地球最終防衛戦線 アルマゲドン
>脅威
ゴジラ消滅から20年が経った、2099年。
地球人類は長期に渡る戦争も紛争もなく、確実に戦乱の歴史から協議による平和、和平の歴史へと推移していた。
しかし、文化・生活レベルが便利に、かつハイテクに発展を続けるものの、その飛躍的向上は産業革命のそれに達する事はなれず、人類は尚も地球上で地面の上を歩いていた。
ただし、先にも述べた社会構造の発展こそ、21世紀における最たる革新である。経済や文化、法における国家の意義は尚も健在であるが、国力の重要な存在であった軍が地球規模で統合されたのである。その背景こそ、1954年に現れ、2004年以降再び姿を現れたゴジラを始めとする"怪獣"の存在である。怪獣は、ゴジラ再来以降、世界各地で出現を続け、国連を中心に軍の考え方が変わり、ゴジラ出現から100年後に当たる2054年に地球上の軍は統合され、"地球防衛軍"を組織し、怪獣と戦い続けた。
世紀末になった今日、21世紀を人は"怪獣との戦いの世紀"と称している。
そして、今。最後の怪獣ゴジラを倒した地球防衛軍は、宇宙開発と地球上に新たな怪獣脅威を生まない様に、日々活動を続けている。
「昨年度の地球環境調査の最終報告書です」
地球防衛軍本部の総指揮官席に座る、ゴルドンに分厚いファイルを渡す。
「……相変わらず日本人は文化的な民族だな」
辞書と見間違えそうなファイルを眺めてゴルドンは苦笑しながら言った。
「その方が、部下達の苦労が伝わるかと思いまして」
「……確かに。それで、昨年も怪獣の存在は確認されなかったのだな?」
「はい。遂に、ゴジラ消滅以来20年間怪獣出現件数0を達成致しました。……ただし、今年度に当たる先週、一件のみ警戒注意レベルの存在が確認されました」
「なに? ……報告を初めて聞いたぞ」
「正確には確認をしていない為、調査員が向かっている現状なのです」
「……どうも話が飲み込めないぞ、杉山司令官」
ゴルドンに杉山は頷いた。20年の歳月で、その顔には歳相応の皺が刻まれている元轟天号艦長は、片手に持っていたバスケットを開いた。
「彼女達が、報告者なのです」
「貴女方は……!」
『ゴルドンさん、お久しぶりです』
バスケットから現れた小美人は、優雅にお辞儀をし、彼の机の上に立つ。
「私が地球防衛軍総指揮官に就任した際にご挨拶へ伺って以来ですから、8年振りですね。お二方も、ご健勝で何よりです」
『ありがとうございます』
「それで、怪獣というのは?」
ゴルドンは話を聞こうと腰を直す。
『私達の住むインファント島の奥地にある湖が突如枯れ、巨大な蛹が現れたのです』
インファント島は、インドネシアの外れにあるかつてモスラが住んでいた南海の孤島である。
「モスラという事ですかな?」
『それが、モスラではないと思うのです。モスラの繭とは違い、黒く、そして巨大なのです』
「つまり、モスラよりも巨大な何かの蛹という事ですか?」
ゴルドンに小美人は頷く。
『私達の祖先から伝わるものですが、天空よき来たる脅威が迫る時、黒き聖獣はその姿を現す』
「つまり、その蛹が黒き聖獣だと?」
『はい。そして、この事実を伝えようと杉山さんを訪ねる途中、地球に迫る脅威を感じたのです』
「宇宙怪獣ですか?」
ゴルドンに小美人は首を横に振る。
「巨大隕石です」
ゴルドンは杉山を見る。
「我々の技術では、まだ隕石を確認する事はできません」
それを聞いてゴルドンは安堵する。
『しかし、その巨大隕石はとても速いのです。今はまだ遠く離れていますが、僅か数週間で地球に衝突します。』
驚きのあまり、ゴルドンは目を見開いた。
「彼女達の話が事実ならば、今日明日にも確認されるでしょう」
杉山は告げた。
「……各所に連絡をしてくれ。確認が取れ次第、対策会議を開く。緊急召集の準備を進めておく様に、と」
「了解」
「お二方には申し訳ありませんが、会議でも説明をお願い致します」
『わかりました』
ゴルドンはゆっくりと目を閉じ、思考を整理させる。そして、静かに立ち上がり、窓の前に立った。
「この地球、何としても守らねば……」