魔法石は守護する
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市場には有名な土産屋がある。そこには茨の谷のものでも見たこともないような品々や工芸品、時には次期領主がお気に入りだと言うガーゴイルすら置いているらしい。さてグリムにお土産を約束されたユウは、ピースサインを作って店主の鼻先に突き付けた。
「茨の谷の糸紡ぎストラップ二つ!」
「あいよ。嬢ちゃん、なかなかいいもん身につけているねえ」
店主は注文された品を色紙で包みながら、彼女の胸元に輝く魔法石に目をつけた。紫の色を宿しながら、時々緑色に光るそれは簡素な石座に飾られ、金のチェーンで彼女の首元に下げられている。
ユウはシルバーからの贈り物を褒められてまんざらでもなさそうに笑っていた。その周囲には花が咲きそうな勢いだ。
「えへへ。恋人に作ってもらったんです」
「さぞかし。いい御人なんだろうねえ」
「はい! それはもう、私には勿体ないくらいです」
明るい笑顔ではきはきと言うユウのいかにも嬉しそうな様子に、周囲の妖精たちも思わず微笑んでしまう。店主もあまりの熱愛っぷりに、店の奥にしまっていたものをユウに差し出した。
「はは! そんなお熱い二人に俺から贈りもんだ」
店主の厚い手の上には、彼女の小指ほどの大きさしかない真っ黒な棒が乗っていた。ユウはそれを指さし、戸惑いの視線を店主に向ける。
「なんですか、これ?」
「笛さ」
「笛……」
「ああ。まぁ、わしも鳴らしたことはないんじゃが、お土産程度に持っていけ」
そう手を突き出されたユウは笛を受け取り、お辞儀をした。人間というだけで蔑まれやすいと聞いていたが、なかなか人情に溢れた部分もあって安堵した。
「ありがとうございます!」
「いいってことよ。恋人と末永くな」
はーい! と言って手を振って立ち去った彼女に、店主も笑顔で手を振り返す。傍にいたワニ頭の客が店主に耳打ちした。
「なんだい? あの子、あんたのお気に入りかい?」
「馬鹿言え。ありゃあ、俺からの餞別だ。ああ見えてあのお嬢さんはシル坊の許嫁だ」
「シル坊!? あの居眠りの?」
ワニが口をぱっくり開けると、店主は小刻みに震える手を両手で擦っていた。やれやれと呆れたように笑った店主は彼女のいなくなった方へと視線を向ける。
「ああ。あの子の魔力を確かに感じた」
そう呟いた店主の脳裏で、彼女の胸元で光るペンダントが煌いた。あまりに美しいそれは、髪一筋でも危害を加えれば命はないと直感するほどの圧でもって彼女を守っている。
「ワニ、お前、あの子に手を出すなよ。シル坊の怒りを買いたくなかったらな」
「は、買うのはお前の工芸品で手いっぱいだっての」
そりゃあいい、と笑った店主は、手ぶらで帰ろうとするワニの襟首を掴んだ。
「茨の谷の糸紡ぎストラップ二つ!」
「あいよ。嬢ちゃん、なかなかいいもん身につけているねえ」
店主は注文された品を色紙で包みながら、彼女の胸元に輝く魔法石に目をつけた。紫の色を宿しながら、時々緑色に光るそれは簡素な石座に飾られ、金のチェーンで彼女の首元に下げられている。
ユウはシルバーからの贈り物を褒められてまんざらでもなさそうに笑っていた。その周囲には花が咲きそうな勢いだ。
「えへへ。恋人に作ってもらったんです」
「さぞかし。いい御人なんだろうねえ」
「はい! それはもう、私には勿体ないくらいです」
明るい笑顔ではきはきと言うユウのいかにも嬉しそうな様子に、周囲の妖精たちも思わず微笑んでしまう。店主もあまりの熱愛っぷりに、店の奥にしまっていたものをユウに差し出した。
「はは! そんなお熱い二人に俺から贈りもんだ」
店主の厚い手の上には、彼女の小指ほどの大きさしかない真っ黒な棒が乗っていた。ユウはそれを指さし、戸惑いの視線を店主に向ける。
「なんですか、これ?」
「笛さ」
「笛……」
「ああ。まぁ、わしも鳴らしたことはないんじゃが、お土産程度に持っていけ」
そう手を突き出されたユウは笛を受け取り、お辞儀をした。人間というだけで蔑まれやすいと聞いていたが、なかなか人情に溢れた部分もあって安堵した。
「ありがとうございます!」
「いいってことよ。恋人と末永くな」
はーい! と言って手を振って立ち去った彼女に、店主も笑顔で手を振り返す。傍にいたワニ頭の客が店主に耳打ちした。
「なんだい? あの子、あんたのお気に入りかい?」
「馬鹿言え。ありゃあ、俺からの餞別だ。ああ見えてあのお嬢さんはシル坊の許嫁だ」
「シル坊!? あの居眠りの?」
ワニが口をぱっくり開けると、店主は小刻みに震える手を両手で擦っていた。やれやれと呆れたように笑った店主は彼女のいなくなった方へと視線を向ける。
「ああ。あの子の魔力を確かに感じた」
そう呟いた店主の脳裏で、彼女の胸元で光るペンダントが煌いた。あまりに美しいそれは、髪一筋でも危害を加えれば命はないと直感するほどの圧でもって彼女を守っている。
「ワニ、お前、あの子に手を出すなよ。シル坊の怒りを買いたくなかったらな」
「は、買うのはお前の工芸品で手いっぱいだっての」
そりゃあいい、と笑った店主は、手ぶらで帰ろうとするワニの襟首を掴んだ。