最終兵器
2005年7月18日8時5分頃。
三神は国立大戸ゴジラ博物館の前に出た。
「うわっ!」
外に出ると、轟音と風が三神を襲った。ヘリコプターだ。
「すまない!私がここを離れるわけには行かない!三神君が私の代わりに自衛隊のところへ向かってくれ!」
いきなり所長が横から現れ、そう言うなり三神をヘリコプターへ押し込んだ。
「え?あっ、ちょっと!」
そして、三神の反抗空しく、扉は閉められ、ヘリは出発した。
2005年7月18日8時20分。
半強制的に戦艦『おおと』へと連れて行かれた三神は、ヘリから甲板へ降りた。
「おぉ!我が孫よ!」
いきなり耕助にハグをされ、両肩をバンバン叩かれる。
「じぃちゃん………この船に乗ってたのか」
「昨晩にのぅ」
耕助は答える。そして、頃合いを見計らったのか三神に海賊のような髭の男が挨拶してきた。
「再会のところすみません。この戦艦『おおと』の艦長の武田海将補です」
「祖父がお世話になっております。国立大戸ゴジラ博物館の三神小五郎です」
武田海将補は三神と簡単に挨拶を済ませると、三神を会議室へと連れて行った。
「戦艦に───」
「会議室なんてあったんだな」
三神が会議室へ通され、第一声を言おうとした時、全く同じ意見を言った男がいた。蒼井である。
「そりゃ、作戦支部にも使用される場合もあるからな。一応あるんだろう」
横にいた赤川が突っ込んだ。
「こらっ!………すみません。ガルーダのパイロットでして、蒼井一佐と赤川特佐です。ガルーラというのは………」
「皆まで言わんでも大丈夫だ。こいつはガルーラを設計図段階から知っておる」
耕助は武田海将補に言った。
「そうですか。なら話は早い。では、直接本題に入りましょう。昨日より我々はゴジラ───G1を捜索しています」
「……見つからない。ですね?」
「はい」
三神が聞くと、武田海将補は頷いた。
「確証はありませんが、日本の様々な技術を使っても、ゴジラが未だにこの近海に潜んでいるかがわからないという事ならば、可能性はあります」
「どこですか?」
「かつてG0は水爆実験の影響で当時の安住の地を追われ、大戸島、東京へと現れました。………しかし、かつてG0は他にも大戸島近海で潜めるような海底のスペースを使用していたと考えています。僕の仮説では、大昔からゴジラという生物は大戸島周辺に生息していたにも関わらず、発見されずにいた。……これはかつて山根博士が唱えた通り、海底のどこかに潜む場所があったのでしょう。今、G1はその場所にいると考えれば、未だに見つからない理由もわかります」
「な、なるほど」
三神の解説に武田海将補は圧倒されつつ納得する。
「しかし、それでは我々にゴジラを見つける手立ては無いと言うことではないですか?」
蒼井はその疑問を三神にぶつけた。
「はい。人間から見つけることは恐らくほとんど不可能でしょう。しかし、あっちからは簡単に見つけられるはずです」
「え?」
「それは、どういう事ですか?」
蒼井と武田海将補の頭に?マークが浮ぶ。
「つまり、G1はわしらの乗るこのおおととリベンジをする為に、再びこの近海に現れる………そういうことじゃな?」
耕助は三神に向かって言った。三神は頷いた。
「そうです。つまり、岩戸島と大戸島の丁度中央付近にいるこのおおとは、待っていれば必ずG1がやってきます。具体的にいつとは言えませんが、昨年のヨーロッパの時を考えると、今日明日にでも………もしかしたら今まさに───」
「G1と思しき影を確認!30分後には当艦と接触します!」
三神がその例を上げようとした瞬間、水測士が叫んだ。
「お前は予知能力でもあるのかもな」
三神が青ざめていると、横から耕助が苦笑しながら言った。
2005年7月18日8時30分。
おおと艦内で慌しく戦闘準備をしている中、ガルーラの前で赤川が立っていた。
「赤川………」
赤川は声の方に振り向く。
「蒼井………」
蒼井が心配した顔で立っていた。
「大丈夫か?………いくらお前でも昨日の今日じゃ、沖田の事を…………」
「沖田は戦死だ!………名誉ある戦死なんだ。そうしてくれ」
赤川は顔をそむけ、肩を震わせながら言った。蒼井自身も沖田の死をそのようにかたどって受け入れなければ、こうして立っている事も、ガルーラのあるおおとに乗っている事すらままならない気持ちである。普段の気丈な赤川をよく知っている蒼井にとって、今の赤川は気丈であり、先ほどの三神とのやり取りもこなしていてはいたが、やはりどこか振る舞っている偽りに見えた。その事が、余計に蒼井以上に赤川のショックを物語っていた。
「今回は降りろ。俺は空自でも、特佐なんていうお前よりも階級は下だけど、親友として命令する。今回は降りろ!………これ以上、仲間を失いたくないんだ」
「すまない」
赤川は一言そう呟くと、蒼井をその場に残し、自らのガルーダに向かって行った。
2005年7月18日8時50分。
『ガルーラ、全機出撃!』
武田海将補の号令で、六機のガルーダは出撃し、おおとに迫るゴジラとの第二回戦の火蓋がきって落とされた。
ガルーラは蒼井機と赤川機を先頭に二手に分かれ、ゴジラを挟み打ちにし、同時にミサイルを放つ!
爆!爆!爆………
雨の様にゴジラを襲うミサイル。そして、素早くその機体を転回するガルーラ。しかし、蒼井機も赤川機も昨日とはその動きがまるで違った。
赤川機はそのテクニックこそ変わらないが、まるで別人の様に動きが悪く、荒々しいものとなっていた。また、蒼井機にいたっては、その機敏な動きとテクニックに違いがあまり無いものの、全体的に動きそのものが別人の様に変わっていた。上手くなっているとも言えるが、捨て身の様な危険な動きとも言えるものであった。
『どうしたんですか?二人とも!』
ガルーダパイロット唯一の女性である『土方』二等空佐は、その動きを見て言った。
『わかっているはずだろ?土方、お前自身も動きが悪くなっている』
『近藤』一等空佐は言った。近藤は土方の属する隊のリーダーでもある。一部では、そこに沖田を加え、チーム新撰組とも言われていた。
「他人の事を気にするならば、自分の操縦を気にしろ!」
赤川は二人を一喝する。ちなみに、昨日赤川と共に硫黄島にいたのが、この二人であったのだ。
ゴジラは一度潜り、おおとへと向かう。背鰭斬りを繰り出すつもりらしい。
「させるか!」
刺!
「え?」
赤川がニードルをゴジラに向けて放とうとした時、既に反対からニードルが放たれていた。放ったのは、蒼井機であった。
「………あ、すまない!」
そうとっさに言いつつも、赤川はそのいつに無く俊敏で的確な蒼井機の動きにただ驚いていた。
2005年7月18日9時過ぎ。
一度ゴジラの背鰭斬りの危機にさらされたものの、蒼井機の活躍で回避され、おおと艦内は冷静な戦闘を可能にしていた。
「………おい、三神さん。大丈夫か?」
武田海将補が、ブリッジの端で柱にしがみ付いている三神を心配して聞く。
「は、はい。……ゴジラとの戦いで、戦艦に乗って直接戦うのは初めてなもので」
三神は青ざめた顔で苦笑する。
「なら良かった。………すみませんが、お願いを聞いて下さいませんか?」
「はい?」
「御祖父の三神指導官の姿が無いもので、多分格納庫へのどこかであると思うのですが、一寸探してくれませんか?本来貴方をここから離す訳にゃいかないのですが、今は誰も手が離せないもので」
「あ、わかりました。……この地図の通りですよね?」
三神はブリッジに張られたおおとの見取り図を指して、聞くと、ブリッジを後にした。
2005年7月18日9時10分頃。
「…………さん!………蒼井さん!」
蒼井は声を頼りにその意識を取り戻した。
「よかった。大丈夫ですか?蒼井さん」
その視界に入ったのは、三神の顔であった。
「あんたは………あれ!ここはどこだ?」
蒼井は三神に聞いた。三神に、格納庫の端っこです、と答えられ、ようやく蒼井は記憶を回復させた。
「大変だ!」
蒼井は急に立ち上がった。後頭部に痛みが走り、意識と裏腹に平衡感覚が狂う。
「駄目ですよ。後頭部が骨折しているかも知れません!」
三神は慌てて制するが、蒼井はそれを冷静に無視すると、内線で武田海将補を呼び出す。
『なんでお前がそこにいるんだ?………じゃあまさか、お前のガルーダに乗っているのは!』
「三神指導官です」
驚く武田海将補の声を無視して、蒼井は血の気の薄い青ざめた顔で言うと、ふらふらと三神に寄りかかった。
「大丈夫ですか?………と、とりあえず、艦長さん!彼は医務室へ運びます」
『わかった。頼みました』
武田海将補は内線を切った。
そして、三神は蒼井の体を支えながら、医務室へ向かった。
2005年7月18日9時30分。
耕助は、流石設計者であり、指導官といったところか、すばやくガルーダを操り、ゴジラを翻弄する。
「おい!台場!わしや赤川に遅れるな!」
耕助は、『台場』一等空佐に言う。
『す、すごい。指導までこなしている………』
台場は驚きながらも、耕助の乗る蒼井機の後に続く。
「無駄口を叩くな!結城!お前もだ!」
『はい!』
『結城』一等空佐もその後に続いた。
ゴジラは放射能火炎を土方機に向かって浴びせる。
『ひゃ!このっ!』
土方は放射能火炎を回避し、憤る。
『平常心を保て!』
赤川は土方に言う。しかし、その口調は赤川自身が平常心を保ちきれていない事を示していた。
そして、おおとも魚雷でゴジラを攻撃する。
爆!爆!
ゴジラは海中で身を翻し、おおとへ再び突き進む。おおとはミサイルを垂直落下させ、ゴジラの行く手を阻む。
爆爆爆!
更に、ガルーラ六機から同時に放たれるニードルの雨。
刺刺刺刺刺刺!
再び戦況はおおとが優勢になる。
グオォォォォーーーォン!
ゴジラは水面から顔を上げ、咆哮をすると、再び海中に潜る。ゴジラが潜り、水しぶきをあげ、渦を巻く潮が赤黒く濁る。ガルーラとおおとの攻撃は確実にゴジラを傷つけ、体力を奪っていた。
しかし、一方でガルーラやおおとにも変化が出ていた。武器の残りが少なくなってきたのだ。そして、もう一つはゴジラと大戸島との距離が大分短くなってきた事である。
「武田艦長!長期戦は出来ないぞい!」
耕助は言った。
2005年7月18日9時50分頃。
蒼井は再び意識を取り戻した。しかし、なぜ自分が医務室にいるのか理解できていないようであった。
「蒼井さん、大分顔色が良くなりましたね。さっきは真っ青な顔でしたから。一緒に医務室にきたんですけど、覚えていませんか?」
三神は蒼井に聞いた。
「いや、覚えていない。覚えているのは、赤川と別れた後に、突然現れた三神指導官に鈍器のようなもので殴られて、くらくらして………後は、三神さんに起こされた事だけ、そのあとの記憶は全くない」
「じゃあ、武田艦長に連絡したのは?」
「そんな気はするが、記憶はない。典型的な脳震盪だ。それより、戦況は?貴方の祖父さんはまだ生きているのか?」
蒼井は三神に聞いた。三神は頷き、答えた。
「それどころか大活躍らしいです。多分大丈夫だと思いますから、ブリッジに向かいましょう」
三神の意見に賛成し、蒼井はブリッジに向かった。
2005年7月18日10時5分。
おおとはゴジラと対し、回転式横斬りを使おうとするが、ゴジラはその隙を与えない。
「よし、こうなれば、ショックアンカーを使用する!」
武田海将補は言った。ショックアンカーとは、おおと独自の武器で、槍方のワイヤーケーブルで繋がれた錨を捕鯨等に使うモリの要領で、対象を刺し、更にワイヤーケーブル内の線を介し、高圧電流を対象に流すという対ゴジラ武器である。
「わかりました。ショックアンカー用意!」
「ショックアンカー用意!」
おおとの前方側面に空いた両側二個の穴にある、ショックアンカーが準備された。
「発射!」
「発射!」
おおとから、二本のワイヤーがゴジラに向かって伸びた。
刺!刺!
ショックアンカーは二本ともゴジラに刺さり、高圧電流が流される。
ゴジラがもがき、海が荒れ、白くなる。
「効果あり」
「よし、ワイヤーを引き戻し、G1に向かって回転式横斬りを食らわす。更に、ガルーラは火力を温存しつつ援護!」
武田海将補は指示を出すと、ブリッジに蒼井と三神がやってきたことに気がついた。
「蒼井、大丈夫か?」
「はい、ご覧の通りに。戦況も優勢ですね」
「一応だがな」
武田海将補は言った。
ショックアンカーに苦しめられていたゴジラではあったが、ゴジラは目を見開くと、その体を大きく動かした。そして、顔を海から出すと、大きく息を吸った。
グォォォ!
「くっ!悪あがきだ!」
ショックアンカーから伝わる揺れを堪えながら、艦内で武田海将補は言った。
「あ!武田艦長!大至急、ゴジラから距離を取って下さい!恐らく、パワーブレスを海中で使う気です」
三神は武田海将補に言った。
「わ、わかった。ショックアンカーを伸ばせ!」
しかし、間に合わなかった。
……グァッン!
ゴジラの出したパワーブレスは、海中では巨大な気泡となってショックアンカーに向かって放たれていた。
そして、ショックアンカーは切れ、おおと艦内は物凄い衝撃を受けた。
「くっ!」
「うわっ!」
「ぐわっ!」
武田海将補はその場に食いとどまる。三神と蒼井は思いっきり倒れた。
ワイヤーが外れ、ゴジラは再び海上へ、そしてそこへ援護射撃を仕掛けてきたガルーラに放射能火炎をすかさず浴びせる。
『うわっ!』
『大丈夫ですか?近藤さん』
放射能火炎を軽く受けた近藤機に土方は声をかける。
そして、赤川機と耕助機はカドミウム弾をゴジラに向かい撃つ。
弾!弾!
更に後から、結城機と台場機がミサイルを撃つ。
爆!爆!
「よし、艦のチェックはどれくらいだ?」
「ショックアンカーが使用不能ですが、後は問題ありません」
「よし、ニードルとカドミウム弾を一斉発射!更に、大型ニードル砲も用意しておけ!」
武田海将補は指示を出しておく。大型ニードル砲は既に、昨日使い切り、現在は今朝補充できた一発のみであった。
「二連式で無くても、現状ならば効果に期待できる」
刺刺弾弾刺弾刺刺弾刺弾弾!
海中はニードルとカドミウム弾により、揺れていた。そして、昨日から続いている事もあり、ゴジラもかなりのダメージを受けていた。
「おおととガルーダならば、勝てるかもしれない」
望みではなかった。可能性として、三神はそう呟いた。
グオォォォォーーーォン!
ゴジラは咆哮し、その全身を海面から飛び上がらせ、叩きつける。そして、辺りに潮を散らし、視界を奪う。海中でも、おおとのソナーにバグを与える。
「クジラみたいだ………」
三神はその豪快な戦い方を見て、そう口にした。そして、今まで見ていたゴジラの戦いはゴジラにとって、対したものではなかった。現在のおおととの戦いで、やっと生物ゴジラの本当の戦いを見せ付けているのだと感じた。
「艦長!大戸島まであと10分の距離になりました!」
水測士が武田海将補に伝える。
「もう限界か!」
『艦長!こうなったら、一か八かだ。やっちまいな!駄目であっても、後はわしらが食い止める。それよりも、今やつを倒せ!それこそわしがアメリカから来た理由じゃ!』
「じぃちゃん………」
「よし!魚雷発射!G1を当艦に引き寄せる!及び、大型ニードル砲発射用意!更に、回転式横斬りを仕掛る!」
耕助に一喝された武田海将補は、決心し、指示を出す。
爆!爆!
魚雷はゴジラの近くで爆発した。そして、ゴジラに迫るおおとの音を察知し、ゴジラも息を吸い込み、潜る。
グォォォ!
更に、ゴジラの背鰭はゆっくりと発光を始める。淡く海中を熱で揺らしながら、背鰭の白い発光とは対照的な黒い巨体を進める。
「G1接近!」
「衝撃用意!大型ニードル砲発射!」
「衝撃用意!大型ニードル砲発射!」
武田海将補の指示で皆一様に何かにしがみ付きながら、大型ニードル砲を放った!三神もそれに従って、柱にしがみ付く。更に、回転式横斬りをする為の回転刃が海中を切り裂いていく。
ゴジラ、大型ニードル、おおと、この三つが海中を切り裂き、泡立て、海中は透明度を失われた。
そして、大型ニードルがゴジラに刺さろうとした時!
…グォッン!
パワーブレスと更に、放射能火炎を織り交ぜた火球の様な息を吐き、大型ニードルと自らの位置を無理やり遠ざける。
「大型ニードル外れました!」
「くっ!まだ回転式横斬りがある!衝撃用意!」
武田海将補の指示の中、三神は考える。今のゴジラの技は、放射能火炎の持つ高熱をパワーブレスに含ませて放った複合技と考えるのが妥当であろう。更に、ゴジラ自身の回避に加え、パワーブレスによる直接攻撃と、その熱による海水温の急上昇によって、海中に揺らぎを生じさせ、命中率の高い大型ニードル砲を回避したという訳である。
「………ぶつぶつうるさいのですが」
隣にいた蒼井が言った。どうやら、口に出していたらしい。
一方、斯様にして大型ニードル砲を回避したゴジラは、いまだに発光の続ける背鰭を立てて、おおとの回転式横斬りと刺し合おうとしていた。
しかし、おおとはゴジラに下を取らせない!
ゴジラは体を横にした。そして───
斬!斬!
二つの刃が交わる!
そして、交差した。
2005年7月18日10時40分。
ゴジラは大戸島へ向かい、海中を突き進む。
一方、おおとは戦闘不能になり、海上に取り残されていた。おおとの右側の回転刃は湯気を上げ、形を崩していた。
第二回戦はゴジラの勝利に終わった。
「大丈夫か?」
「えぇ、なんとか」
三神はさっきとは逆に蒼井に起こされ、立ち上がった。
「ゴジラは?」
「………大戸島に向かっている。甲板に上がろう」
三神が聞くと、武田海将補が答え、ブリッジを後にした。
2005年7月18日10時42分。
甲板へ上がると、目の前には見慣れた大戸島があり、その手前にはゴジラの黒い影、そして上空には低空飛行をしてゴジラと戦う六機のガルーダ。
「あの青い線が入っているのが、俺の機………現在三神指導官の乗る機だ」
蒼井は三神に教えた。三神は頷くと、その機体を目で追った。
ゴジラはゆっくりと大戸島に迫る。現在の方角は港とは反対方向に程近く、どちらかと言えば三神が入り浸る入り江に近い方向であった。
そして、その時大戸島から鳥が一斉に羽ばたいた。ゴジラが迫ってきている事を察知したのであろう。三神は急に島に残る仲間が気になった。
「島の非難は?」
「まだ一部完了していない。先ほど、避難用に緊急で用意した陸自と空自のUH-47チヌークが計三機到着したと報告が入っていた。準備が出来次第順次、全員非難する」
武田海将補は三神に言った。
ゴジラは放射能火炎を吐いた。白い光の煙の柱が海上に伸びる。そして、それに翻弄されつつも、青い線の入った耕助機は、ニードルを撃ち、更に旋回してゴジラの上陸を阻む。
更に、赤い線の入った赤川機もミサイルとニードルで応戦し、残り四機のガルーダも援護をしながらゴジラの動きを封じる。
しかし、ガルーラは出撃から一度も補給も補充もしていない。おそらく火力切り寸前で戦っているのであろう。ゴジラの攻撃に当たる事も増え、機動力も攻撃力も落ちている事が素人の三神にもわかった。
そして、ゴジラは浅瀬に達し、ゆっくり身を起こし、海底にその足を踏みしめた。
グオォォォォーーーォン!
ゴジラは、島中に響く咆哮をすると、ゆっくりと大戸島へ上陸した。