彼は貴方のものじゃない
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ホリデーも半ばを過ぎ、ユウもシルバーとの同棲生活に慣れ始めた。あれほど冷たく感じた風も、もうじき春が来るらしく草木の香りを乗せてくる。彼女がいた世界も光から音、気温の順で春になると言うが、ここでは何より先に風が春を教えてくれるようだ。
日の光が柔らかく暖かい。外へ出て大きく背伸びをしたユウは天にまで届くように両腕を伸ばす。吸い込んだ空気は冷たいのに、雪解けから目覚めた草や土の匂いが鼻腔をくすぐった。
「おはよう。ユウ」
一瞬で振り返ったユウは、いつの間にかリリアに背後を取られていることに背筋が凍るような思いをした。セベクがどうあがいてもリリアに背後を取られるという気持ちが少しだけ分かったような気がしている彼女に、彼はフードを被りながら手を差し出した。
「お主もここの生活にそろそろ慣れたじゃろう。シルバーの様子を見に城内へ来んか?」
思いもよらぬ提案にユウは頬を紅潮させて言った。
「いいんですか?!」
「ああ、ここに証文もあるぞ」
「ぜひ、行きたいです!」
よしよしと喜んでいるユウを確認したリリアは、すぐさま支度をしに家の中へ戻る彼女を微笑ましく見ていた。なにせ、城下町を自由に歩くことはできたが、彼女は城内を歩くことを許されていなかった。人間の匂いを取るという条件を守っているのにも関わらず、頭の固い保守派が拒み続けたためである。何度もかけあい、マレウスの助力を得てようやく彼女を歩かせることが可能になった。現領主も彼女の入城を構わないと言っているのだから認めればいいものをあの手この手でコネクションと法律を使い、邪魔ばかり仕掛けるので、さすがに骨が折れた。
しかし、彼女にそんな汚らしい城の中をさらけ出すつもりはない。何せいつかはマレウスが出すと決めている膿だ。膿を出し切った暁には、城内も好きに歩かせてやろうと彼は決めていた。
ユウは普段着ているものよりも少しだけ上等な服を着て、出てきた。普段は防寒や遠出に便利な恰好で可愛げはあまりなかったので、こうしてユウがおしゃれをするのは久しぶりだった。
城内まで歩いて行こうとリリアが気遣ってくれたおかげで、彼女は門番の巨人たちを見ることができた。リリアが何やら用向きを話しているようだが、生憎妖精言語は分からない。見上げているだけで首が痛くなるが、大事な友人や恋人のいる場所を守ってくれている者たちだ。ユウは籠に入れていた花を二輪だけ取り、彼らに差し出した。
「いつもお疲れ様です。お城を守ってくれて、ありがとうございます」
そう微笑んだ彼女に、巨人たちはまんざらでもないように手のひらを差し出して受け取った。小さな花を宝石のようにまじまじと見つめている彼らに満足したユウをリリアは末恐ろしい娘じゃと呟いて、城内へ進んだ。
日の光が柔らかく暖かい。外へ出て大きく背伸びをしたユウは天にまで届くように両腕を伸ばす。吸い込んだ空気は冷たいのに、雪解けから目覚めた草や土の匂いが鼻腔をくすぐった。
「おはよう。ユウ」
一瞬で振り返ったユウは、いつの間にかリリアに背後を取られていることに背筋が凍るような思いをした。セベクがどうあがいてもリリアに背後を取られるという気持ちが少しだけ分かったような気がしている彼女に、彼はフードを被りながら手を差し出した。
「お主もここの生活にそろそろ慣れたじゃろう。シルバーの様子を見に城内へ来んか?」
思いもよらぬ提案にユウは頬を紅潮させて言った。
「いいんですか?!」
「ああ、ここに証文もあるぞ」
「ぜひ、行きたいです!」
よしよしと喜んでいるユウを確認したリリアは、すぐさま支度をしに家の中へ戻る彼女を微笑ましく見ていた。なにせ、城下町を自由に歩くことはできたが、彼女は城内を歩くことを許されていなかった。人間の匂いを取るという条件を守っているのにも関わらず、頭の固い保守派が拒み続けたためである。何度もかけあい、マレウスの助力を得てようやく彼女を歩かせることが可能になった。現領主も彼女の入城を構わないと言っているのだから認めればいいものをあの手この手でコネクションと法律を使い、邪魔ばかり仕掛けるので、さすがに骨が折れた。
しかし、彼女にそんな汚らしい城の中をさらけ出すつもりはない。何せいつかはマレウスが出すと決めている膿だ。膿を出し切った暁には、城内も好きに歩かせてやろうと彼は決めていた。
ユウは普段着ているものよりも少しだけ上等な服を着て、出てきた。普段は防寒や遠出に便利な恰好で可愛げはあまりなかったので、こうしてユウがおしゃれをするのは久しぶりだった。
城内まで歩いて行こうとリリアが気遣ってくれたおかげで、彼女は門番の巨人たちを見ることができた。リリアが何やら用向きを話しているようだが、生憎妖精言語は分からない。見上げているだけで首が痛くなるが、大事な友人や恋人のいる場所を守ってくれている者たちだ。ユウは籠に入れていた花を二輪だけ取り、彼らに差し出した。
「いつもお疲れ様です。お城を守ってくれて、ありがとうございます」
そう微笑んだ彼女に、巨人たちはまんざらでもないように手のひらを差し出して受け取った。小さな花を宝石のようにまじまじと見つめている彼らに満足したユウをリリアは末恐ろしい娘じゃと呟いて、城内へ進んだ。