『名探偵』第二の男
3年前に話は遡る。
「ヘレン、もう教わる予定はないぞ? それとも、後3時間後に来るオレの誕生日を早くも祝ってくれるのか?」
トゥルースの部屋に入ってきたヘレンに彼は冗談めかした態度で言った。
両親の死から7年、ギケーに引き取られたトゥルースは、ギケーの屋敷に幽閉状態に置かれられていた。学校には送り迎えとガードが付き、それ意外は敷地の中での生活で、彼は常に監視され続けている。
義姉のミヅキは、病院に搬送されて一命をとりとめた。しかし、その後はテリー財団の管理する児童養護施設に預けられ、トゥルースは殆ど彼女に会うことが許されていない。7年間、トゥルースは義姉を人質に取られ続けているのだ。
彼の部屋に入ってきたヘレンは、彼の家庭教師を務める初老の女性だ。彼女はギケーの秘書でもある。その能力は多岐に渡り、家庭教師として教える分野も、教養以上の勉強に留まらず、実用的な武術にも及んでいた。その結果、現在のトゥルースは高校修了の学力と兵隊並の戦闘力を持つようになり、特に射撃に関してはその道のプロに匹敵するレベルに達していた。
それはまさにテリー財団、ゲーン一家の総帥となる為の帝王学であった。
「トゥルースさん、あなたに教えなければならない事が一つだけあるわ。あの日、あなたの家族を殺したのは、ギケー様よ!」
突然ヘレンは言った。あまりに突然の告白にトゥルースは呆然とし、やっとの思いで言葉を呟いた。
「な、なぜ突然?」
「驚くのも当然ね。あなたがここに来た時………いや、あの事件を知った時から、私は今日、こうしてあなたにこの事を話す事を決めていた。………不思議と思わなかった? 成長期をあのギケー様によって育てられたにも関わらず、人間兵器に洗脳もされずにここまでギケー様の驚異になりうる教育をされてきた事に」
「ま、まさか! ヘレンが?」
「えぇ。私がギケー様の洗脳を防いでいたのよ。本当は今日が来る前に、犯行の証拠を掴んで、あなたに教えるつもりだった。しかし、あなたも長年探し続けて気が付いていると思うけれど、ギケー様は既に犯行の証拠を抹消してしまい、見つからなかった。唯一の可能性は証人だけど、今のところ実行犯も全くわからないし、生存者のあなたもミヅキちゃんも見ていない。残念だわ」
ヘレンは本当に悔しいという表情で言った。しかし、その悔しさはトゥルースも同じである。義姉を人質に取られていたこともあるが、彼がギケーに引き取られた最大の理由こそ、両親を殺害した犯人がギケーである証拠を見つける為だった。
「そ、そんな事よりもなぜオレにそんな事を? ヘレンはギケーの右腕の様な存在だろ?」
トゥルースは疑問をヘレンに投げかける。あまりに突然すぎる展開に、まだ混乱を隠しきれないが、可能な限り彼は冷静に状況を判断していた。
ヘレンは静かに頷き、その疑問に答える。
「それはあの事件までの話よ。私がかつてギケーの愛人であったことは知っていますね?」
「あぁ。父さんが生まれる前の話だろ?」
「そうです。そして、あの子、ブルースの母親も愛人の一人でした。ギケー様はそもそも正妻を持たない方でしたので、私やその愛人以外にも愛人が複数ギケー様にはいました。中でも最も正妻に近い立場にいた愛人、一時期は私の友人でもありましたが、彼女の手によってあの子の母親は殺されました」
「なっ……」
「トゥルースさん、この程度で驚くのは早すぎます。私はこれから更に貴方が耳を覆いたくなるような真実を語らなければならないのですよ。しかし、やっと作れた時間であり、やっと伝えることのできる条件が揃ったのです。トゥルースさん、知りたくはないのですか? 何故、ご両親は殺されたのか? 今日まで耐えてきたのは、それを知る為ではなかったのですか?」
「……わかった。話せ」
トゥルースが促すと、ヘレンは頷いた。
「そもそもこのゲーン一家は、開拓時代から続くと云われる老舗のマフィアです。開拓時代、土地を手に入れる上でも、その後の運用においても血生臭い裏の仕事が行われており、その裏の仕事がゲーン一家であり、土地や資産を運用した財団がテリー財団で総帥は共にテリー家の家系が行うようになりました。しかし、決して現在のような世界的に知られる財団でもなく、マフィアでもなかった。自警団の一種程度だったそうです。ギケー様が第二次世界対戦後、ベトナム戦争にかけての間に総帥となり、財団もゲーン一家も一変しました。この間の記録は残されていませんが、ギケー様が他の兄弟を暗殺し、保守派の老人達を粛清してのしあがったもののようですね。そして、他国の企業、組織との交流が盛んになり、湾岸戦争にかけての間に、あらゆる商品を扱う表と裏の商会という現在のテリー財団、ゲーン一家の姿になった訳です。ここまではいいですね?」
「あぁ。続けてくれ」
「私がギケー様の愛人であったのは、この頃までです。それ以降は今と同じ秘書としての立場で一線を彼と引いています。先程お話ししたように、ギケー様に正妻という方はおらず、ブルースの母親も愛人の一人でした。当時、愛人は複数いましたが、先天的にギケー様は子を作りにくい体質で、同じく愛人の一人でもあった私を含めて子は他の誰一人宿しておりませんでした。ブルースの母は、正妻の座を狙いました。そして、結果は先程話した通りです。ブルースの母を殺した彼女も、その後ギケー様の手で粛清されました」
「………」
自分の祖母は愛人同士の争いによって命を落としていた事実に、トゥルースは生唾をごくりと飲み込んだ。
ヘレンはそんなトゥルースの様子を一瞥しつつも、話を続ける。
「成長したブルースは、この組織をマフィアのゲーン一家を捨てて、テリー財団の経営に絞るべきと考えを訴えるようになりました。実の母親を死に追いやった者としてギケー様を憎んでいたのも、その考えを訴えるようになった背景にあるでしょうね。ギケー様はトゥルースさんのご存じの通り、ゲーン一家を軸に表向きの顔としてテリー財団を利用する人ですので。この親子間の確執をより決定的にする出来事となったのが、泉さんの出現です」
「母さん?」
トゥルースが聞くと、ヘレンは頷いた。
そして、今一度彼を見つめて、ヘレンは深呼吸した。
「トゥルースさん、真実を知りたいですか?」
「ここまで話してそれはないぜ? その真実というのが、オレには知らされていないギケーが父さんと母さんを殺した動機になるんだろ?」
「そうです。それにミヅキちゃんを人質にしてでも貴方をギケー様が自分の跡取りにしようと育てたのか、その理由でもあります」
「なら、話してくれ。もうどんな真実でも聞く覚悟はできている」
トゥルースの返事を聞き、ヘレンは意を決して、話を再開した。
「彼女はギケー様の秘書として私の部下になりました。私の忠告を受けつつも、泉さんはギケーの愛人となりました。そして、ギケーの子を宿しました」
「! お、おい!」
トゥルースは察してヘレンに話しかけるが、彼女は止めずに話を続ける。
「そして、その直後から泉さんは、ブルースとも恋人となり、電光石火の勢いでギケー様の反対をする時間も与えずに結婚をしました。それはギケー様の子を自身の子として認知し、ギケー様からテリー財団を奪うという目的の為です。計画は成功しました。ギケー様の元から離れ、彼らはギケー様の子どもを法的に自らの元に保護した。つまり、子どもを人質にして、テリー財団からギケー様を追放することに成功させたのです。それからギケー様は、ゲーン一家の総帥として暗躍を続けながら、表向きは隠居となりました」
「じゃぁ、ギケーはオレの本当の父親なのか?」
ヘレンは愕然とするトゥルースに頷いた。そして、そのまま続きを話す。
「しかし、ギケー様は十年前、行動を起こしました。それがあの事件です。ブルースと泉さんを殺し、ミヅキちゃんの命を人質にされたトゥルースさんはギケー様に引き取られることになりました。そして、トゥルースさんがテリー財団の次期総帥とすることを条件に、ギケー様が再びテリー財団の総帥に返り咲いた訳です。当然ながら、ブルース派だった幹部はすべて即日の内に粛清、解雇しました。ギケー様は再びテリー財団とゲーン一家を手中に納める総帥になり、現在に至るのです」
「それで、何で今までそれを黙っていたヘレンがオレに伝えたんだ?」
「今までは時が熟していなかったからです。そして、今夜トゥルースさんに話せる条件が整ったからです」
「条件? オレが真実を知って、どうしろと?」
トゥルースはヘレンに聞く、すると彼女は白髪の無い金色の髪を揺らすと、懐からオートマチック式のマグナムを取り出した。
「既にミヅキちゃんの身の安全は確保されているわ。……あなたに最高の誕生日プレゼントをあげる。自由という名の」
ヘレンは茶色い目でトゥルースを見つめると言った。その瞳の中の彼の青い目も彼女を見つめる。そして、彼は頷いた。
「脱出か! やろう!」
お互いの眼に親子にも似た信頼を確信したトゥルースは、力強く言った。
「やっぱり、何一つ手がかりはないか」
ヘレンがトゥルースの部屋に来てから30分後、彼らは行動を開始した。
まずヘレンは使用人や警護の人間を可能な限り屋敷内から出した。
その後、部屋を出た二人はヘレンの部屋から、脱出の為に隠しておいた武器、そして今後の武器となると思われるヘレンの持つゲーン一家の資料を回収した。
そして、今二人は最後の証拠探しをする為に、ギケーの書斎を漁っている。
「予想通りね。私が今までに集めたギケー様の犯罪の証拠も、所詮テリー財団の力でいくらでも揉み消せるレベルの犯罪ばかりだわ。今やゲーン一家はいくつもの国の組織と繋がる国際的な組織となっているわ。それこそ私の知る限りでも、ゲーン一家のものと言える凶悪犯罪はいくらでもある。中には、ギケー様が直接行っているみたいで私は知りえなかったけど、殺し屋の教育をしたり、秘密結社にも属しているとも言われているわ。しかし、全て証拠がなくて、ゲーン一家という巨大組織のボスを裁判の場に引きずり出すのはまず無理よ」
ヘレンの言葉にトゥルースも頷かざるえない。
ゲーン一家はギケー本人が言うように、麻薬以外の密輸、密売はすべて手を染めているといっても過言ではない。それこそ、武器や麻薬以外の薬物ならば化学兵器だろうと未認可の新薬だろうと何でも取り扱う。中にはテリー財団として堂々と取引をしているものまである。
しかし、証拠を一切残さずに大小様々な犯罪を行い、その名を世界に広め、現在のテリー財団とゲーン一家の地位を確立したのだ。これまでにもFBIやインターポール等も潜入捜査や一斉検挙を試みたが、今まで末端以外の逮捕者が出ていない。その逮捕者もゲーン一家そのものとは直接結び付かない罪状ばかりだ。
「それにしても、資料が無さすぎだ。あるのは、こんなメモ書きだけだ」
トゥルースはギケーの机の上に無造作に放置されたメモ書きを手に取った。メモと言っても単語が書かれているだけのものだった。
「流石はギケー様、と言ったところね。恐らくすぐに必要な情報以外の重要な情報は、資料に残さずに記憶の中に収めているのよ」
「………そんなに頭がいいのか? ギケーは」
半信半疑のトゥルースが聞くと、ヘレンは本棚から本を全て出し終えると、頷いた。
「ギケー様にとって、記録に残すのは誰かに見せる為にする事と言っても過言ではないわ」
「なら、メモ書きはなんだ?」
「多分、記憶に留める必要のない用事などのメモです」
「……普通ならもう少し丁寧に書くものだが、ギケーには単語で十分って事か。なんだかムカつくな」
トゥルースはメモを見つめながら呟いた。紙には、『ヘレン』『赤(Red)』『松田』『イリス』『神(GOD)』『西門』と様々なメモが書かれている。
「しかし。一体、何をメモしたんだ?」
「さぁ? それがわかるのはギケー様だけですから」
「だが、ヘレンっていうのもあるぞ?」
「多分、昼にギケー様が屋敷を留守にする前に、私に知り合いの神父様へ渡す為の赤ワインを用意しておくようにと伝えるのを忘れないようにというものだと思います」
「………本当に忘れそうな用件だな」
トゥルースはメモ書きの意味に脱力しつつ言った。
「じゃぁ、この西門はなんだ?」
「それは、夕方からの警備を減らす様に、指示を出しておくのを忘れないようにというメモだと思うわ。今朝、ギケー様が警備責任者にそう指示を出していたから」
ヘレンはニヤリと笑みを浮かべて答えた。トゥルースの口にも笑みが浮かんだ。ヘレンの言葉の意味を理解した。
「つまり、それ利用するんだな? きっと、ギケーは何らかの理由で警備を手薄にしたんだ。そこから脱出しようということか!」
「そうよ。つまり、条件が整っている今日が最適だということよ。おわかりですか? トゥルースさん」
「あぁ。流石はヘレンだ」
「従って、この書斎を物色できるのもあと僅かな時間だけよ」
ヘレンが時計を確認しながら言った。
「と言っても、もう調べるところは一つだろ? 空くのか?」
トゥルースは書斎机の裏に隠すように置かれた古い金庫を見て言った。
ヘレンも本棚から近づきながら、懐からピッキングセットを取りだして頷いた。
「当然です。私はギケー様の秘書ですから」
そして、ヘレンは耳を金庫に押し付け、鍵穴をピッキングし始めると、ものの数分と経たぬ間に解錠してしまった。
「もう空いたのか? 大丈夫かよ、この金庫……」
「まぁ、そこらの銀行の金庫よりは難しいものでしたね」
「えっ」
「それよりも、中身です」
驚くトゥルースを尻目に、ヘレンは淡々と金庫を開き、中を確認する。
トゥルースも慌てて、その中を見ると、一丁の装飾銃が置かれていた。
かなり古い6連式のリボルバー型の小銃で、銃身長は20センチを超え、重量もずしりと重い。弾丸は銀を使用しているらしい。口径は45で、総じてマグナムを使っていたトゥルースには扱い難い印象を持つ。何かの記念に作られた贈答用の装飾銃というのがトゥルースの判断であった。
「これは?」
「ソールズパイルだわ。200年前の開拓時代のゲーン一家創始者、つまりあなたの先祖から伝わる物で、先祖が窮地に陥った時にその命を守った魔法が備わっていると伝えられている。私は実際に見たことはないけれど、ギケー様もその力を使ったことがあるらしいわ」
「ソールズパイル。北欧神話のトール神の杭という意味か」
「トゥルースさん、あなたはこれを持つ権利があるわ」
「そうだな。何も盗らないよりいい。戴いていこう」
トゥルースは装飾銃ソールズパイルを腰におさめた。
そして、二人は書斎を後にした。
夜の静寂に包まれていた屋敷に、突如銃声が響いた。
「警備はいないんじゃなかったのか?」
「全員追い出すなんて事はギケー様が直接警備責任者に命令しない限り無理よ」
廊下を走りながらトゥルースとヘレンは言い争いをする。
「大した誕生日プレゼントだぜ!」
言い切ると同時にトゥルースは拳銃を発砲した。ソールズパイルでなく、ヘレンから貰ったマグナムを使用している。ソールズパイルは重い為、使い勝手がどうしても悪く感じる。
両脇から走ってきた子分の手に持っていた拳銃に命中し、子分達は悲鳴を上げる。
「飛び降りましょう」
ナイフで襲い掛かる複数の子分達を手刀だけで気絶させ、ヘレンはトゥルースに言った。
「あぁ!」
トゥルースは跳び蹴りで子分を吹き飛ばすと、彼女の提案に同意した。
二人は同時に屋敷の窓から飛び下り、庭に降り立った。
「追手はないな」
「全員気絶させているから大丈夫よ」
トゥルース達は木に隠れて弾をリロードしながら会話をする。
「いいわね? ……では、西門に行きましょう」
トゥルースは頷いた。
二人は素早く西門に向かって、木がしげる庭を進み、西門の近くに来た。西門から屋敷に伸びる道の脇の茂みにバイクが一台隠されていた。
「このバイクは?」
「私が隠しておいたものよ。一応、この脱出でのあらゆる可能性を考慮して、全ての門の近くにバイクを隠しています」
「なるほど」
ヘレンの説明にトゥルースは素直に感心した。一方、ヘレンは手早く準備をし、バイクに跨っていた。
「乗って」
「あぁ」
トゥルースもヘレンの後ろに跨がる。
西門は案の定、警備が手薄であった。しかし、ヘレンはすぐに動こうとはしない。
「ヘレン。何を待っているんだ?」
「いくら警備が手薄と言え、今門に突入したら、他から追っ手が来る。警備を手薄にした以上、恐らく、誰かがこの門をこっそり使用する。その時を待っています」
「それは………ギケー?」
「さぁ? しかし、ギケー様に警備を減らすよう頼める人間である事は間違いないわね。それがギケー様自身か、それとも他の誰かなのかはわからないけれど」
そう言うと、ヘレンは再びバイクに身を寄せて視線を低くし、西門の様子を伺う。
しばらく様子を伺っていると、二人の警備が、西門をゆっくり開く。
素早く彼らはバイクをふかし、突撃の準備をする。門は完全に開いた。
外から黒いリムジンがゆっくりと門に向かってくるのが見える。それを確認するや、ヘレンはバイクを走らせた。
突然現れたバイクに警備の2人は驚き、反応が遅れる。一方、リムジンは迷わずゆっくりと門へ向かっていた。
互いのヘッドライトがお互いを照らす。
光の中、ヘレンはバイクをウイリーさせると、バイクを跳ばした。門の中で、バイクはリムジンの上を飛び越える。バイクの後輪がリムジンの後部ボンネットに当たり、バイクはバウンドした。
リムジンはその場に停車する。一方、バイクは自由のある外界の道路に着地し、ブレーキをかける。
トゥルースとヘレンはヘルメットを脱いだ。リムジンから、ギケーが降りる。西門を使ったのはギケーであった。
「ギケー様! お許し下さい。しかし、これはあなたがした罪に対する罰です」
ヘレンは門の中に立つギケーに言った。それに、対しギケーは勝ち誇った口調で言う。
「トゥルースよ! わしを出し抜くなんぞ100年早いわ! お前がわしの期待通りにならない位わかっておった! 好きにするがよい! 精々足掻くがいいわ! いずれわしに屈するその日までな!」
「あぁ好きにさせてもらう! だが、オレは貴様に屈しはしない! いつかその罪を暴いて、引頭を渡してやる!」
その時、トゥルースはリムジンの後部座席にはまだ人がおり、その人物が自分達を見つめている事に気が付いた。
「行きましょう」
「あぁ」
ヘルメットを被るヘレンに促され、トゥルースもヘルメットを被り、バイクをふかす。
バイクが走り出した瞬間、リムジンから一人の少女が顔を出した。少女と一瞬、トゥルースは視線が合わさった。年下だ、直感的に彼は思った。
バイクは、ギケーと少女を残して、その場を後にした。
「誕生日おめでとう。そして、自由とその代償に待つ戦い世界に、ようこそ」
バイクを走らせながら、ヘレンはトゥルースに言った。時刻は、0時を過ぎていた。