ゴジラvsメガロ




 基地ではイブキがシートピアの情報操作、通信操作によってめちゃくちゃにされた世界中の通信網を次々に復元させていた。
 続々と届く世界各国の戦況は逆転勝利に湧いていた。シートピアの装置をゴジラが破壊したことで敵の駒になっていた兵器が無力化、奪還されたのだ。多くの地球怪獣が加勢に加わったことも大きい。
 どの映像でも怪獣が咆哮を上げ、その手前で人々が自国の旗を掲げて勝利を讃えている。
 情報操作によって混乱していた国家間の関係も次々に相互確認がなされていく。中には互いに目が全く笑っていない者同士も散見されるが、まずは一時休戦といった様子だ。
 これで世界が先に滅亡する心配は一旦解消された。残るリスクは東京にいるシートピアとガイガンとメガロだ。怪獣達は今、ゴジラが戦っている。

「少なくとも、地球人としてはレイコさんがシートピアのコントロールを奪うことで、勝利が決定的なものになるわ」

 そう言ったイブキの眼前にあるスクリーンには、レイコさんとメカゴジラからの映像と羽田で戦う怪獣達の映像が映し出されていた。




 ジェットジャガーは倒れたモアイ像ロボとメカゴジラの前に立つ。

『少なくとも、地球人としてはレイコさんがシートピアのコントロールを奪うことで、勝利が決定的なものになるわ』

 イブキの声が通信でレイコさん達にも届く。

『行け………行けェェェェっ!』

 陣川の声が響く。
 そして、レイコさんはジェットジャガーの右手を揃えると、一度直角に肘を曲げ、制御装置にその手を突き刺した。
 



 一方、その時地上ではゴジラが二対一の状況に関わらず、更に一段と力を増して応戦していた。

ギュェェェェェェェェグェェェェェンッ!

 襲いかかるメガロにゴジラは身を翻し、尾による強烈な一撃で打ち払う。
 続くガイガンは両手の鎌でゴジラを抑え込み、腹部の回転カッターを動かす。
 そこに起き上がったメガロが再び両手のドリルを回転させてゴジラの背中を襲う。
 前後同時の攻撃に対してゴジラは抵抗せずにそれを受け、血飛沫が撒き散らされる。
 しかし、ゴジラは攻撃されると同時に傷を塞ぐという驚異的な再生力を発揮し、更に全身放射で二体を吹き飛ばす。それは二対一でありながら拮抗以上の戦いをみせていた。ただ、決着をつけられるほどの明らかな戦力差には至らない。そんな状況であった。

グェェェェ…………
 
キィィィ……キェェェェェェェェェェェェェェェェェェーッ!

 突然、大田区の市街地に倒れた二体の様子が変わった。メガロは糸の切れた人形や電池の切れた機械の様に動きが止まる。ガイガンは一瞬ガクッと膝を折るが、次の瞬間にはこれまでにない顎の牙を大きく開いて全身を大きく動かして咆哮を上げた。その雰囲気は野生的であり、雄々しい。
 それは、これまで制御装置によって抑えられていた獰猛かつ凶悪な本来のガイガンが覚醒したことを意味していた。
 そして、その意味を人類はすぐに理解する。

ギィギェェェェェェェェェェッ!

ギュゥェェェェ……ッ!

 ガイガンは味方であったはずのメガロを襲ったのだ。
 これまで以上の速さで鎌を振り、メガロを切り刻む。メガロの全身はバラバラになり、球体状に四散する。
 その瞬間、球の中心に赤く光るメガロの体内から現れた“シード”が露わになった。
 それをガイガンは嘴の先で摘み、パキンッ! と割ると、口の中へ入れる。
 “シード”を取り込んだガイガンは、一瞬脱力した後、バイザーが赤く光り輝く。同時に全身からも、周囲に滲み出して蠢く赤いオーラを纏いだす。

ギェェェェェェェェェェッ!

 高音域の機械的な以前の咆哮よりも低い動物的な咆哮を上げるガイガン。その全身は赤いオーラが蠢き、次第に形を成しながら、身体に戻っていく。

ゴガァァァァァァァァァオォォンッ!

 ゴジラは更なる覚醒をしたガイガンに対峙して咆哮を上げる。
 対するガイガンは直立したまま右腕の鎌を自身の眼前に構える。鎌から滲む赤いオーラが鎌に被さる様に形を成す。
 チェーンソー。右腕に現れた赤いオーラは二連の回転するチェンソーになっていた。
 そして、チェーンソーとなった腕を体の前で構えて――――

《キリキザム………》

 言葉を発した。
22/27ページ
スキ