ人も来ています」
 三神は家へ入ると、迷に伝え、障子を開けた。
「はじめまして、鬼瓦優です」
 そこには、優がいた。
「はじめまして、名探偵をしています迷探貞です」
 迷も挨拶をした。しかし、迷は少し当惑した表情を浮かべた。どうやら、ゴジラ団や依頼の事となるので、あまり人前で話をしたくないようだ。
「あ、彼女は大丈夫です。現在最も信用できる人ですので」
 三神の口調からある程度の事情を察したのか、迷はすんなりと優も話しに加える事となった。
「まずは、八神宗次についての調査結果です。………優さんには?」
「先ほどですが、大体の話を聞きました。謎の海難事故の被害者で、団長の最有力容疑者ですね」
 優は答える。迷も納得して、話を続ける。
「はい。その八神ですが、まず予告どおりゴジラ団に辿り着きました。更に、現在の彼の表の顔も辿り着き、現在はその裏にいる人物の証拠を掴もうとしています。ただ、この部分に関しては、先月からの調査で早期に特定出来、その証拠の一つとして、飯田橋駅の公衆電話の話が役立ちました。………ただし、私の未熟さ故、今日までに最後の詰めを完了する事が出来なかったので、申し訳ありませんが、現状の報告のみで、団長の正体については伏せさせていただきます」
「わかりました」
 三神は答える。優も隣で頷いた。
「次に、恵美子氏の依頼についてです。この事は、優さんは?」
 迷は優を見た。優は静かに頷いた。
「わかりました。現状の目標は、山根博士の残した何かをこの大戸島で見つける事です。この事についての調査ですが、データも少ないのですが、実は一昨日既に私は小笠原の父島に入っていまして、あちこち探し回って、やっと現段階で最後となるであろう手がかりを手に入れました。これらです」
 迷はリュックから一枚の地図とコピーと写真を取り出した。
「この地図は、ゴジラ襲撃の復興がされていた1954年秋の大戸島の地図………つまり、大体山根博士がこの島を訪れた当時のものです。そして、このコピーはまさに奇跡です。実は、15年も前に廃業した貸し船屋さんから見つけたのですが………。なんと、これは山根博士がその時に借りた船舶の台帳なのです!そして、この写真はその台帳から探し当てた、船舶の写真です」
「ほ、本当ですか!」
「………よく残っていましたね」
 三神も優も驚く。そして、台帳のコピーと写真を見た。台帳には、山根博士の名前と年月日と期間、船の名前が記載されていた。期間は丁度2日間で、往復の船の時間を考えると、丁度日数も一致する。更に、貸し出された船舶は、写真を見る限りはあまり遠くへは行けなそうだ。
「更に、注目して頂きたいのは、この台帳の………山根博士の次の利用者のメモです」
 迷の指した所を見る。
「………燃料ナシ、要補給!」
 三神は読んだ瞬間、迷を見た。迷はニヤリと笑って言った。
「50年前の台帳を、廃業してから15年経っても捨てない様な貸し船屋が燃料をスッカラカンにしてお客に出すとは思えません。事実、この台帳の他何冊見ましたが、この他に燃料がなくなったのは、釣りの団体がマグロを取ろうと沖合いに行って遭難しかけた時だけでした。ちなみに、昨日中に公民館で調べて、当時の記事からその時の移動距離を掴みました。………海流に乗りかけていた事もありますが、大体父島から硫黄列島くらいの直線距離を移動していたようです」
 迷は自信満々に言った。
「…………」
「…………」
 二人は何も言えなかった。
「どうしました?」
 迷は二人を覗き込む。
「あの~、迷さん。父島と硫黄島の距離知ってますか?」
「とりあえず、もぉぉぉのすっごく!遠いですよ」
 三神と優は言った。物凄く目がマジだ。
「あぁ。すみません。海流に乗ったとか、色々なデータを出しすぎましたね。………実は、この写真の船は、本来遠洋漁業用の漁業船舶を修理して使っていたものだそうで、それをフルで回して流されたそうです。それに片道の直線距離ですから、距離は確実に半分。そして………」
 迷はリュックから、どこから調達したのか、小笠原諸島周辺海域の海図を広げた。そこに、無理やり押し込んでいた三〇センチ定規と赤鉛筆を取り出し、地図に書き込んでいく。
「航路は規定されているものを通っていると仮定できるでしょう。更に、大戸島には今のところ例の痕跡が見つかっていないので、確証は出来ませんが、前後の事実を考えるとまず間違えなく大戸島に立ち寄っているでしょう。往路、復路のどちらかとも考えられますが、私は両方とも大戸島に寄っていると考えています。まぁ仮定の話なので、置いておきますが、それで残った距離がわかります。そして、往復ですから、更に半分!」
 迷は残った距離の長さを定規ではかり、リュックからコンパスを取り出した。そして、その長さを半径に、大戸島を中心とする円を描いた。
「よし、わかった!………これが、解です。この中のどこかにあります」
 迷は言った。その円の中には、島は一つであった。
「い、岩戸島だ」
 三神は言った。円の外周の少し内側に確りと納まっている岩戸島。距離も丁度だ。
「………さて、裏技は見つけました。ここからは正統派で行きましょうか」
 迷は笑って言った。
「え?」
「………岩戸島に行かないんですか?」
 三神と優は顔を見上げた。
「まだ確証はないでしょう?もしかしたら、海に沈めたのかも知れませんよ。それに、一昨日の今日では、まだあの辺りは安全とは言い切れませんし、もっと命を張るだけの確信がなければ」
 迷は言った。
「でも、どうやって?」
 三神は聞いた。
「決まってますよ!見つけるんです。………山根博士がこの島に残した痕跡を!」


2005年7月19日14時。
 三神達は、先ほど地図にチェックを入れた三箇所のポイントに向かっていた。
 そのポイントは、旧公民館が立てられていた場所、最初に慰霊碑を予定していた場所、そして国立大戸ゴジラ博物館だ。
 旧公民館跡地には、現在の小学校が建てられている。まずは、所長達に会う為にもそこへ向かう事となった。
「所長!」
「お、三神くんに優さん!どこに………おや?あなたは………」
 理科室の前で、所長は研究書類を整理していた。
「ご無沙汰しております。迷です」
「あぁ、そうだった。………なんでいるんだい?」
「あ………それは。それより!博物館の職員が集結したって本当ですか?」
 三神は慌てて話をそらした。
「あぁ。十人揃ったのは、三神君の証明が完了した時の騒ぎ以来だよ。今朝、集まってね」
 所長は少し呆気に取られたが、すぐに話し出した。
「ゴジラ博物館って、十人もいたんだ………」
 優がボソリと言った。
「一応国立の博物館と研究所なんだから、それくらいの在籍者はいるよ。まぁ、基本的に所長、僕、敷島さん位で、後は土井さん。前は河野さんが手伝ってくれれば、業務も研究もこなせるから、他の七人は大抵小笠原諸島に散ってたりして、それぞれの研究をしているんだよ。元々ゴジラの専門研究者は僕一人だし」
「よくよく考えると凄いところね」
 優は呆れた様に言った。
「まぁ、元々常駐してる研究者が少ないから、普段使わない人の机をムファサとかが勝手に使っても問題がないんだよ」
「な、なるほど」
「………という訳だから、三神君も後で先輩達の手伝いをするんだよ。彼らは君と違って、荷物の詰め込みをしてなくて、色々混ざって大変みたいだから」
 所長に言われ、三神は頷いた。
「わかりました」
 とは言っても、三神達は捜索がある。しばらく手分けをして探したり、聞き込みをしたが、手がかりは全く見つからなかった。
 そして、極めつけは、公民館を移築する時にいたという信吉爺さんが、それらしい存在は全く知らないと言う事で結論が出た。


2005年7月19日14時30分。
 大戸島に、白井と神宮寺の代役で何故か同行する事となった神谷がヘリコプターで向かっていた。
「そういや、今回ゴジラ団は現れなかったそうだな」
 神谷はおもむろに白井に言った。
「そうだな。突然の襲来は流石に予想出来なかったのかもしれないな」
 白井は返す。お互い暇だったのだ。
「かもな。………或いはわざと姿を現さなかったのかも知れねぇぜ」
 神谷は不敵に笑いながら言った。
「だとすれば、大戸島にはゴジラ団がいるって事だな?」
「いるかもな?…………お、大戸島が見えてきたぜ」
 神谷は太平洋に浮ぶ大戸島のシルエットを見つけ、言った。


2005年7月19日14時40分。
 迷、三神、優の三人は、第二のポイントである慰霊碑の当初の建設予定地である浜辺へ向かっていた。
 現在慰霊碑は、昨日ゴジラが上陸した地点の少し港に寄ったところに建てられている。ただし、慰霊碑ではなく、記念碑として、ゴジラを風化させない為の存在として建てられた。どうやら、この慰霊碑建設には色々な問題が起きたらしい。
 そして、小学校からその浜へは、テントが張られたあの広場を通るのが近道なので、三神は再び広場を訪れた。
 広場は自衛隊員が整列していた。そして、その中心には棺がヘリコプターに向けて運ばれていた。
「あれは………」
「近藤じゃよ」
 三神がその光景を見て呟くと、声がして、耕助が現れた。
「もう大丈夫なのか?」
「あぁ。それに、わしだけベッドで寝ている訳にはいかんからの」
 そして、耕助は黙祷した。三人もそれに習い黙祷する。
 やがて、近藤を乗せたヘリコプターは本州へ向け飛んでいった。
「………ところで、お主達は何をしておるんじゃ?」
 改めて、耕助は迷と挨拶し、聞いた。
「実は50年前に慰霊碑が建てられる予定だった所へ行こうとしていたんだ」
 三神は答えた。
「50年前、か………。そう言えば、約25年振りにこの島に来たんじゃな」
 耕助は独り言のように言った。
 その時、三神はアメリカで耕助が話していた事を思い出した。
「そうか。じぃちゃんは、完成当時の国立大戸ゴジラ博物館を訪ねていたのか」
「あぁ。当時はあの壊された建物とは違ってな。レンガ造りの建物じゃった。………何でも50年前にすぐ建設するつもりだったらしいが、どうも国立の博物館を一つ建てるのは大変らしくてな。海外の意見等もあったらしく、一時中断されてから、約25年後に再び設置する事になって、建設されたらしい」
「そうだったんですか」
 迷が相槌を打つ。三神は無言で聞いている。
「あ、思い出した。50年前かははっきり覚えておらんが、そのレンガの建物は長い間壊す事も、改築する事もしてはいけないと、資料上なっていたそうじゃよ。しかも、誰がいつそう定めたのかも全くわからないという曰く付きの話じゃ。わしは、大戸島を上空から見て今の真新しい建造物に改築されているのを見て驚いたんじゃよ」
 耕助は空を見上げながら言った。
「三神さん、あなたはその話を知っていましたか?」
「………いいえ。それに、確か現在の博物館への改築は所長がここへ来た頃ですから。10年以上も前ですね」
「恐らく、時代の風化でしょうが、この話は興味深いですね」
「………それに、あるんですよ。多分、その建物は」
「「え?」」
 迷と優は、驚きの顔を浮かべた。
「正しくは、昨日まで」
「………それって、つまり研究センターって事?」
 優が聞くと、三神は頷いた。
「迷さん。この前、所長が言っていたでしょ?資料室にこんなものが………って、八神の資料を」
「は、はい。もしや、研究センターは当時のモノをそのまま?」
「えぇ。博物館の研究所が分離しているのって、よくよく考えて見ると変じゃないですか?あれ、どうやら元々あった旧館の一部を改築し、増築した新館と同じ様に施設を整えて、内装と外装を合わせたものらしんですよ。その証拠に、今は瓦礫ですけど、地下とか一部にレンガが露になってるんですよ。………優、気がつかなかった?」
「地下には降りなかったから………」
 優は困惑しつつ答えた。
「………どうやら順序を変えた方が良いみたいですね?」
 迷が言い、二人は頷いた。
 そして、三人は耕助と別れ、半壊の国立大戸ゴジラ博物館へと向かった。


2005年7月19日15時。
「さて、どうします?」
 三人は、国立大戸ゴジラ博物館前にいた。迷は聞いた。
「ここは僕達の博物館です。入れないほうがおかしい!………行きましょう!」
 三神は堂々と立入禁止ロープを潜り、国立大戸ゴジラ博物館に三人は侵入した。
「…………中から見ると、ひどく壊されてますね。………こっちです!」
 三神の先導で、三人はボロボロになった館内を進む。天上というよりも、壁ごと潰された衝撃で崩れていた。
「本当に研究センターの部分だけが綺麗に破壊されていますね」
「さて、放射能濃度はっと」
 迷は瓦礫の青空研究所となった国立放射性生物研究センターのエリアに立って、辺りを見回す。当然瓦礫だが、外の壁等の瓦礫にはレンガが混ざっている。やはり、旧館をそのまま利用していたらしい。
 一方、三神はグリーンの形見である腕時計に内臓されているガイガーカウンターで放射能濃度を測定していた。
「あっ!安全値だ!全く、蒼井一佐めぇ~」
 三神は蒼井の喧嘩を思い出し、怒る。
「全く。子どもの喧嘩じゃないの」
 優はそんな三神を見て、呆れる。
「あ!三神さん!………地下室ってこれの事ですね?」
 迷はゴジラの重さによって完全に落ちた床から、地下室がぽっかりと開いた大穴を見つけた。
「………おや、迷さん。待ってください!………この辺一体はまだ放射能濃度が高いみたいです」
 三神はガイガーカウンターの数値を見て、迷を制する。
「多分、残留放射能をこの辺りはまだ洗浄されていないのよ。付近の方を優先させて、中は後回しにしたようね」
 優は周りの瓦礫や足跡を眺めて言った。
「ま、人命とかを優先すりゃそうだな。さて、じゃあ探しに行くか」
「え?でも、放射能が………」
 優が聞くと、三神は答える。
「防護服だよ。確か、倉庫のロッカーに閉まってあった筈だ」
「その倉庫はどこですか?」
「博物館の───」
「トイレの向かいにあったぜぇ」
 迷が聞くと、三神は答えようとした時、博物館から声がした。
「か、神谷さん!」
 崩れかけた博物館から防護服を背負って現れたのは、神谷であった。
「面白そうな事をしてるじゃねぇか?仲間に入れてくれ」
 神谷は、瓦礫に足元をとらわれつつも、三神達の所へやってきて、防護服を渡した。
「あ、ありがとう」
「………お、あんたが日本一の名探偵か?挨拶が遅れたなぁ。神谷想治、名探偵を名乗らせて貰っているものだ」
「初めまして、迷探貞です」
 この時、初めて二人の名探偵が握手を交わした。
 そして、四人は防護服を被ると、地下へと進んだ。
「当たり前だけど、暗いわね………」
 優は言った。すかさず三神と迷と神谷は、それぞれ懐中電灯を取り出していた。
「………あんた達、良いトリオだわ」
 優は一言そう言った。
 そして、四人は三神を先頭に地下室を進む。
「普段、見つからない様な場所でしょう?」
 優は疑問系で言う。
「もう場所はわかってる!」
「………よし、わかった!」
「大したこったねぇな、こんな謎!」
「「「ここだ!」」」
 三人は不敵に笑い、それぞれ思い思いの場所を指差した。三神は正面、迷は右、神谷は左の壁を指差した。
「…………楽しい?」
 優はため息をついて、言った。
 そして、三人は思い思いの場所の捜索を開始した。
 しかし、すぐには見つからない。三神は壁の模様を見て探り、迷は壁を叩いて探り、神谷は鉄棒で壁をぶっ壊して探る。
「これが、性格か………ん?」
 優はそんな三人を眺めていると、床に模様が描かれているのに気がついた。どうやら、棚や本棚で隠れていた部分が、ゴジラに踏み潰された衝撃で倒れて、露になったらしい。
「………まさか、ね?」
 優は床を探る。模様に紛れて巧妙に隠されているが、動かす事の出来るレンガがあった。
 そして、レンガを動かすと、そこには中に鍵と手紙の入ったガラス瓶が隠されていた。
「あのぉ~、見つけちゃいましたよ」
 優は、防護服の中で汗だくになって壁を調べまくっていた三人衆に、瓶を片手に言った。
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