赤い竹
三大ピラミッド、スフィンクス…………何千もの歴史を超えて、目の前に古代文明の遺物が鎮座している。
「これ、ピラミッド!あれ、スフィンクス!」
ムファサがガイドしている。
「4、5千年という、現代を生きる僕らには恒久ともいえる長い歴史を超えて、今ここに世界の古代文明七大建造物で唯一在り続ける。世間でピラミッドパワーなんていわれるものもあるけど、僕はそれだけで十二分にピラミッドの力だと思うよ」
流石に、ゴジラが襲来するというだけあり、ピラミッド周辺にいる観光客はまばらだ。おそらく、既にいた観光客が帰国の前に寄っているといったところだろう。もしかしたら、これで見納めになってしまうかもしれないという考えも少なからずはあるだろう。
そんな事をクルーズが考えていると、怪しげな集団が目に止まった。
ピラミッドを見ずにあちらこちらの観光客を見ている。
─────ま、まさか………
「犬も歩けば棒に当たるの後者だな…………」
三神がボソリと日本語で言った。独り言だったのだろう。しかし、三神もクルーズと同じ事に気が付いたのだろう。
そう。その集団にいたのは、クルーズ自身を含む各国のスパイが入手したゴジラ団副々団長の姿であった。名前も国籍も未だに判明していない、完全なテロ組織でも秘密結社でも国際犯罪集団でもない、全ての要素を含み、どれにも当てはまらない要素を持つ、長年スパイとして国際社会に身を置き、国際問題に関わってきたクルーズですら、一致する組織が存在していない。そして、下っ端────団員を捕まえる事は容易いのにも関わらず、上層にいる者────団長は全く姿を掴む事も出来ていない。
そんなゴジラ団は、目の前にいる。副々団長以外に五人の団員、内一人はステンレスの頑丈なケースを持って、一塊になり、観光客を見ている。クルーズは、身を翻し、見つからぬようにする。
三神も優を引っ張って、ゴジラ団に気づかれないようにする。
しかし─────
「どした?ミカミ!イチャイチャすなら、ホテル行け!」
ムファサを忘れていた!ムファサ自身はゴジラ団に顔を知られていない可能性があるが、今の大きな一言、『ミカミ!』の部分は完全にゴジラ団の耳に入ってしまった!
三神がいるとわかって見られれば、顔を見せなくても正体がバレてしまう!
「ミカミコゴロー!」
副々団長が叫ぶ!やはり、気づかれた!
「しまった!」
三神も振り向く。
その瞬間、三神と副々団長の目が合う。
クルーズはコートに隠してある銃に手をかける。
団員がケースをかばう。
「銃だ!」
「肉片だ!」
副々団長と三神の声が同時に上がる!
副々団長も銃を抜く!
クルーズも銃を構える!
皆の動きが止まる。硬直状態になる。誰が、動く!
弾!
火蓋を切ったのは、クルーズであった!刹那、副々団長の銃が吹き飛び、三神が同時にケースを持つ団員を目指し、飛び出した!副々団長は手を押さえながら後退する。四人の団員が副々団長とケースをかばう。クルーズも銃を構えながら、走る。
弾!
クルーズが後方から三神を援護し、三神を狙う団員の取り出される銃を吹き飛ばす。
しかし────
「───ッ!」
三神が慌てて立ち止まる。三神の目の前には、団員の構えた銃があった。
次の瞬間、団員はニヤリと笑い、身を翻し、走った。
「…………待て!」
クルーズは叫びながら、走り出した。三神も走る。その後に、優とムファサが続く。
しかし、やはり職業の違いか、クルーズと皆との距離が離れていく。なんとか、2年間の離島暮らしをしている三神が息を荒げながらも少し後ろについて行く。
2004年12月17日13時30分頃。
ゴジラ団副々団長は走っていた。取引は当然失敗だ。取引相手はピラミッド付近で確認する事は出来たが、クルーズ達に先に見つかり、逃げている。
クルーズがじわじわと迫ってきた。
何とか、隠れ家まで行かなければ!
やがて、隠れ家が近くなってきた。
「ゼェ………ハァ………ゼェ………ハァ………まぁ………ゼェ………てぇ………ハァ………」
三神は声にならない声を上げながら、大分距離がついてしまったクルーズとゴジラ団の後を追う。優とムファサは、かなり後ろにいる。いくつか車が行き交う通りを横断した、おそらくそれらによって距離が離れたのであろう。
やがて、ゴジラ団はとある建物の中に入って行った。
クルーズは少し思案したが、罠であろうが、チャンスを逃すわけにもいかない。建物に入って行った。
まもなく、三神も建物まで来た。
足元がふらつく。目眩もする。息は荒く、心臓もバクバクする。胸と脾臓が苦しい。
三神は後ろを振り返る。しかし、後の二人の姿は見えない。どうやら、随分足止めされたようだ。
三神は呼吸をなんとか整えながら、建物へ入って行った。
一階には誰もいない。この建物は二階もあるらしい。三神は階段を登って行く。
弾!
突然銃声がした。
三神は慌てて階段を登った。
二階には、ゴジラ団とクルーズがいた。銃を握るのはクルーズ。打たれて苦しんでいるのは、ゴジラ団のケースを持っている団員だ。
「三神!そのケースにゴジラの肉片が入っている!」
クルーズが驚く三神に言う。
そして、ケースが床に落ちた瞬間!ケースからビンに入ったゴジラの肉片が飛び出した。
三神と副々団長は同時にビンへ飛びかかった!
そして、わずかな差で肉片は三神が手にした。
ゴジラの肉片奪還!
三神は肉片のビンを持って、クルーズの方へ戻る。
形勢は完全にクルーズと三神に偏った。
しかし、副々団長は諦めていないのか、団員のいる方へ戻る。
そして、おもむろに副々団長は薄ら笑いを浮かべながら、小さなボール型の物を取り出した。
「これは三神小五郎にはわかるね…………」
そう。それはまさしく、三神が発見したDO-M1を改良した菌で赤い竹が作った爆弾────DO-Hであった!
「これは赤い竹から奪ったたった一つのDO-Hだ!わかるだろ?この意味が!道連れだよ!肉片を奪われるならば、いっそ、この世から葬ってくれよう!」
そして、高らかにゴジラ団は笑いだした。まるで、勝ち誇ったように………
「狂っているな!」
クルーズが吠える!
「死ね!」
副々団長はDO-Hの作動ボタンを押した。
DO-Hが作動し始める。ゴジラ団は高らかに笑っている。
三神はゴジラの肉片のケースを懐へしまう。
クルーズが窓から飛んだ!
クルーズは見事な受け身をとり、地面を転がる。無事着地した。
三神も窓へ近づく。後ろではゴジラ団の笑い声が聞こえる。
「飛べ!三神!」
クルーズが叫ぶ。考える時間はなかった。
三神は、渾身の力を振り絞って飛んだ!
刹那─────
爆!
────爆弾は爆発した!
そして、爆風が三神を吹き飛ばした!
三神は地面に叩きつけられる!
クルーズが駆け寄ってくるのが微かに感じる。
やがて、三神の意識は遠のいていった……………
三神の意識が戻ったのは、爆発から何時間もたった後であった。
三神が目を開くと、コンクリートの上に白いペンキが塗られた、見知らぬ天井があった。
口には酸素マスクが被せられていたが、何というのか三神は忘れたが、喉に通して人工的に呼吸させる為のチューブはついていなかった。
しかし、左腕には点滴がされ、心拍計らしき装置に繋がっている電極が右腕に貼られていた。
そして、三神はやっとここが病院である事を理解した。段々思考が活発になっていく。
現状を確認するために顔を動かすと、ここが個室である事がわかった。ベッドは自分のいるもののみ。扉はベッドの正面に一つ。窓はベッドの右にあるが、ブラインドが閉められ、外は見えない。その手前にある机には、電源の付いていない薄型モニターがあり、コードらしき物がその脇に広げられている。後は部屋の数ヶ所にある電灯が部屋を明るくしている。
次に体を動かす。ベッドの中では平気だが、体を起こそうとすると、体中が悲鳴を上げる。
そうこうしていると、扉が開いた。
途端に賑やかになった。この体勢では見辛いが、扉の向こうは廊下だ。そして、騒がしく人が行き来している。
「ウギャーーー!」
悲鳴だ!
「………消毒が優先よ!」
この英語の声は、優に似ている。
三神がそう思っていると、優の姿が見えた。
「あ!気が付いた!」
と優が日本語で、どうやら三神に向けて言いながら、部屋に入ってきた。
「つい、1時間位前に、ゴジラが現れたの」
ゆっくり、三神に言い聞かせるように言った。
三神は、黙ったまま起きあがろうとするが、くっ、と痛みに顔を歪める。
「無理しちゃだめよ!仮にも、爆発に巻き込まれたんだから………」
優が三神を押さえる。
「だが………ゴジラが現れたのに、俺がいかなきゃ………誰が行く!」
三神は顔に影がかかりながら、キリッと決めて言ったが、優は何も言わずに右手にある机のモニターやコードを扱う。
「はい。ゴジラから世界を救いたいのだったらこれを使いなさい。…………クルーズさんが届けてくれて、なんか向こうのデータをリアルタイムで見れるらしいわ。………はい、インカム。クルーズさんやムファサさんと通信が出来るらしい」
そう言って、三神にインカムを付ける。モニターも画面に何かが映った。三神の顔だ。カメラが付いているようだ。三神の映像が小さくなり、エジプトの地図が映り、さらに、ゴジラの映像が映る。
「もしもーし!」
三神は試しに声をかけてみる。
『オッ!ミカミ!オラや、オラや!』
ムファサがモニターに映る。
「ムファサか!今目が覚めた。情報を、ゴジラは今どこにいるかを教えてくれ!対策はどんな感じ?それから、被害は!あぁそれと、ゴジラ団はどうなった!」
三神は一気に聞く。ムファサは、一度に聞かれてもわからん、と言い。三神は一つずつゆっくり聞いた。
『ゴジラ、カイロ郊外、紅海からの少し離れたトコ、いる』
そう言うムファサの言葉を聞きながら、三神はモニターに映るゴジラを見る。ゴジラは、夕暮れをバックに巨大な影を町にかけながら、歩いていく。
『お前のトコ、ゴジラ見える』
モニターのゴジラを見ている三神にムファサが教える。三神はまだ部屋にいた優に部屋の窓のブラインドを上げるように頼む。
窓の外は、左にはピラミッドが小さく見え、右にはゴジラらしき影が見える。夕日の赤とは違う…………炎の赤が町を染めている。ゴジラは一歩一歩、町を破壊している。
『対策、ゴジラを攻撃だ』
モニターのムファサが解説を続ける。モニターに戦車が映る。
三神が口を開こうとしたとき、ムファサの隣にクルーズが来た。
『三神博士………いや、三神小五郎君!出来したよ!ゴジラ団は全滅した…………とまでは言えないが、ナンバー3に当たる副々団長を倒し、ゴジラの肉片を奪還、死守したのだ誇りに思って良いぞ!』
クルーズは上機嫌で言った。しかし、すぐにその顔は険しくなる。
『しかし、ゴジラが現れてしまった!1時間でかなりの被害が出ている。君もまだ安静にしていなければならないのはわかっているが、我々に協力してくれ!』
クルーズが食い下がるように三神に言う。
三神は、しかし、と言って、クルーズに話し出す。
「ゴジラ団はあの爆発全員死亡した訳ですよね?」
『あぁ、正確には死亡が確定された、だがな。建物は半壊、ゴジラ団のいた部屋は跡形もなくふっ飛んで、誰が誰かの区別もつかないどころかバラバラになっていて、未だに全てを回収仕切っていない』
「…………それなら、ローマの時の作戦を使えばいいですよ。邪魔をするゴジラ団が今エジプトにいないのなら」
『そうか。そうだな。それならば、ゴジラ団の使った手を逆に我々が使ってやろう!準備ならすぐに出来る!ありがとう!』
「待って下さい!」
画面から消えようとするクルーズを呼び止める。
「それなら、ゴジラの写真をたくさん記録してください!ただの写真ではなく、赤外線、X線………ありとあらゆる、用意できる全ての撮影方法で撮影して下さい!…………この先必ず役に立つはずです。勿論、放射能レベルや身体データもお願いします」
三神は可能な限り頭をしたに下げた。
クルーズは頷いた。
2004年12月17日20時頃。
ゴジラは作戦通り、誘導されていた。
皆の判断で紅海へ向かわせる事となった。
ゴジラがゆっくり移動する横では様々の機材でゴジラのデータを収集している。
そして、ゴジラはまもなく、紅海へ入っていった!
作戦は成功した。
しかし、紅海となると、誘導は思うようにはいかず、ゴジラの意志通りに、紅海を南下させ、変わりに陸には上げないようにするという方針で作戦は順調にいった。
2004年12月17日21時。
三神達の作戦が成功し、ゴジラが紅海を南下している頃、グリーンとブラボーは赤い竹の秘密基地を見つけ、その裏で突入のチャンスを伺っていた。
秘密基地はギリシャのとある島で、近くには絶壁の崖があり、まるで自然の要塞のような立地だ。
「クルーズの報告によると、ゴジラ団の副々団長はすでに三神達が倒している。ゴジラも紅海へ向かっているそうだ。残るは赤い竹だけだ」
「そのようだな。オレ達の目的は、†を倒し、赤い竹を壊滅させる事もそうだが、三神の大発見であるDO-Mをやつらから奪還する事だ!」
「あぁ、わかってる。そうなると、いきなり特殊部隊率いて突入する訳にはいかないな」
「そうだ。まず、オレ達が忍び込み、DO-Mを奪還する。そして、特殊部隊が突入し、一気に畳み掛ける」
「では、突入の合図はどうする?」
「爆発音が良いだろう。敵を惑わす事が出来るからな」
「よし、わかった。特殊部隊に知らせよう」
そして話しを終えると、グリーンとブラボーは、中へ忍び込んだ。
秘密基地は大きな二部屋になっていた。一つは研究室らしい部屋だ。もう一つは武器倉庫らしい。†達赤い竹は、武器倉庫にいる。二人は研究室へ忍び込んだ。
研究室には様々な器具が置かれている。そして、クリーンベンチがあった。
そして、クリーンベンチにはいくつものシャーレが置かれていた。
グリーンがクリーンベンチを眺めていると、ブラボーがグリーンを引っ張って、テーブルの影に身を隠した。
すると、部屋に二人の赤い竹のメンバーが入ってきた。
二人はクリーンベンチの前に立ち、器具をいじりながら話をしている。
「………もう残り一つだぜ。†さん、使いすぎ何じゃないか?」
「仕方ないだろうな。ゴジラ団と争った時にかなり使ったからな」
二人の赤い竹メンバーの話から、今赤い竹にDO-Hは一つしかない事がわかった。
そんな時、隠れているグリーンとブラボーの前に、一匹のネズミが現れた。
二人は非常にいやな予感がした。
案の定、ネズミはチューと鳴きながら、二人のいる横に並べられているガラス器具を倒した。
ガシャーーン!
「誰だ!」
赤い竹が叫んだ。
すぐに、†を含む赤い竹が部屋へ駆けつけてきた。
「出てこい!」
†が言う。出ていくしかない。二人は手を上げて、姿を現した。
「テメェらか。三神小五郎にDO-Mを取り返すように頼まれたか?」
「「…………」」
二人は黙って、†を睨む。
「残念だったな。DO-M1はクリーンベンチにあるってのに、テメェらはこの様だ!」
「………オレ達は、DO-Mを奪還する。それに、外は特殊部隊に完全に包囲されている。不利なのはそっちだ!」
ブラボーの自信満々の言葉に、†が少し圧される。
「ふっ。だが、こいつをくらえば、終わりだぜ!」
そう言って、†はDO-Hを二人に見せる。
しかし、二人は強気だ。なぜなら────
「もうDO-Hがもうそれ一つである事はわかっている」
ブラボーの言葉に†は押し黙る。そして、†は片目をギロリとクリーンベンチに向ける。
「DO-M1をテメェらに渡すものか!」
†は叫び、最後のDO-Hをクリーンベンチに投げ込んだ!
「なっ!」
「くっ!」
グリーンとブラボーは絶句した。そして────
爆!
クリーンベンチは、DO-M1とDO-M1大腸菌のサンプル、DO-Hの元となる遺伝子組み換え水分分解菌のシャーレと共に、爆発した!
この時点で、DO-M奪還は失敗した。
そして、その爆発音によって、手筈通りに特殊部隊が突入してきた!
その場は一時大混乱となった。
そして、完全に制圧された!
特殊部隊が、赤い竹を一列に並べる。流石の赤い竹も降参したようだ。グリーンはフゥーと一息つくと、その異変に気がついた。
†がいない!
2004年12月17日21時30分。
†は、逃げた!
後をグリーンとブラボーが追う!
ここで、†を逃がすわけにはいかない。
そして、グリーンとブラボーは†を崖へ追い込むことにした。
「待てぇーー!」
グリーンは銃を持ち、走りながら叫んだ。
2004年12月17日21時45分。
グリーンとブラボーは、崖っぷちに†を追い込んだ。
銃を構える。
ブラボーは正面から、グリーンは崖に沿って立つ。†はVの字になった崖っぷちに追い込こまれた。
†は銃を構えている。
そして────
三人の銃は発砲された!
三つの銃声が崖に響く。
ブラボーの放った銃弾は見事に、†の銃を吹き飛ばした。
そして、グリーンは†の弾を交わし、†を撃った!
†の手から銃が離れ、崖を落ちていく。†は見事に胸を撃たれ、その場に倒れた。
「すごいぞ!グリーン!」
「お前もな」
グリーンは気を緩め、銃を降ろした。
刹那、†が身を起こした。手には、拳銃。まだ隠し持っていたのだ!
弾!
銃声が、崖にこだました。
†は不敵な笑みを浮かべ、倒れ───息絶えた。
グリーンの腕に激痛が走った!
左肩から血が滴る。撃たれた。
「グリー…………!」
ブラボーが叫んだ。
しかし、グリーンには最後まで聞こえはしなかった。
グリーンの足から力が一気に抜ける。
一瞬、体が異常に軽くなる。
まるで、宙に体が浮いているようだ。
いや………違う。
グリーンの体は、落下していた。撃たれた後、バランスを崩して、崖から落ちていた。
「グリーーン!」
ブラボーはもう一度叫んだ。
しかし、グリーンの姿はもう見えない。
…………グリーンが死んだ。
カイロの病院にいる三神と優にもその知らせは届いた。
「ま、まさか………グリーンが!」
「うそでしょ」
三神は信じられなかった。
しかし、それは紛れもない現実だった。
………こうして、最悪の結末によってこのヨーロッパをまたいだ史上最悪の3日間は終わった。
2004年12月24日朝。
「では、ついたら連絡を入れます」
「あぁ、わかった。それから、資料は国立大戸ゴジラ博物館に送ったぞ」
「はい。わかりました」
「私はもう少しヨーロッパで放射能症の治療を手伝うわ」
「オレは赤い竹を完全に壊滅させる」
「大丈夫、オラがついてるダ」
空港では、クルーズと優とブラボーが、三神とムファサの見送りに来ていた。
ゴジラはその後、紅海を南下。途中、近隣の数国に上陸しかけたが、どうやらクルーズやブラボーなどの助言で、上手く紅海を真っ直ぐ移動し、2日前にインド洋に出たという。
そして、現在は衛星で追跡中だという。
退院した三神に、やっと、帰国が許可され、ゴジラのデータ───命がけで取り戻したゴジラの肉片も───を使って、国立大戸放射性生物研究センターでゴジラの正体───つまり、三神悲願のゴジラの生物学的存在の証明を国連規模で三神に任されたのだ。
ムファサはそのサポート役として、共に日本へ久しぶりに行く事となった。
勿論、タトポロス博士等の他の研究者にも頼まれた国際プロジェクトである。
三神は皆に見送られながら、ヨーロッパを去った。
グリーンの死という悲しみと共に…………
????年??月??日??時??分。
ゴジラ団の副々団長は、団長と電話をしていた。
「やりました。あの邪魔な、奴を殺しました」
『出来したぞ。奴は考えが早すぎる。惜しい男だが、まぁ、死んで都合がいい男だ』
「オレも負傷をしてしまいましたが、あのフランス人が厄介で、殺しそびれました」
『構わない。わかった。ご苦労』
電話は切れた。
副々団長は、何とか爆発から逃れ、†とグリーンの死を確認した。多少、事実とは違う所はあったが、ジェームス・グリーンが死んだという事が重要なのだ。
残るは、三神小五郎である。
そして、その死に場所は────日本!
副々団長は薄ら笑いを浮かべた。