最終兵器



2005年6月10日23時。
 訓練は夜にまで及んだ。
「も、もうダメだ」
 訓練が終わり、蒼井と赤川は宿室に戻る体力も無く、実験ドックに置かれているおおとの船室のベッドに倒れこんだ。
「な、なんなんだあの爺さん。俺達が先にへばるなんて………」
「あれではあの爺さんが操縦しても問題無いのではないのか?」
「本当だ………。大体、なんなんだよあの機体!あれで未完成って………。あんな化け物に更に冷凍兵器だとかいう新兵器とかもつけるって言うし、ある意味ゴジラ以上の強敵だぞ」
「確かに。他の戦闘機とはわけが違う」
「赤川、この殺人的な訓練が後何日続くんだ?」
「さぁな。ゴジラが現れなくなるまでだろ?」
「それまで、あの爺さんのスパルタ訓練が続くのかよ………。大体、あの爺さんがあれじゃあ、その孫の三神博士って一体どんな人物なんだ?」
「それこそわからん。まぁ、こうしているうちにいつか逢う日が来るだろ?」
「だな。………部屋、戻るか?」
「いいや。体が動かない。まだ体が振り回されているみたいだ」
 まもなく、二人は死んだように深い眠りに落ちるのであった。


2005年6月12日10時頃。
 東京都JR中央線飯田橋駅の首都高側の改札前に三神の姿があった。
 そして、数分と経たぬ内に地下鉄連絡口の階段から迷が現れた。
「お待たせしました」
「いえいえ、こちらこそお呼びしてしまって。………沖縄まで行っていたところを」
「まぁそうですが、どちらにしても今日辺りには報告も兼ねて東京に戻る予定でしたから………。それよりも、これなのですか?」
 迷は改札と改札に挟まれた階段下に置かれた公衆電話を見た。
「はい。この公衆電話が12月のゴジラヨーロッパ出現時に団長が副々団長にかけた電話だそうです」
「しかし、よくわかりましたね?」
「実は裏技を使いました」
「裏技?」
「世界の情報収集のスペシャリストの方々に………」
 三神は苦笑しながら言った。そう、三神はグリーンの上司であり、CIAの局員であるフィリップ・クルーズに電話で調査を依頼していたのだ。
 迷も言葉の意味を理解したらしく、三神に聞いてきた。
「そんな風に私的に他の国家機関を使ってもいいのですか?」
「うっ………まぁ、彼らも団長の行方を追っていた訳ですから、一石二鳥という事で………」
 痛い所を突かれた三神ははにかみながら言った。
「なにはともあれ、この情報は全く雲を掴むような話であった現状に僅かでも希望を与える存在ですよ。それに、これで団長がヨーロッパの時には日本にいたという事がはっきりとしました」
「そうですね。…………しかし、ここから先はどうしましょう?12月の情報では、今更誰も覚えている人なんて見つからないと思いますよ?」
 三神は迷に聞いた。
「確かに、ただ闇雲に探しても見つからないでしょうね。しかし、この情報は後々役に立つはずです。…………今はまだデータを集めている途中ですから。そうですね…………今の調子ならば、一ヶ月以内にはゴジラ団にたどり着いて見せますよ」
 迷は自信満々に答えた。そして、一呼吸置くと、再び話を切り出した。
「とりあえず、今日のところはもうここに用はありませんね。………折角ですから、どこかでお茶でも飲みませんか?ついでに沖縄での調査結果を教えますよ」
「いいのですか?依頼人は僕では無くて、山根さんですよ」
「この調査はあなたの協力が必要不可欠ですから。これはあなたへの当然の情報交換ですから」
「ありがとうございます。………それでは、そこの喫茶店にしますか」
 三神は駅の隣にある喫茶店を見つけて言った。


2005年6月12日10時過ぎ。
 喫茶店の二階席に二人は座って、買ったコーヒーとサンドイッチを前に迷は話を始めた。
「沖縄での調査ですが、なかなか厄介でした。とりあえず、先日の大戸島の時に行った時にセンターの所長さんから聞いておいた第二四昂丸事故を調査した元教授のもとを訪ねる事から始めました。その結果、あの報告書に書かれていた通りの事実があったそうです。更に、八神宗次のその後に関してですが、小学校卒業まではわかりました」
「本当ですか!………いやはや、流石は迷さんですね。もうそこまでわかったのですか」
 三神は飲みかけたコーヒーをテーブルに戻して言った。
「はい。とは言っても、事故後身寄りのなくなった彼は、沖縄県那覇市に住む遠い親戚夫婦の家に引き取られたそうです。結果からいうとその親戚の家は今もう無く、話をする事はできませんでした。その為、八神が通っていた小学校などを聞き込んでみました」
「………本当に聞き込みとかって、するんですね。………あ、すみません」
 三神は話が脱線した事を謝った。迷は軽く笑って、サンドイッチを咥えると、続きを話す。
「ただし、あまりいい成果は得られませんでした。………いや、彼が団長か否かという問いに関しては逆にいい成果とは言えますね」
「それは?」
 三神はテーブルに前かがみになる。
「私は、学校や近所の聞き込みをした結果、当時の八神を知る人物に会いました。具体的には、学校の当時彼を編入以来、卒業まで連続で担任をしていた久保先生という方と、卒業アルバムからたどり着けた当時の彼の友人であった池原さん、後その親戚夫婦の家の斜め向かいに当時から住んでいる嶺さんの三名です。勿論他の方にも何人か話を聞いているのですが、収穫は得られませんでした。どうやら、八神少年は事故のショックもあってかとても暗く内公的性格の持ち主であったそうで、更に卒業後以来は一切の交流を絶っていた為、彼を今も記憶している人自体がとても少なく、記憶していても、交流していた訳ではない為、詳しい人物像がわからないというものでした。そして、久保先生からの話では………」
 迷は手帳と一枚のコピーを取り出した。コピーは写真らしい。
「これは卒業アルバムからコピーした八神少年の写真です」
 三神はコピーを見た。そこに写る少年はおかっぱ頭というには伸びすぎ、ボサボサになっているやぼったい雰囲気に、それには不釣合いなほどに知的な印象を与える垂れ目に宿す眼光が印象的だ。ある意味これが小学生とは思えない程の大人びた雰囲気がある。
 三神がコピーを見ている間に情報の整理が完了した迷は、話を再開した。
「久保先生の話では、成績は極めて優秀で、当時塾に通っていた秀才でもいつもかなわなかったそうです。まさに天才というものですね。………しかし、協調性に欠ける面を持ち、更に社交性に欠ける為、俗にいるクラスの問題児よりも担任としては大変だった様です。しかし、その性格故、表立った問題は起こさない為、久保先生以外の教師には印象に残っていないらしいです。ただ、一度だけ学芸会の準備で彼がリーダーに立ったことがあったそうですが、その時はクラスをまとめ、的確な指示でその時の学芸会は大成功を収めたそうです。つまり、非常に高いリーダー性を持つようです」
「確かに、団長のイメージに被りますね」
「そして、池原さんの話もまた大体同じようなものでしたが、ただ八神少年がよく海を眺めていたそうです。そして、その理由を一度聞いた事があったらしいのですが、彼は海の先に自分の家族を殺した相手がいて、その相手を隠した人がいる、それを忘れない為に海を眺めているそうです。どうやら、彼はゴジラが家族を殺したと考えていたようです」
 そして、迷は次のページをめくった。
「最後に嶺さんの話ですが、これは他の話とは少し違い、親戚の家の事を聞けました。その親戚の家はそれなりの資産をもつ会社経営者の家で、子どもが出来なかった為、夫婦は八神少年をわが子のように可愛がったそうです。ただし、前述の通り、彼は心を閉ざした性格のままで、夫婦も苦労したそうです。とはいえ、暮らす時間がその心を開かせていった様です。しかし、そこで事件が起きました。親戚の経営する会社が倒産し、多額の借金を抱えたそうなのです。それにより、彼は卒業式間際に夜逃げ同然で行方をくらましたそうです。それゆえ、八神の行方はそこで止まってしまった訳です」
 迷は手帳を閉じた。
「迷さん。それ以降の八神少年の行方を追う術はないのでしょうか?」
「まったく無いわけではありません。ですが、いくつかの方法を試してみるという感じなので、この件もあと一ヶ月でけりをつけますよ」
「信頼して大丈夫ですよね?」
「ええ。………それから、その事故についても調査をしたいので、そちらをお願いしていいですか?」
「はい、いいですよ。それに、実はその事で少し調べてみていたのですが、少し面白い事がわかりました」
「それは?」
「実は事故の調査の指導をしていた人物がいまして、その人物は当時市議会議員になったばかりの神宮寺薫だったんですよ」
「神宮寺とは、あの官房長官の?」
「えぇ、おもしろいでしょ?まぁ、特に不正などの犯罪があった訳ではありませんが、ゴジラ団の調査に神宮寺官房長の名前が出るとはおもしろいことではありませんか?」
「そうですね。記憶に留めて置きます」
 迷はその事に笑いながらメモを取った。
「さて、このまま昼食と言いたいのですが、残念ながら午後に山根さんに会わなければいけないので、この辺で」
「そうですね。………今からならば、船にも間に合いますし、ではこれで分かれますか」
 そして、二人は喫茶店の出入り口で別れた。


2005年6月27日9時。
 もうすっかり見慣れた某所のガルーダ訓練用の実験ドックに蒼井と赤川の姿があった。
 しかし、今日は他の全パイロットが集まっていた。そして、おおとの艦上にも人数分のガルーダが並んでいた。そう、蒼井と赤川の訓練によって得たデータからガルーダはほぼ完全なものとなったのだ。そして、いまだ開発中の冷凍兵器以外、全ての装備が完成したのだ。
「………とは言っても、蒼井、お前のガルーダが装備としては寄せ集めの代わり、もっとも高性能だぜ。その次が赤川機だ」
 武田海将補が横から言った。
 事実、外観の全体的な部分では二人のガルーダと他の機体との違いはないが、データ収集の為の目視判別をし易くする為にした青と赤のそれぞれの塗装と訓練によりついた汚れや傷は、無機質な新品の持つ雰囲気とは全く違っていた。ちなみに、青が蒼井機、赤が赤川機と洒落た計らいがこの塗装にはある。
「この塗装は他と同じに塗りなおすとそれだけ無駄な金がかかるという理由で、今後もこのままなのでよろしくの」
 耕助がさらりと二人に言った。二人も一向に構わない。
 改めて、ガルーダを見てみよう。その形は今までの戦闘機とはまるで違うものであった。まるで翼を広げた怪鳥のように横に広い形であり、エンジンは背面に計六つあり、更に底面には補助ブースターとして八つ装備されている。そして、胴自体が平べったく、全体的に流線型をしている。その胴の大きさに対し、ウイング部は他の戦闘機か或いはスペースシャトルの様な短いものになっている。そして、全体的に鋼鉄のメタリックシルバーが基本カラーである。蒼井と赤川機はそこにそれぞれのカラーのラインが入れられているのだ。そして、翼を広げた怪鳥の肩に当たる部分に、それぞれ巨大なエネルギーユニットが設けられている。これこそが目下開発中の冷凍兵器を搭載させるユニット部分なのだ。
 また、装備武器であるが、一部研究者の間でゴジラに対する効果を指示されている『カドミウム弾』なる化学兵器と爆発に頼らない『ニードル』という文字通りとげの様な鋼鉄の貫通力を可能な限り高めたミサイル兵器、そして各種Fシリーズ規格のミサイルを最大四本まで装備する事が出来る。特に、ニードルに関しては、射出方向によっては、海中を進むゴジラに対しての効果も期待出来る。
 この極力火器兵器に頼らない装備は、ゴジラを倒した際、万が一ゴジラの核と連鎖を起こし、核爆発を誘発しないようにという、自信の表れなのである。
「これからいよいよ本格的な訓練か………」
「あぁ、もうガルーダの扱いに慣れた俺達が、全力でサポートするんだぞ」
 赤川は蒼井に言った。その通りだ。これからはますます大変になるのだ。蒼井は武者震いをした。
 これから数週間、彼らはいつゴジラが出現しても大丈夫であるように、猛烈な訓練をするのであった。


2005年7月15日朝。
 新東京国際空港の入国審査を一人の女性が受けていた。
「では、名前を………」
 パスポートを確認しながら、審査員は女性に聞いた。
「鬼瓦優です」
 優は再び肩の長さまで切った髪を揺らし答えた。
 程なくして入国を果たした優は、もういくつ目かわからない判子の押されたパスポートをしまうと大戸島に向かう為、JR線のターミナルへ降りていった。


2005年7月16日朝。
 三神は携帯電話で優からの連絡を受けると、自宅から海岸へ向かった。
「早かったね」
 港で優を見つけると三神はそう話しかけた。
「まずは元気?とか久しぶりとかじゃない?………東京からの船が早まったからこっちへの連絡船も一本早いのに乗れたのよ」
 優は三神の第一声に不満を言いながらも、笑って答えた。
 三神はその顔を見れる事にささやかながら、幸せと安心を感じたのだった。優の荷物を受け取り、一先ず自宅へ向かう途中、三神はミニドア島で再会した時の憎しみに似た優の視線を思い出す。
「どうしたの?」
 優が怪訝そうな顔で三神の顔を覗き込む。いつのまにか、あの日から当時の苦痛を思い出し、涙を浮かべていたらしい。
「い、いや。ゴミ……かな?」
 そう言って誤魔化す。そして、あの決断は間違っていなかったのだと心の中で言い聞かせながら、自分の今の幸せを再度確信する。
「アデ?優でネェカ」
 突然、ついつい存在を消去したくなる声が三神の耳に飛び込んだ。
「ムファサさん!お久しぶりです………」
 優はなぜか島の漁業組合所から出てきたムファサを見て挨拶をする。そして三神の耳元で、まだ島に居たのね、と囁いた。ごもっともな意見である。
「………ムファサ、どうして組合にいたんだ?珍しい」
 三神はムファサに聞いた。そもそも、何も催しの無い日にムファサが屋外に出ている事事態が珍しい。というよりも、見た事がない。
「ミカミがセンターにイネェから、仕方なくオラが行ったんダ。感謝シロ」
「今日は非番なんだけど。………で、どうした?」
 えばるムファサに、三神は頬を掻いて言った。
「昨日から魚が獲レンダ」
「え?この時期にか?どれくらい?」
 ムファサの返答に三神が眉を寄せて聞き返す。
「雑魚一匹獲れネェダ」
「マジで!………優、ちょっと待っててくれ」
 三神はそう言い残すと、漁業組合所へ向かった。
 優は、待ってろとは言われたものの、気になり三神の後を追った。ムファサもなんとなく付いていく。


2005年7月16日朝。
 組合所には組合長や信吉爺さんを始め、島の漁師が集まっていた。
「おっ!ミジンコ!待ってたぞ!大変なんだ!」
 組合長は入ってきた三神を見ると、いきなり声をかけた。
「えぇ。話はムファサから聞きました。詳しくお話を聞かせてください」
 三神はまっすぐ組合長のところまで歩いていく。
「おう!実は、つい昨日
の早朝の漁まではまともに獲れてたんだ!それが、昨日の午後から突然さっぱりなんだ!」
 組合長はほとほと困り果てた表情で話した。
「…………」
 三神は無言でしばらく考える。
「ねぇ、これってもしかして………」
 後から来た優が横から話しかける。
 三神にも、優の考えている可能性を頭に浮かべていた。
「もう少し、待っていて下さい!」
 三神は組合長に言うと、漁業組合所を出て、国立大戸ゴジラ博物館へ走った。
 そして、その途中に神谷から聞いた某所へのホットラインを携帯にプッシュした。
「………あっ!国立大戸ゴジラ博物館の三神小五郎です!至急、そこにいる中の最高責任者を!」


2005年7月16日8時40分。
 まともにコールされた所を見た事のなかったこの施設のホットライン専用電話が突然目の前でコールされ、思わず電話を取ったのは蒼井であった。
「は、はい……もしもし。…………えっ!………さ、最高責任者?」
 突然の三神からの電話に戸惑いつつも、蒼井はホットライン用の電話である以上いたずらはあり得ないので、頭の中で責任者を上から羅列していく。総理、神宮寺官房長、長官、白井海将、武田海将補………。
「………今、呼びます」
 蒼井は三神にそう言うと、武田海将補を大声で呼んだ。


2005年7月16日朝。
『武田さ~ん!』
 まるで旅館の番頭が呼んでいるかのような大声が電話の先から聞こえてしばらく後、現状で向こうの最高責任者である武田海将補が電話に出た。
「あ、はじめまして。三神小五郎です!すみません、他に方法が直ぐに浮かばなかったもので………海将補ということは海自さんですね?実は、ここ大戸島近海でゴジラ出現の兆候が見られたもので………はい!そうです。そこで、小笠原諸島沖もしくは周辺海流に何かゴジラの可能性を示すような情報はありませんか?」
 相手の武田海将補は非常に実戦向けの優秀な人らしく、直ぐに三神の言葉の真偽を確認したらしく、既に先ほどの人に調べさせている様だ。
『三神博士、確かに可能性を示すものがいくつか確認できました。しかし、まだ数値にしたら精々十数パーセントらしい。三神博士、わかっていると思いますが、事をまだ大きくしないように。………こちらの態勢が整いましたら、博物館の方に連絡します』
「わかりました。お願いします!」
 三神が電話を切ると、丁度博物館に入った。
「所長!」
 三神は所長を呼んだ。
「ん?どうした?三神君」
 所長は予想通り電子顕微鏡室から出てきた。
「仕事です!………海水温と放射能濃度のデータを!」
「どこのだね?」
 所長は三神の尋常ではない勢いに驚きつつも、センターの研究室に入りながら聞いた。
「ここ、大戸島近海です!」
「えっ?」
 そうして所長が驚く中、開いた研究室のパソコンの一つ───実験の一つで大戸島近海の海水温と放射能濃度を測定していたデータを記録していたもののモニターには、大戸島、そして小笠原諸島としてももっとも沖に設置した観測ブイのデータが通常以上の数値を示していた。
「………すぐに、村長と防衛庁やら内閣やらにこのデータを送って下さい」
「あ、あぁ………」
 所長は放心状態になりつつもすぐさま、パソコンに向かった。


2005年7月16日9時。
 某所では、既に三神からの電話や国立放射性生物研究センターから送られたデータ、更にその他データから、数十パーセントから50パーセントをゆうに上回る値に跳ね上がった出現の可能性に、戦艦おおと及びガルーラ部隊の出撃準備に入っていた。
「本当にこの日が来たか………」
 武田海将補は呟くと、国立大戸ゴジラ博物館に電話をかけた。
 そして、しばし所長と事態の情報を交換すると、電話を切った。
 その後、直ぐに内閣総理大臣らの許可が届いた。
「起動!」
 武田海将補は言った。
おおとのスピードでは到着は早くても夜になるだろう。間に合う事を祈りつつ、戦艦おおとは、おおととしての初陣に出た。
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