ゴジラvsメガロ




 一方、地球では赤いオーラを纏う覚醒ガイガンがゴジラと対峙していた。
 ガイガンは左腕を振り上げた。オーラの纏う左腕は鎌から赤いオーラによって形成された別の鎌が鎖状に伸び、ゴジラへと達する。

ゴガァァァァァァァァァオォン!

 鞭の様に伸びた鎖状の鎌がゴジラの体を叩きつける。
 しかし、ゴジラはその鎖を掴んで対抗をする。

ギェェェェェェェェェェッ!
《ハナセ》

 ガイガンがテレパシーを発すると同時に、鎖に刃が形成され、小刻みに振動を始める。

キャエンッ!

 ゴジラは火花と血飛沫を上げて、鎖から手を離す。
 超振動刃を得た鎖はそのまま鞭の如くうねり、羽田市街地のビルを切断する。次々に倒壊する建物と共にゴジラの体も繰り返し鞭打たれる。
 遂にゴジラの身体に巻き付いた鎖はゴジラを体を削りなが、その動きを拘束した。

ギェェェェェェェェェェッ!
《オワリダ》

 ガイガンの右腕に形成された二連のチェンソーを構え、ゴジラとの距離を一気に詰める。
 一方、ゴジラは自由のきく尾を動かす。尾は先端にかけて青白く発光しており、それをガイガンへと向かって振る。
 閃光が迸る。ゴジラの尾はガイガンのチェンソーを牽制し、その生じた隙にゴジラは全身放射を放つ。
 爆発の衝撃は蒲田や大森にまで達し、吹き飛ばされたガイガンは京急蒲田駅に倒れ、駅舎に停められていた車両を押し倒す。
 壊滅状態となった羽田市街地に立つゴジラは背鰭を発光させ、息を吸い込む。

ゴガァァ――

 ゴジラは放射ビームを放ち、蒲田の街と共にガイガンを攻撃する。
 しかし、ガイガンは倒れた姿勢のまま左腕の鎖を収縮させ、刃を剣状に揃える。刃が高速振動する剣を自身の前に構え、ゴジラの放射ビームを防ぐ。
 倒れているガイガンの背中から揺らめく炎のように赤いオーラが広がり、翼の様に羽ばたかせる。ガイガンの体は宙に飛び上がり、左腕の剣でゴジラの放射ビームをおさえながら、飛翔した。

ギェッ!
ッ!

 飛翔したガイガンはゴジラの放射ビームを防ぎつつ移動。自身の背に日光を据え、ゴジラの目をくらませた瞬間、放射ビームを振り払いゴジラの視界から消えた。
 刹那、ゴジラの死角から高速でガイガンが迫り、ガイガンの腹部の回転カッターを押し付けて体当たりをした。

ゴッフォッ!

 呻き声を残し、ゴジラの巨体が大森へと吹き飛ぶ。平和島周辺の住宅地を巻き込んでゴジラの体は転がっていく。
 一方、ガイガンは上空で両足を揃えた。ガイガンの足はメガロの両腕のように半円錐形のドリルに変化していた。その足の裏を合わせると、円錐形のドリルとなる。
 ドリルが回転を始めると、まるでドリル生み出す渦に吸い込まれていくかのように赤いオーラがトグロを巻く。それはドリルの周りに更にドリルをつくる。肥大化した円錐形の渦はガイガンをその中に隠す。
 やがて巨大なドリルを形成した赤いオーラは、そのまま実体化し、眼下のゴジラに向かって落下する。

ギェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!
《ホロビロ》

 巨大なドリルと化したガイガンが落下すると、その衝撃は半径5キロの範囲を一瞬で吹き飛ばした。巻き起こった土埃の渦は品川水族館や大井競馬場を瞬く間に破壊し、品川手前の大井町まで、損壊を与える程に達した。
 その中心である大森地域は巨大なクレーターとなって地上は掘られ、直下のゴジラはその姿すら確認できない。

ッ!
《ナンダ》
ゴガァァァァァァァァァオォォォンッ!

 ドリルが押し戻され、その切先を両手で押さえるゴジラの姿がクレーター中心部に現れた。
 ゴジラは瞬時に破壊されて消滅する両手を瞬時に再生させ、ドリルを抑え掴んでいる。
 ゴジラは咆哮を上げ、遂にはドリルの回転を止めて、そのままガイガンを放り投げた。
 巨大なドリルは赤いオーラに戻り、ガイガンの体はクレーターの端まで投げ飛ばされた。
 追い討ちとばかりにゴジラは全身を青白く発光させて、熱線を放つ。

ギェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!
《マケヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!》

 ガイガンは咆哮を上げ、熱線を両腕のチェンソーと剣を使って振り払い、揺らめくオーラの翼の赤い軌跡を残して高速で飛翔。
 ゴジラは熱線を放射ビームに変えて追撃をするが、ガイガンの動きが早すぎて捉えられない。ゴジラの視界にはガイガンが通過した赤い軌跡が線となって残るだけで、それを放射ビームが追う。
 放射ビームは最長10キロにまで伸び、品川、高輪は勿論、都内の高層ビルがビームによって焼き切られて炎上する。
 対してガイガンはゴジラの背後に回り込み、再びゴジラに体当たりをする。
 衝撃で周囲の瓦礫を巻き上げ、ゴジラは砲弾の如く速度で吹っ飛ばされる。

ギェェェェッ! ギェッ! ギェッ! ギェェェェェッ!
《キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!》

 ガイガンの全身を包む赤いオーラがガイガンを中心に爆ぜ、両腕のチェンソーや剣が解除されて代わりに両腕の鎌が赤く染まり、発光する。
 ガイガンは赤いオーラを全身に纏い、炎の帯びた弾丸の如く超高速で吹き飛んだゴジラを追撃。両手の鎌を縦横無尽に振るう。
 鎌からはオーラそのものが赤い光刃となってゴジラに放たれる。
 赤い光刃は空気も水も切断した。空間そのものを切断していた。如何に強靭な体を持つゴジラであってもこの刃に耐えることは不可能。
 絶え間なく襲いかかる刃にゴジラの体は切り刻まされる。微塵切りである。

《トドメェェェェェェェェェェェェェェェェッ!》

ッ!
《ッ!》

 確かにその瞬間、ゴジラの身体は空間そのものを切断する無数の赤い光刃によって切り刻まれながら吹き飛ばされており、高輪の台地にその破片が撒き散らす直前であった。
 だが、次の瞬間に、ゴジラはその瓦礫広がる高輪の斜面に自らの肉片を撒き散らすのではなく、己の足で踏み、瓦礫を押し飛ばしながら滑走。その全身をガイガンの赤いオーラに対抗するかの様に青白く発光させ、遂に空間を切り裂く赤い光刃を両手で挟んだ。白羽取りだ。
 ガイガンも絶句した。咆哮もテレパシーも出ない。
 直前までゴジラは瀕死、否、切断されて死んでいた。ガイガンの赤い光刃は空間そのものを切断し、ゴジラは何度も死んでいた。如何に脅威的な再生力を持つゴジラすらも攻撃の度に瀕死のダメージと再生を繰り返していたのだ。
 しかし、ゴジラの生命力はここで更なる進化を遂げた。
 ゴジラは切り刻まれて死んだ。死ぬ度に再生し、蘇生していた。その再生速度は遂に、致死の刃を上回ったのだ。

…………
《…………》

 ガイガンは無心で鎌を振り、ゴジラに赤い光刃を放つ。
 刃はゴジラの身体をすり抜け、背後の建物や大地を切断する。
 否、すり抜けなどいない。切られた瞬間に再生しているのだ。
 あまりにも現実離れしたゴジラの生命力は最早限界などない無限の命であり、攻撃を受けても無意味と化す再生力は夢幻の境地であった。
 
ギェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!
《ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!》
 
 最早それはガイガンの恐怖の叫びであった。
 ガイガンは全身を真紅のオーラに染め上げ、飛翔。
 対するゴジラは追撃の為に力をためる。

 しかし、ガイガンの飛翔は逃げでは無かった。地球から宇宙へ逃げる背中を見せるつもりはガイガンに一切なかったのだ。
 ガイガンは再びゴジラの直上を取る為、勝負を決する最後の一撃を放つ。ただその為、その為に必要な距離を取る為だけの行動であった。

 それは、自身の直上を取り、眼下の己を見下ろしたガイガンを見たゴジラにも瞬時に理解できるものであった。
 次の瞬間、ゴジラも攻撃の姿勢を変えていた。追撃ではなく、応戦。渾身の一撃に渾身の一撃で迎え撃つための姿勢をとった。

ギェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!

ギャガゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァオォンッ!

 刹那、ガイガンは両足を揃えて赤いオーラに染まったドリルでゴジラの頭部一点に狙いを定め、自らを加速させて打ち落とす。対するゴジラも全身を青白く発光させ、口を開く。

 ゴジラはガイガンのドリルを噛みつき、己の歯でガイガンのドリルを抑える。ゴジラの歯は青く光り輝き、口角から首、胸から全身にかけて皮膚の隙間から植物が根を張るかの様に光り輝く。ゴジラの身体を包む青いオーラが背鰭から湧き上がる。
 周囲の大地は衝撃で砕け散る。
 青白く輝きながら燃え上がるオーラを纏ったゴジラは、遂にガイガンのドリルを噛み砕いた。



 刹那、ゴジラの喉奥が光った。







 東京の空が青紫色に染まり、その中心に巨大なキノコ雲が浮かんでいた。


 


ゴガァァァァァァァァァオォォォンッ!



 

 地上では、ガイガンを塵一つ残さずに消滅させたゴジラが、勝利の咆哮を上げ、再び背鰭を発光させると、特大の放射ビームを空高く打ち上げた。
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