《旧約》ゴジラ‐GODZILLA[2005]

 街が燃えていた。
 逃げ惑う人々がいた。
 我が子を庇おうとしている親がいた。
 帝都・東京はたったの一夜で10年前に戻ってしまった。
 たった一匹の怪獣のために……
 その怪獣の名は、ゴジラ。
 全ては連続海難事故からだった。
 事故多発地帯の近くにある島、大戸島にはある伝説がある。






 『何日も魚が取れないのはゴジラ様がお怒りになっているからだ。祭りをしなければ、若い娘を生け贄にしなければゴジラ様がさらにお怒りになり陸へ上がってくる…』というものだった。
 ある嵐の夜、それはやってきた。島民の一部の家族は殺され、家は島の半分が壊された。島にある三つの井戸の内一つは放射能汚染で使えなくなった。島の財産である家畜達は半分も殺された。
 たった一匹の怪獣のために…
 やがて、ゴジラは東京へ現れた。
 そして、カメラはとらえた。
 10年前の光景…地獄絵図を彷彿させる闇の中に鮮やかに生える炎。
 ただ、10年前に無かったもの。それは、炎を放つ不気味な巨大な影。
 やがてその陰はこちらへと近づいてくる。
 雑音のせいではっきりと聞き取れないがカメラの後ろでリポーターらしき人物がいった。
「それでは皆さん、さようなら、さようなら…」
 ここでテープは終わっている。
 恐らく中継用のコードが切れて放送が切れたのだろう。
 このテープは中継された映像をテレビ局が録画したものだからだ。しかし、オリジナルのテープはもうこの世には残っていない。なぜなら、この数秒後に取材班の居た電波塔ごとゴジラによって破壊されたのを少し離れたところにいた新聞記者が目撃していたためだ。
 今でもこのテープの映像は一切の編集もされていない状態でDVDに写され、大戸島にある国立大戸ゴジラ博物館にて流されている。
 その後、ゴジラは日本の未来を託すべき人材であった若き天才分子物理学者「芹沢大助」博士の開発した最強であり悪魔の発明と本人がいっていた兵器「オキシジェン・デストロイヤー」によって、東京湾の一部生物環境、そして芹沢博士本人を道連れにゴジラを骨一つ残すことなく消滅させた。
 また、芹沢大助博士は自らの命を絶つ前に一切の研究資料を処分して、オキシジェン・デストロイヤーの使用は今後、末世まで二度と使われないように歴史の闇へと葬ったのだった。






 こうして、ゴジラは二度と人類の前に現れることは無いと思われていた。
 しかし、当時ゴジラをもっとも生物として見た人物であり、芹沢博士の師匠である生物学者の山根恭平博士は、ゴジラ消滅後こう言った。
『あのゴジラが最後の一匹とは思えない…』
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