手荒い歓迎
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彼らから教えてもらったシルバーの幼い頃の話はユウにとってどれも愛らしく、そして素晴らしい物語のように感じた。またどれも楽しそうに聞くユウの反応に、騎士団の男たちはついついシルバーが話してほしくないことまで口走ってしまった。シルバーはやめてほしいと顔を顰めるが、ユウは何でも「素敵です!」と好印象しか見せないので、シルバーはもはや怖いものなしと言った調子だった。
「どうだい? 今までの話で、シルバーの意外な部分とかある?」
「好きなところでもいいぜ」
ユウは手元のお茶を飲みながら、隣にいる彼の顔を覗き込めない恥ずかしさで頬を赤らめた。
「……シルバー先輩は、今も昔も変わらず優しいです。それこそ、私が好きになってから、今までずっと真っ直ぐでひたむきで、努力家で、全部好きなんです」
うっとりと微笑むユウの様子に、騎士団の男たちはほう、とため息を吐いた。恋をして花開く乙女の愛らしさに敵う者はないとどこの詩人が言っていただろうか、と誰かが呟いた。
「……これはシルバー、上玉をもらったなぁ」
「すごい可愛い顔するから、攫いたくなる」
「俺の恋人です。絶対に渡しません」
ユウを左腕で庇い、背中に隠そうとするシルバーに、周囲の男たちははやし立てた。
「シルバーが一人前にヤキモチ焼いてる!」
「これは面白いもんが見れた!」
ユウはシルバーがまたもや面白い者扱いされているのが気に食わず、シルバーの腕を押しのけて前へ出た。
「先輩は見世物じゃありません!」
その瞬間、酒場の雰囲気が変わった。重々しい空気と城を満たす魔力が「グーン」に流れ込み、その場にいた騎士団はリリア以外全員敬礼をした。
「偉大なるマレウス・ドラコニア様に、敬礼!」
こつこつと高い音をヒールで立てながら降りてくるマレウスに対して、緊張感のかけらもなくくつろいでいるのはリリアとユウくらいだった。それもユウは現れた彼に対して全力で両手を振った。
「ツノ太郎ーいらっしゃい」
彼女のぶしつけともとれる愛称に、その場にいた騎士団一同はざわついた。しかし、マレウスは大して気にしたふうもなく、ユウのテーブルの前で足を止め、笑った。
「人の子よ。楽しんでいるか?」
「とっても! リリア先輩なんて、もう何樽空けたことやら」
彼女が視線を向けた先では、ぐうぐうと寝ている兵士とその中心でまだ酒を飲んでいるリリアがいた。マレウスが呆れたようにため息を吐く。
「また酒の飲み比べか」
「こればっかりはわしの方が上手じゃからの」
酒瓶を振ったリリアにマレウスはやれやれと右手を振った。
「まったく、僕の護衛だぞ。大切に扱え」
「分かっておる。じゃから、二日酔いせん程度に眠らせたんじゃ」
「それ、ただリリア先輩が飲んでるだけじゃ……」
「まあいい。ユウ、楽しんだなら、また話を聞かせてくれ」
微笑んだマレウスの寂しそうな顔に、ユウはにっこりと笑った。
「今度は、ツノ太郎も一緒にお茶しようね」
マレウスはぎょっと目を丸くすると、次の瞬間には腹がねじれん勢いで笑いだした。今まで見たこともない彼の子どもらしい笑顔に騎士団の誰もが目を瞠った。
「ああ。そうだな。お前の招待を受けて、今度は邪魔させてもらうとしよう。おやすみ、ユウ」
「はーい。ツノ太郎もおやすみなさい~」
手を振ったユウに、マレウスはそっと微笑むと、転送魔法でその場を去った。大分騒ぎ疲れたユウもこっくりこっくりと舟をこぎ始める。シルバーは彼女を姫抱きすると、そのまま立ちあがった。
彼を見た騎士の一人が、不満げに口を尖らせた。
「おいおい、主役がもう寝るのか? まだまだこれからだぜ?」
「彼女を差し置いて楽しめませんから。おやすみなさい」
そう言ってそのまま歩いて去っていくシルバーに、有無を言わせない何かがあったのを男たちはひしひしと感じた。男になったんだなぁ、としみじみ呟く彼らにリリアは言った。
「いいや。あやつは昔からそうじゃぞ」
大切なものをどう優先させるべきか弁えている立派な男じゃ、と言えば、隣にいた男に親バカと言われた。リリアは迷いなく彼の顔にビールを吹っ掛ける。
「いい度胸じゃ。わしと酒で勝負せい」
その男が翌日ゴミ捨て場で目覚めたのはまた別の話。
「どうだい? 今までの話で、シルバーの意外な部分とかある?」
「好きなところでもいいぜ」
ユウは手元のお茶を飲みながら、隣にいる彼の顔を覗き込めない恥ずかしさで頬を赤らめた。
「……シルバー先輩は、今も昔も変わらず優しいです。それこそ、私が好きになってから、今までずっと真っ直ぐでひたむきで、努力家で、全部好きなんです」
うっとりと微笑むユウの様子に、騎士団の男たちはほう、とため息を吐いた。恋をして花開く乙女の愛らしさに敵う者はないとどこの詩人が言っていただろうか、と誰かが呟いた。
「……これはシルバー、上玉をもらったなぁ」
「すごい可愛い顔するから、攫いたくなる」
「俺の恋人です。絶対に渡しません」
ユウを左腕で庇い、背中に隠そうとするシルバーに、周囲の男たちははやし立てた。
「シルバーが一人前にヤキモチ焼いてる!」
「これは面白いもんが見れた!」
ユウはシルバーがまたもや面白い者扱いされているのが気に食わず、シルバーの腕を押しのけて前へ出た。
「先輩は見世物じゃありません!」
その瞬間、酒場の雰囲気が変わった。重々しい空気と城を満たす魔力が「グーン」に流れ込み、その場にいた騎士団はリリア以外全員敬礼をした。
「偉大なるマレウス・ドラコニア様に、敬礼!」
こつこつと高い音をヒールで立てながら降りてくるマレウスに対して、緊張感のかけらもなくくつろいでいるのはリリアとユウくらいだった。それもユウは現れた彼に対して全力で両手を振った。
「ツノ太郎ーいらっしゃい」
彼女のぶしつけともとれる愛称に、その場にいた騎士団一同はざわついた。しかし、マレウスは大して気にしたふうもなく、ユウのテーブルの前で足を止め、笑った。
「人の子よ。楽しんでいるか?」
「とっても! リリア先輩なんて、もう何樽空けたことやら」
彼女が視線を向けた先では、ぐうぐうと寝ている兵士とその中心でまだ酒を飲んでいるリリアがいた。マレウスが呆れたようにため息を吐く。
「また酒の飲み比べか」
「こればっかりはわしの方が上手じゃからの」
酒瓶を振ったリリアにマレウスはやれやれと右手を振った。
「まったく、僕の護衛だぞ。大切に扱え」
「分かっておる。じゃから、二日酔いせん程度に眠らせたんじゃ」
「それ、ただリリア先輩が飲んでるだけじゃ……」
「まあいい。ユウ、楽しんだなら、また話を聞かせてくれ」
微笑んだマレウスの寂しそうな顔に、ユウはにっこりと笑った。
「今度は、ツノ太郎も一緒にお茶しようね」
マレウスはぎょっと目を丸くすると、次の瞬間には腹がねじれん勢いで笑いだした。今まで見たこともない彼の子どもらしい笑顔に騎士団の誰もが目を瞠った。
「ああ。そうだな。お前の招待を受けて、今度は邪魔させてもらうとしよう。おやすみ、ユウ」
「はーい。ツノ太郎もおやすみなさい~」
手を振ったユウに、マレウスはそっと微笑むと、転送魔法でその場を去った。大分騒ぎ疲れたユウもこっくりこっくりと舟をこぎ始める。シルバーは彼女を姫抱きすると、そのまま立ちあがった。
彼を見た騎士の一人が、不満げに口を尖らせた。
「おいおい、主役がもう寝るのか? まだまだこれからだぜ?」
「彼女を差し置いて楽しめませんから。おやすみなさい」
そう言ってそのまま歩いて去っていくシルバーに、有無を言わせない何かがあったのを男たちはひしひしと感じた。男になったんだなぁ、としみじみ呟く彼らにリリアは言った。
「いいや。あやつは昔からそうじゃぞ」
大切なものをどう優先させるべきか弁えている立派な男じゃ、と言えば、隣にいた男に親バカと言われた。リリアは迷いなく彼の顔にビールを吹っ掛ける。
「いい度胸じゃ。わしと酒で勝負せい」
その男が翌日ゴミ捨て場で目覚めたのはまた別の話。