ゴジラ対キングギドラ

【再戦】


 ついに、江戸川上空を越え、東京都内に進撃したキングギドラは、縦横無尽に建物を破壊していく。ゴジラが破れた今、人類にはなすすべもない。

『Prime minister, It’s time of the decision now!
(総理、今が決断の時です!)』

「President, I can’t receive this suggestion as a Japanese Prime Minister.
(大統領、私は日本の総理としてその提案を受け入れるわけにはいきません。)」

 首相官邸地下に設置されたシェルター会議室では、総理がアメリカ大統領と電話をしていた。

『I get it. But, I don't know it even if you regret. …Good luck!
(わかりました。しかし、後悔してもしりませんよ。……グッドラック!)』

 総理は電話を切ると、深く息を吐いた。

「総理、見事なご決断でした」
「例え、世界中で未来永劫、私のこの決断を罵倒されようと、後悔はしません。それに、国民ならば理解していただけると信じています」

 そこにいた大臣達は、その総理の決断、言葉に惜しみない拍手を送った。
 しかし、この瞬間、日本は最後の切り札を失った。戦術核の使用を断った日本の首都東京は、キングギドラの猛攻に刻一刻と破壊されていた。



 

「あなたは何を考えているんだ!」
「それを言うなら、上に言ってください。これは決定事項です」

 椿教授は隊長に尚も食い下がっていた。
 自衛隊は、完全体になった分離体への攻撃を決定したのだ。部隊は攻撃の準備を始めている。

「準備完了しました!」
「よし、攻撃開始!」

 非情にも命令は下され、分離体への攻撃が開始された。
 富士山麓から山梨県内に広がる森林の上をミサイルが次々に通過し、木々を騒がす。
 そして、爆音が山々に木霊する。

「そんな………」
「これが完全体と言う事か」

 ミサイルは分離体手前でバリアに弾かれ、爆発した。完全体となった分離体はキングギドラ同様、バリアを有していた。

「今のは、中に人がいる可能性も考慮して、破壊力を抑えた演習用のものを使用した。……いたしかたがない。有事用のミサイルを準備しろ」

 隊長の言葉が事実なのか、椿教授への強がりなのかはわからないが、部下に指示を出した。



 

 一方、キングギドラは東京都港区にまで破壊の手を及ばしていた。
 キングギドラが東京タワーを破壊しようとした時、東京湾から渦巻く青白い熱線が放たれ、キングギドラに直撃した。
 バリアごとキングギドラを撃ち落とされ、その身が東京タワーを押しつぶす。
 熱線が発せられた東京湾から、咆哮と共にゴジラが上陸してきた。

「ゴジラが上陸したそうです」
「そうか。どうやら、まだ勝機はあるようだな」

 部下に伝えられた鉄也は、静かに笑った。彼らは装甲車に乗って移動中であった。理由はゴジラとキングギドラの迎撃に失敗した責任を取らされ、部隊長から降ろされ、戦線から撤退をしていたからだ。

「最早、自衛隊にあの二体を攻撃するだけの力はおよそ存在しない。今あるのは、同士討ちという奇跡を願うだけだ」

 鉄也の希望を知ってか知らぬか、二体は激しい戦いを繰り広げていた。
 ゴジラは、骨折した左腕に力を込めると、鈍い音をさせながら腕を伸ばす。自力で骨折を再生させたゴジラは、地面に倒れたキングギドラの尾を掴み、芝公園に投げ倒す。
 対するキングギドラは、再び翼から紫色の反重力光線を発する。
 しかし、ゴジラは間髪入れずに渦巻く熱線を放つ。同士討ちとなり、互いの攻撃の手が止まる。
 ゴジラが再び背びれを発光させる前に、キングギドラは宙へと舞い上がり、引力光線を収束させて一筋の光線にして、ゴジラを攻撃する。
 熱線が間に合わず、ゴジラは地面に突き落される。
 東京の街を破壊しながら、戦いはより一層激しくなっていた。
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