アストライア・ノヴァ
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ツナは躊躇した。
生きる為に助けを求められ、手を伸ばされた事は何度もあった。
ツナはその手を何度も握ってきた。
例え自分が傷付いても、その人を生かす為に助け出してきた。
だけど…死ぬ為に助けを求められ、手を伸ばされた事は初めてだった。
助けたいけれど殺したくない。
しかし伸ばされた手を拒絶すると言う事は、ティティにとっては永遠に苦しめと言われたも同義。
見捨てられた事と何ら変わりはない。
かと言って…「生きてほしい」という言葉は
否応無しに生き存えさせられる彼女にとって、それはもはや呪いの言葉だった。
「(ツナ…)」
安易に「生きて欲しい」と言えない。
だからと言って見捨てられる筈がない。
苦しみ泣き続ける『友達』を…
それでも、彼は眉間に皺を寄せ、呼吸をするのも苦しそうな表情で
声を絞り出すように言った。…選んだ。
「……殺せないよ…オレには、出来ない」
あたし達からすれば、それは至極当然の答え。
だけどティティからすれば最後の望みが絶たれる、絶望の答えだった。
「お願い…たすけて。もう、苦しいの…辛いの…たすけて…」
「殺せない…殺せないよ。オレには無理だ…したくない…っ」
消え入りそうな声で求められる助けを、ツナは歯を食いしばって拒絶し続ける。
ティティの助けを求める手が力なく落ちていく。
あたしは確かに…ティティの目からゆっくり光が消えていくのを見た。
ツナもそれに気付いて
「待って!!」
彼は走り出した。ティティに向かって。
「何か別の方法があるはずだよ!だからっ諦めないで!!」
ティティの前に辿り着いたツナは素早く手を伸ばし、落ちかけていた彼女の手を掴んでギュッと握る。
そしてしゃがんで虚ろな目をしたティティと目を合わせ
「オレが協力するっティティさんはもう独りじゃない!
絶対に何か方法があるはずだよ!普通の女の子に戻れる方法が!!」
「……そんなもの、ありません」
「決めつけないでよ!そんなの分からない!!
だってオレは何度も奇跡を見てきてる!
何をやってもダメダメで…ダメツナだったオレが仲間や友達のおかげで何度も戦いに勝ってきてるっ
この世界の人間じゃなかった美香がこの世界で生きられるようになった!
…ティティさんは過去は変えられないと言ってたけど、オレはそうは思わない。
だって、美香がこの世界に存在を認められたから
消されてしまった美香の御先祖さんとボンゴレⅠ世との過去が『在ったもの』として蘇ったんだ!!
だからティティさんの事だって絶対に何か方法があるはず!
独りだけじゃ絶対に起こせなかった奇跡…
でもっ今はオレ達がいるじゃないか!!友達がいるじゃないか!!」
「……………」
「未来の出来事が過去に奇跡を起こした。
なら、ティティさんの事も未来で解決出来るかもしれない!
だから心を失わないで!そんなのっ生きたまま死んでるのと同じだ!!」
「綱吉くんの言う通りだよティティア。
星を守る者が心を失ってはいけない」
そう言ってあたし達の後ろから姿を現したのは、あの『川平のおじさん』だった。
彼は丸メガネを指でクイッと上げながら自嘲気味に
「最も、人の心が無い方法でトゥリニセッテを維持し続けていた私が言う事ではないけどね。
でも…もうそんなシステムは存在しない。
だからこそ私は、星だけでなく人の痛みを理解し…強く共感出来る普通の女の子だった君を守護者として選んだんだよ」
「師匠…」
彼は夜の散歩にでも来たかのようにのんびり歩き
あたし達を通りすぎツナとティティ、そしてティティに手錠を繋げたままでいる雲雀くんの近くに来ると
「だけどまさかここまでティティアの精神を追い詰める結果になるとは思わなかった。
師である私の責任だよ。君は昔からしっかりしてたからね…つい甘えてしまっていたようだ。許してほしい」
「…………」
「君に居場所を与えたい一心で提案したものだったが、私も知らなかったとは言えそれが取り返しのつかない結果になってしまった。
ティティア、私も綱吉くんの言葉に同意し協力しようと思う。
普通の女の子は無理でも、せめて『終わり』のある存在になれるように何か方法がないか探そうと思うんだ」
「…………」
「古代種である私でさえ『終わり』は存在するのに、弟子には永遠を強いるのは流石に可哀想だしね。
…でも、その方法が見つかるには途方もない時間が必要かもしれない。
綱吉くん達が生きている間に見つからないかもしれない。
君はまた失うだろう。大切な人達の死を目の当たりにするだろう。
もちろん奇跡だって起こり得る。
けれど今の段階では、何方とも言えないのが現実だ。
だから…ティティアにとある私の知り合いを紹介したい。
その人も丁度仕事の事で人手を探していてね。ティティアにぴったりだと思ったから連れて来たんだ。
…今から会ってみないか?」
「…………はい…」
唐突な人と仕事の紹介にティティは困惑した顔で川平のおじさんを見上げていた。
そしてツナがティティの握った手を引いてあげて彼女は立ち上がる。
人が更に群れてきたせいか雲雀くんは不機嫌そうな顔になると、ひとまずティティがもう逃げない事だけは分かっているのか
ずっと腕に繋いでいた手錠を解錠し、そのまま彼は背を向け何処かへ歩き去った。
でも…多分、なんとなく…彼はまだしばらく近くにはいそうな気がした。
「それじゃあお願いするよ」
川平のおじさんが誰も…何もいない虚空にそう声をかけた。
その声に、虚空が返事をした。
「やれやれ…僕としては不本意なんだけどね。
ま、利害の一致だ。仕方ない」
それはあたしも聞いた事がある声だった。
驚く間もなく、ツナとティティの前にその人は急に姿を現した。
その人物を見たツナがギョッとして
「お前は…バミューダ!」
そう。今ツナとティティの前にいるのは、以前代理戦争の最後に戦った
かつて復讐者を束ねるアルコバレーノだった赤ん坊。
「久しぶりだね沢田綱吉」
「なんでこんな所に…!」
「炎を灯し続ける装置はどうしたんだ」
意外な来訪者にリボーンくんが駆け付け、ピョンと飛んでナッツが乗る反対側のツナの肩に乗る。
「もちろんちゃんとやってるさリボーンくん。
しばらく僕が離れても大丈夫なようにもしてある。
僕が用があるのは君達じゃなくてすぐ横の彼女だよ」
相変わらずプカプカと浮いているバミューダはそう言いながらティティを見た。
「貴方は…バミューダ」
ティティはバミューダを知っているようだった。
「さすが数多の世界線の惑星を守護し、過去と未来を自在に行き来出来る存在だ。とっくに僕の事は知っているね。
だったら僕がこの世界線ではどんな立場か知っているはずだよね?」
「ぁ…永遠の時を…生き続ける者」
「そう。代理戦争以降、僕と復讐者達は装置に火を灯し続ける永遠の存在となった。
まぁ僕は君と違って自らその道を選んだのだけどね」
「…………」
「さぁこれで君は永遠に独りという事はなくなった」
「っ」
ティティの目が見開く。間を置かずバミューダが
「次だ。実はとある仕事が出来る人材を探しているんだ。
僕はトゥリニセッテを守るのに忙しくてなかなか装置から離れる事が出来ない。
でも適した人間がずっと見つからなくて困っていたんだ」
「……それは…?」
「次代の復讐者…裏世界の掟の番人だよ」
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