翌日、ユウはシルバーの腕の中で目が覚めた。というのも、こんこんというノックに起こされたのだ。ユウは眠るシルバーの腕から抜け出し、玄関へ出る。そこには昨日の酒の寮など微塵も感じさせないリリアがいた。彼は上下とも彼女にしては大きいサイズの衣服を身につけているユウを見て、くすくす笑った。
「なんじゃ。お主ら。早速、やきもちか」
　彼女はああ……と日光にさらされた首筋を擦る。そこにはいくつもの真っ赤な花弁が散っていた。乙女の柔肌にこれほど跡を残すとはよっぽどなんじゃな、とリリアは心の中で思うだけにした。ユウは眉を下げて、大きなため息を吐く。
「先輩にすごく怒られました……」
「くふふ。ああ見えてシルバーも男、お主もよう弁えんと閉じ込められかねんぞ」
　これはあやつの父親としてのアドバイスじゃからな！　と念のためにリリアは腕を組んで言っておく。ユウはそれは昨日のうちに聞かせてほしかった、とまんざらでもなさそうに力なく笑った。