赤い竹



「優。赤い竹は一体何をしたんだ?やっぱり、ゴジラ団と関係があった?」
 三神と噴水で合流すると、優に好奇心丸だしで聞いてくる。
 仕方なく、優は赤い竹の仕掛けた爆弾の話をした。
「まさか!…………いいや、有り得ない!しかし、それなら説明がつく………」
 三神は突然大声を上げた後、一人ブツブツ言う。
「何かわかったの」
 優が聞くが、三神は青ざめた顔であいまいに答える。
 明らかに三神の様子はおかしい。
 こんな三神はDO-Mの事故以来だ。
───まさか!
 優は、三神がこんなにまで衝撃を受ける存在の正体はDO-Mを置いて他にはないと思った。
「DO-M………」
「!」
 その言葉に三神の肩は跳ね上がった。当たりだったらしい。
「ミジンコくん!DO-Mなのね?2年前のあの事故と関係があるんじゃないの?」
 優は始めは強い口調であったが、ゆっくりと優しい口調にして三神に聞いた。
 そして三神は、頷いた。
「DO-M………と言うか、DO現象による二年前のあの事故とそっくりなんだ。放射性物質が無いとか、規模の違いはあるけど………」
「どういう風に────」
 似ているの?と聞こうとしたが、優の言葉の途中で三神が話始めた。
「研究が打ち切られている以上、推測なんだけど。DO-Mは水中放射能浄化──DO現象を行う細菌だけど、反応の一つに触媒にする筈の水を分解している可能性があったんだ。まあ、自身が変わるのでは水=触媒は成り立つか微妙だけどね。でも、反応中に確認された気泡は水素だったんだ。つまり、発生した水素と空気中の酸素が火花と反応して爆発した………。これが僕なりに考えた2年前の事故の原因の一つだと思う。そして、今回も………」
 そう言って、うなだれた。
「ただ、DO-Mは…………」
 そうだ。DO-Mは2年前のあの事故で全滅して、研究も打ち切られているのだ。
グオォォォォーーーォン!
 ズンッと地面が揺れる。
 その後、大きな揺れが起きる!そして、雪崩のような轟音。
 舞い上がる土煙、ゴジラは市街地で建物を破壊しながら移動している。
「もうすぐそこまで迫ってきたか………」
 三神は舌打ちをしながら言う。
爆!
爆!爆!爆!
 戦艦や戦闘ヘリの攻撃がゴジラを襲う。
 ゴジラの動きが止まった。
 ゴジラの目線が戦闘ヘリや海へ向く。
グオォォォォーーーォン!
 何度も耳にした地獄から聞こえてくるような声がローマにまた轟いた。
「ゴジラはなんて闘争本能の高い生物なんだ」
 三神はクルーズの乗る車に乗り、決して鎮まる事のない怒りを宿した眼を持つ怪獣を見ながら、声をもらした。
「自らの意志の邪魔をするモノは全てを破壊する………まがつ神」
「そういう風にお高くついた本能のせいでこっちは世界の国々が破壊の危機にさらされている……まぁ、逆を言えばそれを利用してゴジラを海へ誘導しているのだがな」
 三神の言葉にクルーズは鼻で笑いながら言う。
「さらに、逆……もあるけどな」
 三神は意味深なもの言いをした。
 車の後ろにいるゴジラは息を吸い込み───パワーブレスをする。
 吹き飛ばされた戦闘ヘリが破壊されていなかった住宅地へ墜落、そして────爆発。
 車内にも振動が伝わった。
「くっ!」
 クルーズはハンドルを叩いた。
 ゴジラはゆっくりと海へ向かって歩いていく。
グオォォォォーーーォン!


2004年12月16日??時??分。
「………ゴジラ団か。副々団長だったか」
 暗い地下道で人影に†は話しかけた。ゴジラの足音と地響きが絶えず伝わる。
「先程の爆発、拝見しました。実に素晴らしい!」
 オーバーリアクションで†に言う副々団長と呼ばれた男は、†へ気安く歩み寄る。
「…………一体あれは何だ、だろう?どうせ貴様達が知りたい事は」
 †の言葉に薄ら笑いを浮かべながら、流石は赤い竹のヘッドですね、と言う。
 副々団長は煤けた茶髪の白人で痩せた背の高いモヤシの様な男だ。
「ふっ。本来ならば、答えるどころか撃ち殺すところだが………まぁ、コイツは貴様達───ゴジラ団が我々のない情報を持っている可能性が高い。こちらの質問に答えるならば、爆弾について教えてやる」
 †は不敵に笑った。
「私の答えられるかぎりならば答えるます」
 副々団長は薄ら笑いを浮かべながら、†に答えた。
「………生物学者の三神小五郎の事だ」


 ゆっくり、ゆっくりとゴジラは海へ歩みを進める。
「いいぞ!」
 クルーズは車を止めて、遠くにいるゴジラが更に離れていく光景を見ながら、窓にかじりつきながら言う。
 地響きも段々遠くなる。
『ゴジラ、まもなく海へ入ります』
「よし、わかった!」
 クルーズは入ってきた通信に返す。
 クルーズが時計をチェックする。つられて三神も時計を見る。午前九時三十四分、意外と時間は早く過ぎる。
発!
発!発!
 突然の照明弾!
「なんだ!今の照明弾は」
 クルーズは慌てて通信を入れる。
『わかりません!』
 すぐさま返事が来る。
発!
発!
発!
 大音量の爆発音と鮮烈な光。照明弾はこんなにも凄いものなのか、と三神は圧倒される。
「あれは通常の信号弾として使われる物ではないな。かといって殺傷能力は特には無さそうだ。人目を引くのに最も有効な光と音が出るように作られた照明弾だな。日本の花火に近い物かもな」
 三神の心を読んだのかクルーズはその照明弾の見解を言う。
「どこからだ?」
『ローマ市内………コロッセオです。警察と軍隊が駆けつけています』
 通信の答えを聞いた途端、三人は顔を見合わせた。
「ゴジラ団か!」
「ゴジラ団!」
「やっぱり来たか!」
 クルーズ、優、三神は同時に叫んだ。
 三神の言葉に驚く二人を無視して、通信機貸して、と言ってクルーズから通信機を取る。
「おそらくコロッセオ周辺にはゴジラ団、赤い竹が何らかのテロをする可能性が高い!十二分に注意して下さい!」
『了解』
 返事が来る。
「さっきも言った気がするよ、逆もある、って。ゴジラは敵と判断する、又は注意を引く所へ向かう。つまり、ゴジラ団はゴジラを導いている。関連がある赤い竹も当然いるはずだ。大方、ゴジラ団の神の力を使って、赤い竹がローマを破壊しようとする、という事だろ」
 キョトンとしている二人に三神は説明する。
『ゴジラ団です!コロッセオを取り囲んで交戦をしています』
「赤い竹は?」
 クルーズが聞く。
『わかりません!』
 返事にクルーズは舌打ちをして、気をつけろ!と言った。
「しかし、と言うことはだ。ゴジラ団や赤い竹の作戦が成功した場合、ヤツらの手にかかればゴジラを誘導する事が出来ると言うことになる。そいつは危険だ!」
「そう。それは今後彼らが何らかの脅迫をする時にかなりの説得力と脅威を与える事になる」
「それって、大変じゃない!」
 クルーズの言葉に三神が同意し、優が驚いた。


ゴジラはローマに戻って来た。
「彼は戻ってくる………か」
三神はゴジラを追う車の中で言った。
『バチカン市国も避難完了しました。教皇も避難なされました』
「了解した」
通信に運転をしながらクルーズが答える。
 前方に花火の様な照明弾が見える。そして、その下にあるコロッセオも見えてきた。


2004年12月16日??時??分。
「………生物学者の三神小五郎の事だ」
 †の声が地下道に響く。
 副々団長はニヤリと笑った。
「やはり、あの爆弾はDO-Mですな」
「質問に答えたら話してやる」
 そんな副々団長に†は冷静に言い返す。副々団長は軽く肩をすくめ、頷いた。
「知っている全ての事をお教え致しましょう」
 副々団長は再び薄ら笑いを浮かべた。
「まずは、日本の国立大戸ゴジラ博物館に行った経由を…………調査済みなのだろう?」
「そうですね。それなりに経歴ははっきりしている人物だ。特に、環境有用微生物学を研究し、DO-Mを発表したという約2年半前の記録は」
「話してくれ」
「この頃は、現在三神小五郎と行動を共にしている医師の鬼瓦優にも関連し、病原菌や放射能などの外科治療とは少し外れた医学の勉強をしていた様で、三神小五郎とも恋愛関係にあったようです。そして、DO-Mを研究し、ネイチャーに発表されました。その半年後───2年前に三神小五郎はDO-Mの研究から追放されました。DO-Mの実験中に起きた原因不明の事故によって」
 副々団長は言葉を切り、一呼吸置いて、話を再開した。
「一般的には、原因不明となった事故で、ね」
 副々団長は†に薄ら笑いをしながら言った。
「ふっ。そこまで知っていたか」
「えぇ、知っています。………我々を試しましたね?やはり、あれはDO-Mですね?」
「あぁ、そうだ。DO-M1と呼ばれていた生物のDNAサンプルを使って作った生化学兵器だ。DO現象を利用し、爆発力を上げた水素爆発を起こす爆弾だ。モノは簡単だ。DO現象の内、放射能浄化を除いた現象を起こすようになっている細菌を利用すればいい。三神小五郎らはコイツが発生する事に悩まされていた。つまり、こちらにとっては好都合というわけだ。能力を失うようにするには、放って置けばいいんだからな。おかげで放射能浄化細菌ではなく、水素爆発誘発細菌となったDO-Mを使って、多量の水分を分解させて、爆発に最高の空気に成った瞬間、火花を起こし、水素爆発を起こす。完璧なシステムだ」
「その爆弾の名前は?」
「日本人はいちいち名前をつけたがる………そんな人間の下に就いているせいで日本人の癖が移ったんじゃねぇか?副々団長さんよ。…………まぁいい。一応こっちもプロだ。名前くらいはある。『DO-H』だ。捻りも何もなくてつまらないか?」
「いいえ。気に入りました」
「そいつは良かった。ゴジラ団がどこまで真実を知っているかもわかった。これなら問題はない。ギブアンドテイクで行こうじゃねぇか、ゴジラ団!」
 その後、赤い竹とゴジラ団の笑い声が不気味に地下道に響いた。


2004年12月16日9時40分。
 グリーンとブラボーは、飛行機の移動時間を使って、ローマでテロを起こしている赤い竹の事を調べていた。
「………これは、本当なのか」
 グリーンは恐る恐るブラボーに聞き返した。
「あぁ、間違いなさそうだ。これなら、クルーズ氏が報告してくれた、ローマでの爆発について三神が言っていた事も説明がつく」
「………それじゃあ、三神の人生を狂わせたのは、赤い竹!」
 ブラボーが頷く。
「赤い竹は当時ネイチャーに発表された三神らのDO-Mの論文に目をつけた。事故が物語っている様に、DO-Mは使い方次第では恐ろしい兵器になる。バイオテロを行う赤い竹が見逃す筈がないと言われれば当然だ。赤い竹の動向は監視していたつもりだったが、隙を突かれたらしい」
「赤い竹はDO-Mのサンプルを盗み、証拠隠滅の為に細工をして、あの事故を起こさせたのか!」
「そのようだな。………もっとも、赤い竹もあそこまで酷い事故になるとは思ってはいなかっただろうがな」
「三神はそのせいで、追放された。こんな事態にならなければ、三神は一生、生物学の異端とされるゴジラの研究をし続けて、一人で死んでいくかも知れなかったのか………」
「そうだろうな」
「鬼瓦先生もゴジラ学者として復活した三神に再会したから、今はローマで共に行動しているが、もしゴジラが現れなければ、ミニドア島で話をした時のように、愛想が尽きたまま、三神には会おうとは思わなかっただろうな」
「そこは、彼らの事だ。オレ達がとやかく言うべきではないし、真意は本人にしかわからない」
 ブラボーの言葉に、そうだな、と言ってグリーンは座席に沈んだ。
「そして、赤い竹はDO-Mを───正確にはDO-M1のサンプルか───を使って遺伝子を組み換えた細菌で、この情報にある『DO-H』という爆弾を作った訳か」
 グリーンは、ブラボーの仲間であるフランスのスパイが調べた情報を見ながら言った。
 ブラボーは、そうだ、と答える。
「問題は、三神にこの事を話か、だな。どうするか」
「オレは本人に直接会って、その上で正確に話すのがベストだと思う」
「それしかないかな」
 飛行機がローマに着くには、まだ時間がかかる。


 ローマは、ゴジラによって見るも無惨に破壊された。
 コロッセオは、ゴジラに真っ先に破壊された。かつて、ゴジラが国会議事堂を破壊した時のように、潰されるようにコロッセオは崩された。
 古都ローマは、ゴジラによって、次々にその美しい姿を失っていく。
 以前、テレビでアメリカで起きた竜巻を報じていた。竜巻は、その軌跡として、ありとあらゆる物を吹き飛ばし、破壊していた。
 今、目の前で破壊されていくローマの光景は、竜巻の様にゴジラの歩いた軌跡として、世界的な歴史建造物を破壊して行く。
 本当にこんな怪獣を倒す事など可能なのか?出来るのは、まさにオキシジェン・デストロイヤーの様な脅威でなければ、無理ではないか?三神はそう考えずにはいられなかった。
 ニューヨークでは感じなかった絶望感がこのローマでは感じられる。
「くそっ!大聖堂まで破壊する気か!」
 クルーズが地団太する。
 ゴジラは、間もなくバチカン市国に来る。
 三神は意を決して、通信機に手を伸ばした。
「最後の手段です!破壊された所を選んで、全ての戦力を使って、ニューヨーク同様、ゴジラを誘導してください。当然、この場合、イタリア軍が危惧していたように、周りの建造物が破損される危険があります。しかし、この場合ゴジラは間違いなく、バチカンの大聖堂そして、全ての文化的、歴史的に人類の宝である建造物や美術品が破壊されます!どうか、決断を!」
『………わかった』
 通信機を置いて、クルーズに三神は言う。
「これで、ゴジラは再び海へ向かいます。ゴジラ団と赤い竹は必ず、もう一度アクションを起こします。その時、彼らを一網打尽に出来るかで、ローマの運命は決まります」
「わかっている。今、三神君が話している間に手配した。今度こそ、ヤツらに引導を渡してやるよ」
 クルーズは三神と優に微笑んだ。


2004年12月16日11時45分。
「やっと着いた!」
 グリーンはローマに着いた。
「…………で、ゴジラはどこだ?」
 ブラボーがさめた口調で聞く。
「…………」
 無言になるグリーン。
「ゴジラはいない。ローマはコロッセオを中心にほとんどの建造物が原型を留めていない状態にまで破壊されている。聞くところによると、ゴジラ団と赤い竹はクルーズ達によって、追い込まれたが、双方とも数人の下っ端が捕まるだけで、残りの構成員は逃げられたそうだ。三神はゴジラを追って、海だそうだ。クルーズはゴジラ団と赤い竹を追いかけているらしい。そして、鬼瓦は────」
「ココ」
 突然、優がグリーンとブラボーの目の前にやってきた。
「────だそうだ」
 優は少し血と土汚れの着いた白衣を羽織っていた。
「何をしている?」
 グリーンの言葉に、本職よ本職、と襟に付いている名札を見せる。
『国際連合承認ゴジラ災害派遣医師・日本・優 鬼瓦』と書かれていた。
「こんなものが作られてね。私も一応国際的な派遣医師をやってた身だから、専門のスタッフに入れてもらったわけ。なんせ、今ココは世界一緊急で特別な医療技術を学んだ医師が必要な場所だからね。…………ただ、一般の人達は避難していたから、負傷者はみんな軍関係の人達で、ほとんどが放射能火炎の放射線にやられちゃって………手の施しようのない状態なのよ」
 優は下唇を噛み締め、やるせない苦悩の表情で言った。
「…………聞いた話だと三神の言った作戦はうまくいったらしいが」
 グリーンが話題を変える。
「………あぁ、そうよ。ゴジラは海へ誘導されて、それでゴジラ団と赤い竹は動きを見せて、また花火みたいな照明弾を打ち上げようとしている所を警察隊と軍が踏み込んで、本当に一網打尽って事になりそうだった。けれど、赤い竹の†が何とかっていうよくテロに使われる細菌兵器を使って、隙を突いて逃げたそうよ。ただ、その細菌兵器はその地帯に留まるように作られていたそうで、ローマ中にばらまかれるって事にはならなかったらしいわ。この辺りはミジンコくんの方が詳しいわね。それで、数人の部下が捕まって、今クルーズさんが捜索中よ」
 一通り話すと優は、ふぅ、と一息ついた。
「………で、鬼瓦はココで治療を手伝っている。そして、クルーズはゴジラ団と赤い竹を追ってどこかへ行った。三神は海でゴジラの追跡という事か」
 頷く優。クルーズはブラボーの方を向いて、例の話をするか?とブラボーに聞いた。ブラボーも、どうせ話すんだ早く話してしまった方がいい、と答える。
 グリーンは優の方を向くと、意を決して、飛行機の中で判明した2年前の事故の真実を話した。
「…………という事なんだ」
「それは、間違いないの?」
 聞き返す優に、間違いない、とブラボーが答える。
「じゃあ、私達の人生は、赤い竹にメチャクチャにされたの」
 優は、膝を崩した。呆然としながら、地面にしゃがみ込んだ。
「ミジンコくん────三神にはその事は?」
「まだだ」
 グリーンが言うと、そぅ、とだけ言って、溜息をついた。
「三神にはこの話は話さない方がいいかな」
「私にはわからないわ」
 グリーンが聞くと、優はか細い声で言った。
 優もかなりのショックであったようだ。三神はこれでどれだけのショックになるか。グリーンはそこが心配であった。


 その頃三神は、イタリア軍の高速船にいた。
 ゴジラはティレニア海のシチリア島近海を移動していた。
「移動速度をさらに速くしました」
「ゴジラはもう上陸する気はなくなったみたいですね」
 報告してきた船員に三神は言った。
 真っ直ぐ行けば、チュニジア共和国だが、この調子ならマルタ共和国の方へ移動するかもしれない。


2004年12月16日13時21分。
 クルーズはゴジラ団と赤い竹を捜索していた。
 最悪だ。クルーズは思った。
 ゴジラ団と赤い竹はギリシャ共和国へ逃亡した恐れが高い。
 ギリシャも捜索をしているが、ゴジラ団と赤い竹である。簡単には見つからないだろう。


 ゴジラはチュニジアへ向かわず、マルタとイタリアの国境付近を移動し、リビアの国境へ入っている。
 その為、三神は追跡を断念し、イタリアへ戻り、クルーズとグリーン達が向かっているギリシャを中継して、リビアやエジプトへ行くことにした。


2004年12月16日17時。
 ギリシャ首都・アテネの空港では、クルーズ、グリーン、ブラボー、優の四人が三神の到着を待っていた。
 入国ゲートから手を降る三神が現れた。
 実に13日振りの集合である。
 互いの得た情報を交換する。優は被害状況を。三神はゴジラの進路についてを。クルーズはゴジラ団と赤い竹の事を。グリーンとブラボーは三神に2年前の事故の真実を話した。
 三神はショックを隠しきれずにいたが、それを事実として受け止めた。
 まだ時間はある。
 やることは沢山あった。


2004年10月27日22時頃。ニューヨーク。
 三つの高層ビルが崩れている。
 ゲーン一家とゴジラの戦いによって崩したビルだ。
 数人の防護服を着た科学者が、計器を持ちながら歩いていた。
 科学者が建物の影に来たときに、後ろから何者かが襲いかかった。
 その者は科学者の防護服を着た。これで、外見は科学者だ。
 その者とは、ゴジラ団員であった。
 ゴジラ団員は瓦礫に付着していた肉片を採集した。
 それは、ギケーが撃ち、吹き飛ばしたゴジラの左目の周りの肉片だ。
「よし。行くぞ」
 ゴジラ団員の一人は言った。
「誰だ!」
 どこからか叫び声が聞こえた。ゴジラ団員は慌てて逃げた。
 その瞬間、ゴジラ研究をする上で、世界で唯一のサンプルがゴジラ団に奪われた。
 そして、その事実に誰も気づかなかった。
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