茨の道中
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闇の鏡を抜けた先から吹き込む風が、彼女の頬を冷やした。広い雪原とそれを取り囲む真っ黒な森が視界に入ると、ユウが踏みしめた新雪は甲高い音を立てて沈む。見慣れないそこが興味深くて彼女が立っていると、背後から彼女の肩を抱く腕が現れた。
「そこでは邪魔になる」
「あ、すいません」
シルバーの腕にひかれ、ユウは鏡が下ろしてくれた地点から少し離れたところから眺めていた。何やらホリデー用の荷物が出てきてはセベクやシルバーが傍につけてあった馬車に載せていく。手伝おうかとも思ったが、シルバーが馬たちの面倒を見ていてくれというので大人しく馬とコミュニケーションをとっていた。
最後の積み荷であるユウの荷物が載ると、閉じかけた移動魔法の渦からリリアが現れた。肩が凝ったわいとぼやきながら出てきたリリアはこれは愛らしいポンチョにイヤーマフラーをしている。彼はユウを見つけると、ほお! と目を輝かせた。
「しっかり防寒してきたんじゃな! 偉い偉い! それになかなかに愛らしいコートじゃ!」
「ありがとうございます。リリア先輩も素敵なお召し物ですね」
くふふ、そうじゃろそうじゃろとくるくる一回転して見せたリリアは、ユウの身につけているそのコートが先日シルバーが頭を悩ませながら下町で買いに行ったものだと知っていた。シルバーは清楚が好みなのだなと勝手に分析をし、彼はほくそ笑む。リリアはわしからも贈り物をやろうと言って、実践魔法で出したマフラーをユウの首に巻いた。
「どうじゃ、あったかいじゃろ」
「ふふ。ありがとうございます」
ニコニコと微笑んだ彼女の反応に満足したリリアは、馬車に乗るよう言った。ユウはそれに戸惑うような視線を向ける。というのも、積み上げた荷物のおかげで馬車には座るスペースは一人分しかない。
「でも……皆さんを差し置いて座るなんて」
「構わん。わしらはお主に比べ体力があるからな」
リリアのあっけらかんとした正論にユウはもはや反論する余地を失くした。性別だけでなく、リリアに至ってはユウとは種族が違う。鍛錬をつけられたとはいえ、体力においてはこの四人の中で最もないのだと彼女は痛感した。罪悪感で渋面を作っているユウはうなだれた。
「うう……ごもっともです」
「わしらは飛行術で向かう。お主はこの手綱をしっかりと掴んでおれ」
そう言われ座らされた御者の景色はなかなかに壮観だ。普段の馬に乗る感覚とは全く違うことに不安を覚えたユウが、大丈夫でしょうか? とすでに浮き始めたリリアに尋ねる。それに答えたのはシルバーだった。
「先ほど馬とコミュニケーションを取らせたのはそのためだ。まだ会って日も浅いだろうが、この馬たちは訓練されている。お前を振り落とすような真似は万が一の時くらいだ」
シルバーがそういうなら、と表情を明るくしたユウは、分かりましたと笑う。手綱を握る手をそっと分厚い手袋が握った。
「お前なら大丈夫だ」
信頼を真っ直ぐに向けてくるオーロラシルバーの瞳に勇気をもらったユウは、しっかりと頷いた。リリアがその情景を微笑ましく見ながら言った。
「仲睦まじいのは良いが、さっさと行くぞ。天候が変わらんうちにな」
急いで手を離したシルバーは、箒にまたがりそのまま上昇していく。ユウも頬に集まる熱で撫でてくる冷気が心地よくなるのを感じながら、馬車を動かし始めた。
「そこでは邪魔になる」
「あ、すいません」
シルバーの腕にひかれ、ユウは鏡が下ろしてくれた地点から少し離れたところから眺めていた。何やらホリデー用の荷物が出てきてはセベクやシルバーが傍につけてあった馬車に載せていく。手伝おうかとも思ったが、シルバーが馬たちの面倒を見ていてくれというので大人しく馬とコミュニケーションをとっていた。
最後の積み荷であるユウの荷物が載ると、閉じかけた移動魔法の渦からリリアが現れた。肩が凝ったわいとぼやきながら出てきたリリアはこれは愛らしいポンチョにイヤーマフラーをしている。彼はユウを見つけると、ほお! と目を輝かせた。
「しっかり防寒してきたんじゃな! 偉い偉い! それになかなかに愛らしいコートじゃ!」
「ありがとうございます。リリア先輩も素敵なお召し物ですね」
くふふ、そうじゃろそうじゃろとくるくる一回転して見せたリリアは、ユウの身につけているそのコートが先日シルバーが頭を悩ませながら下町で買いに行ったものだと知っていた。シルバーは清楚が好みなのだなと勝手に分析をし、彼はほくそ笑む。リリアはわしからも贈り物をやろうと言って、実践魔法で出したマフラーをユウの首に巻いた。
「どうじゃ、あったかいじゃろ」
「ふふ。ありがとうございます」
ニコニコと微笑んだ彼女の反応に満足したリリアは、馬車に乗るよう言った。ユウはそれに戸惑うような視線を向ける。というのも、積み上げた荷物のおかげで馬車には座るスペースは一人分しかない。
「でも……皆さんを差し置いて座るなんて」
「構わん。わしらはお主に比べ体力があるからな」
リリアのあっけらかんとした正論にユウはもはや反論する余地を失くした。性別だけでなく、リリアに至ってはユウとは種族が違う。鍛錬をつけられたとはいえ、体力においてはこの四人の中で最もないのだと彼女は痛感した。罪悪感で渋面を作っているユウはうなだれた。
「うう……ごもっともです」
「わしらは飛行術で向かう。お主はこの手綱をしっかりと掴んでおれ」
そう言われ座らされた御者の景色はなかなかに壮観だ。普段の馬に乗る感覚とは全く違うことに不安を覚えたユウが、大丈夫でしょうか? とすでに浮き始めたリリアに尋ねる。それに答えたのはシルバーだった。
「先ほど馬とコミュニケーションを取らせたのはそのためだ。まだ会って日も浅いだろうが、この馬たちは訓練されている。お前を振り落とすような真似は万が一の時くらいだ」
シルバーがそういうなら、と表情を明るくしたユウは、分かりましたと笑う。手綱を握る手をそっと分厚い手袋が握った。
「お前なら大丈夫だ」
信頼を真っ直ぐに向けてくるオーロラシルバーの瞳に勇気をもらったユウは、しっかりと頷いた。リリアがその情景を微笑ましく見ながら言った。
「仲睦まじいのは良いが、さっさと行くぞ。天候が変わらんうちにな」
急いで手を離したシルバーは、箒にまたがりそのまま上昇していく。ユウも頬に集まる熱で撫でてくる冷気が心地よくなるのを感じながら、馬車を動かし始めた。