古の秩序
【Episode Φ】
暗い闇に包まれたロンドン。
シャーロック・ホームズが居るかと思ってしまうような、20世紀後半の霧の町。
闇の中を移動する一人の男がいた。
男の名は、怪盗φ。この数年、世界中で歴史的な問題を抱えた宝を盗んでいる現代に現れた怪盗ルパンである。
怪盗φは、とある私設の美術室に忍び込んだ。そして、今宵の獲物である宝石に手をかけた。
「そこまでよ!」
女の声がし、怪盗φの手が止まる。
怪盗φが振り向いた瞬間、女が写真を撮った。
「あなたは、いつも私を追廻ている日本の新聞記者さんですね」
怪盗φが言った。
「あら、覚えて下さっていたの。光栄ね」
女は微笑んだ。
「私は好みの女性の事を忘れはしませんよ」
「その手は食わないわ」
怪盗φの言葉を笑って返す。そして、拳銃を取り出した。
「物騒だ。あなたには似合わない」
怪盗φが穏やかな口調で彼女に告げるが、女は躊躇なく怪盗φに発砲した。
しかし、怪盗φはギリギリのところで回避した。
「フフフ、私の能力は知ってる筈だ」
女は不敵に笑う怪盗φに再度発砲する。銃声と薬莢の落ちる音が響く。
「反射速度を極限まで高め」
再度二回連続で発砲。
「銃弾をも回避することが出来る」
更に彼女は怪盗φへ続けざまに三発発砲した。
「その拳銃は七発だ。もう弾はない」
「でも、私の銃声で人が集まるわ」
事実、警備員の足音が近付いてきている。
「余り、こういう事は好きではないのだが………仕方ない」
怪盗φはそう言うと、女を抱きかかえ、窓辺に立った。
「暴れると、落ちますよ。絶対助かりませんよ」
怪盗φの言葉で、女はおとなしくなった。
怪盗φと女は、窓から飛び、そして、空から降りている梯に捕まった。
梯は気球から垂れていて、気球は、ゆっくり、ロンドンの町から離れていった。