世界転送冒険奇譚
【序章】
2054年。
近未来的社会と言われた日本に20世紀が残した核の申し子、ゴジラはいく度にも現れた。
被害を深刻に考えた天才科学者沢本勢人は、世紀の大発明空間転送装置「エリアファクシミリー」を使用する決意をした。
そして、今まさにその世紀の大発明が世紀の大怪獣を別の世界へ飛ばす瞬間であった。
ゴジラは装置の上に立った。
「沢本博士!」
「よし!転送!」
ピーガガガーガーピーー………。
ゴジラはその姿を一瞬のうちに消した。
ゴジラは転送された。
やがて人々は歓喜した。
しかし、これが物語の序章となるとは今のこの世界の人間には知る由もなかった。
【最後の世界】
その日、イカロスは遂に翼を使わずに空を飛ぶ事に成功した。
高い!
イカロスの背には翼がある。天使の持つそれと同じだ。
しかし、彼は自らの翼を使わずに空を羽ばたきたかった。魔力でも、術でもなく、風を利用した自然の力を使って、空を飛びたかったのだ。
「飛んだ!飛んだぞー!」
彼の行動は現実不可能として人々の嘲笑をかっていた。しかし、今日は違う。
町の上空を、飛ぶイカロスを人々は驚き、歓声を上げた。
その後イカロスは、町の上空、周りにある森の上空を鳥達と共に飛んだ。
その時であった、彼らの世界の運命を大きく変えた瞬間は。
ピーガガガーガーピーー………。
突如森の中に、今まで見た事もない巨大な大きさのモンスターが現れたのだ。
黒く岩の様な肌、山の様な背びれ、ドラゴンに似ているが、その纏うオーラはまるで違う。
「な、なんだ?」
イカロスが驚いていると、モンスターは彼に気がつき、口を開いた。
背びれが光った時、彼はとっさに飛行装置から飛び降りた。
モンスターは炎を、光線をも凌ぐ強大な光りの束を吐き、飛行装置を一瞬にして消滅した。
「な、なんだ? なんなんだ一体!」
翼で飛びながらイカロスはただただ驚くだけであった。
モンスターは町に向かって歩きだした。
イカロスはそれに気がつき、町に向かっていた。
「大変だ!見た事もない巨大なモンスターが町に向かっている!」
イカロスの声は町中に轟いた。
他の飛べる者がまたモンスターを見て、パニックを起こしながら町中にその危機を伝える。
その騒ぎは、旅宿にも伝わった。
「………何かあったのか?」
「あぁ、旅のお方、宿代はいい、早くあんたも逃げなさい!今まで見た事もない巨大なモンスターが現れたそうだ」
そう言うなり、宿屋の主人は荷物をまとめ逃げていった。
「………やっと来たか、ゴジラ」
旅人はニヤリと笑い、荷物を持つと、人々とは逆の方向へ歩いて行った。
ゴジラは既に町を破壊し始めていた。
「俺達の町を壊すな、モンスター!」
町に住む戦士がゴジラに果敢に戦いを挑む。
ある者は巨大な炎球を出して、ある者は光る刀を使い、ある者は自在に操る事のできる武器を駆使し、ある者は木程はあろう龍に姿を変えてゴジラを攻撃する。
しかし、ゴジラは全身を光らせ、周りの者を焼き払う。
その光景をイカロスはただ傍観する事しか出来ない。
「キミ、逃げた方がいい」
突然声をかけたのは、先の宿屋の旅人であった。勿論、その事を知らないイカロスは旅人に言い返す。
「それはお互い様だろ?」
「残念だが、今の俺にゴジラの持つ放射線は通用しない。………キミは翼を持つな。名前は?」
「イカロスだけど、あなたはあのモンスターを知ってるのか?」
「ゴジラは俺の、俺達の世界の因縁の敵でね。そろそろ終わりにしたいと思うんだ。手伝ってくれ」
「あれの倒し方がわかるのか?」
「倒す? ………無理だな。帰すのさ、故郷に」
「な、なんだかよくわからないけど、これ以上あのモンスターに町を壊されないなら協力する。えぇーと…………」
「セリだ。沢本セリ」
「わかった、セリ。何をすればいい?」
ゴジラは町の戦士を全滅させ、破壊を続けていた。
イカロスはセリを掴み、ゴジラの周りを飛んでいた。
「これでは殺されますよ!」
「大丈夫だ! もうこの時点で俺達の勝利は決定した。………今度こそ、帰す!」
そう言うなり、セリはゴジラの周りに荷物から取り出した機械を落した。
………機械が光る。
「準備完了。イカロス! 助かったよ。………ゴジラ、これが最後の世界だ。転送!」
ピーガガガーガーピーー………。
ゴジラは一瞬にして消えた。
「探査………よし! 遂に日本海溝に転送成功だ! ありがとう!」
意味もわからず、セリの感謝を言われたイカロスは混乱しながら聞いた。
「あれは一体………それにあなたは?」
それから話したセリの話はイカロスの想像を超えるものであった。
セリはゴジラが元いた世界の人間であり、ゴジラが初めて転送された時から300年後の世界で、ゴジラを転送した人間の子孫に当たるそうだ。
ゴジラ転送後200年以上にわたって平和な時間が流れたが、数年前からゴジラを空間から消した影響が現れ、早くゴジラを帰さなければセリの世界は終焉を迎えてしまう危機にひんしたそうだ。
そして、セリは自らを放射線にも耐えられる様に改造し、先の転送装置を駆使し、幾多の世界をゴジラと共に渡り戦い続けたそうだ。
「これで故郷に帰れる。………ありがとう」
セリはイカロス達、町の人々に話を終えると、機械を作動させた。
「さようなら」
ピーガガガーガーピーー………。
こうしてイカロスの世界に起きた奇異な事件は、そして沢本セリの長い旅は終わった。
しかし、これまでにゴジラとセリの訪れた世界で様々な事件が起きていた事は言うまでもない。
旅は終わったが、物語は始まったばかりである。
【第一章】
2454年。
環境問題は、誰もが予想していない所で世界の終焉を告げていた。
「つ、つまり、300年も前に別の世界へ転送したゴジラが地球滅亡の原因だと?」
世界中から集まった、宇宙コロニーの巨大会議場で議長は、科学者集団に聞き返した。
科学者の代表は首を振った。
「地球ではありません。議長、この世界そのものが終焉を迎えるのです。コロニーも、火星も、月も、全てが滅亡するのです」
「そ、そんな………」
会場中が、ざわめいた。
「回避する方法は一つだけあります」
科学者の言葉が会場のざわめきを静まらせる。
「誰かがゴジラをこの世界、地球に帰せば、終焉は回避できます」
「………しかし、誰がそんな危険な旅に?」
議長の問いに科学者の中の一人がニヤリと笑い、言い放った。
「俺が行きます! 既に、想定されるあらゆる平行世界の環境、ゴジラの攻撃に適応、抵抗できる様に遺伝子レベルで改造をしています。世界の終焉の前にゴジラをこの世界へ戻してみせます」
「託していいのかね? 世界の運命を」
彼は議長の問いにうなずいた。
「よし、キミに世界の運命を託す。キミの名は?」
「セリ、沢本セリだ!」
【END】
2054年。
近未来的社会と言われた日本に20世紀が残した核の申し子、ゴジラはいく度にも現れた。
被害を深刻に考えた天才科学者沢本勢人は、世紀の大発明空間転送装置「エリアファクシミリー」を使用する決意をした。
そして、今まさにその世紀の大発明が世紀の大怪獣を別の世界へ飛ばす瞬間であった。
ゴジラは装置の上に立った。
「沢本博士!」
「よし!転送!」
ピーガガガーガーピーー………。
ゴジラはその姿を一瞬のうちに消した。
ゴジラは転送された。
やがて人々は歓喜した。
しかし、これが物語の序章となるとは今のこの世界の人間には知る由もなかった。
【最後の世界】
その日、イカロスは遂に翼を使わずに空を飛ぶ事に成功した。
高い!
イカロスの背には翼がある。天使の持つそれと同じだ。
しかし、彼は自らの翼を使わずに空を羽ばたきたかった。魔力でも、術でもなく、風を利用した自然の力を使って、空を飛びたかったのだ。
「飛んだ!飛んだぞー!」
彼の行動は現実不可能として人々の嘲笑をかっていた。しかし、今日は違う。
町の上空を、飛ぶイカロスを人々は驚き、歓声を上げた。
その後イカロスは、町の上空、周りにある森の上空を鳥達と共に飛んだ。
その時であった、彼らの世界の運命を大きく変えた瞬間は。
ピーガガガーガーピーー………。
突如森の中に、今まで見た事もない巨大な大きさのモンスターが現れたのだ。
黒く岩の様な肌、山の様な背びれ、ドラゴンに似ているが、その纏うオーラはまるで違う。
「な、なんだ?」
イカロスが驚いていると、モンスターは彼に気がつき、口を開いた。
背びれが光った時、彼はとっさに飛行装置から飛び降りた。
モンスターは炎を、光線をも凌ぐ強大な光りの束を吐き、飛行装置を一瞬にして消滅した。
「な、なんだ? なんなんだ一体!」
翼で飛びながらイカロスはただただ驚くだけであった。
モンスターは町に向かって歩きだした。
イカロスはそれに気がつき、町に向かっていた。
「大変だ!見た事もない巨大なモンスターが町に向かっている!」
イカロスの声は町中に轟いた。
他の飛べる者がまたモンスターを見て、パニックを起こしながら町中にその危機を伝える。
その騒ぎは、旅宿にも伝わった。
「………何かあったのか?」
「あぁ、旅のお方、宿代はいい、早くあんたも逃げなさい!今まで見た事もない巨大なモンスターが現れたそうだ」
そう言うなり、宿屋の主人は荷物をまとめ逃げていった。
「………やっと来たか、ゴジラ」
旅人はニヤリと笑い、荷物を持つと、人々とは逆の方向へ歩いて行った。
ゴジラは既に町を破壊し始めていた。
「俺達の町を壊すな、モンスター!」
町に住む戦士がゴジラに果敢に戦いを挑む。
ある者は巨大な炎球を出して、ある者は光る刀を使い、ある者は自在に操る事のできる武器を駆使し、ある者は木程はあろう龍に姿を変えてゴジラを攻撃する。
しかし、ゴジラは全身を光らせ、周りの者を焼き払う。
その光景をイカロスはただ傍観する事しか出来ない。
「キミ、逃げた方がいい」
突然声をかけたのは、先の宿屋の旅人であった。勿論、その事を知らないイカロスは旅人に言い返す。
「それはお互い様だろ?」
「残念だが、今の俺にゴジラの持つ放射線は通用しない。………キミは翼を持つな。名前は?」
「イカロスだけど、あなたはあのモンスターを知ってるのか?」
「ゴジラは俺の、俺達の世界の因縁の敵でね。そろそろ終わりにしたいと思うんだ。手伝ってくれ」
「あれの倒し方がわかるのか?」
「倒す? ………無理だな。帰すのさ、故郷に」
「な、なんだかよくわからないけど、これ以上あのモンスターに町を壊されないなら協力する。えぇーと…………」
「セリだ。沢本セリ」
「わかった、セリ。何をすればいい?」
ゴジラは町の戦士を全滅させ、破壊を続けていた。
イカロスはセリを掴み、ゴジラの周りを飛んでいた。
「これでは殺されますよ!」
「大丈夫だ! もうこの時点で俺達の勝利は決定した。………今度こそ、帰す!」
そう言うなり、セリはゴジラの周りに荷物から取り出した機械を落した。
………機械が光る。
「準備完了。イカロス! 助かったよ。………ゴジラ、これが最後の世界だ。転送!」
ピーガガガーガーピーー………。
ゴジラは一瞬にして消えた。
「探査………よし! 遂に日本海溝に転送成功だ! ありがとう!」
意味もわからず、セリの感謝を言われたイカロスは混乱しながら聞いた。
「あれは一体………それにあなたは?」
それから話したセリの話はイカロスの想像を超えるものであった。
セリはゴジラが元いた世界の人間であり、ゴジラが初めて転送された時から300年後の世界で、ゴジラを転送した人間の子孫に当たるそうだ。
ゴジラ転送後200年以上にわたって平和な時間が流れたが、数年前からゴジラを空間から消した影響が現れ、早くゴジラを帰さなければセリの世界は終焉を迎えてしまう危機にひんしたそうだ。
そして、セリは自らを放射線にも耐えられる様に改造し、先の転送装置を駆使し、幾多の世界をゴジラと共に渡り戦い続けたそうだ。
「これで故郷に帰れる。………ありがとう」
セリはイカロス達、町の人々に話を終えると、機械を作動させた。
「さようなら」
ピーガガガーガーピーー………。
こうしてイカロスの世界に起きた奇異な事件は、そして沢本セリの長い旅は終わった。
しかし、これまでにゴジラとセリの訪れた世界で様々な事件が起きていた事は言うまでもない。
旅は終わったが、物語は始まったばかりである。
【第一章】
2454年。
環境問題は、誰もが予想していない所で世界の終焉を告げていた。
「つ、つまり、300年も前に別の世界へ転送したゴジラが地球滅亡の原因だと?」
世界中から集まった、宇宙コロニーの巨大会議場で議長は、科学者集団に聞き返した。
科学者の代表は首を振った。
「地球ではありません。議長、この世界そのものが終焉を迎えるのです。コロニーも、火星も、月も、全てが滅亡するのです」
「そ、そんな………」
会場中が、ざわめいた。
「回避する方法は一つだけあります」
科学者の言葉が会場のざわめきを静まらせる。
「誰かがゴジラをこの世界、地球に帰せば、終焉は回避できます」
「………しかし、誰がそんな危険な旅に?」
議長の問いに科学者の中の一人がニヤリと笑い、言い放った。
「俺が行きます! 既に、想定されるあらゆる平行世界の環境、ゴジラの攻撃に適応、抵抗できる様に遺伝子レベルで改造をしています。世界の終焉の前にゴジラをこの世界へ戻してみせます」
「託していいのかね? 世界の運命を」
彼は議長の問いにうなずいた。
「よし、キミに世界の運命を託す。キミの名は?」
「セリ、沢本セリだ!」
【END】
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