貴方に近づきたくて
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セベクは「若様」に夢中だ。でも私も負けないくらい夢中だ。だって、今日も銀の人を思いながら起きたし、歯磨きだってしたし、髪型も香りもばっちりだ。体操着が乱れていないか鏡で確かめて、朝日が昇り始めた外に出る。
「気を付けて行ってらっしゃい」
ゴーストに手を振られ、私は手を振り返して走り出した。今日は久しぶりにセベクが模擬戦闘をしてくれるのだから、気合が入る。頬を嬲る早朝の冷たい風は、熱を上げた体に心地よかった。
すっかりセベクの若様に対する熱に意気投合した私は、セベクから若様を慕うならばしておかなければならない鍛錬を教えてもらっていた。
例えば、剣術。正直したことなんかなかったけど、セベクが一から稽古をつけてやると意気込んでくれた。朝のランニングの後は筋トレと素振り100回、放課後はセベクが所属する馬術部がない日だけ直々に稽古をつけてくれた。そのおかげで、筋が良くなったと褒められた。
なんで剣術を仕込んでもらっているのか分からないけど、ここ最近はオーバーブロットのこともあるし、何がこの学園で起きるか分かったものじゃない。魔法が使えないせいで一般生徒から喧嘩を売られても逃げるしかできないのも、もう嫌だ。
セベクは若様の警護につくくらいの技量の持ち主だ。ここで剣術を学んでおけばいざ自分の立場が危うくなった時に、何とかなるかもしれない。そんな保険の意味もあって、半分はもはや日課として鍛錬を重ねて早一か月が経っていた。
珍しく放課後に鏡舎の前に制服で来るようにと言われ、エースたちと別れてから向かうとセベクは私の姿を見るなり、遅いぞとぼやいた。ごめんって。わりとうちのクラスから鏡舎は遠いんだから許してほしい。
「今日は剣術しないの?」
「ああ。剣術はしない」
まじか。せっかく走って模擬戦闘のシュミレーションもしてきたのに。これは悲しいけれど、セベクの言うことにはついて行くつもりだ。持ってきた模造刀は背負っていくことにして、何をするのか耳を傾ける。
「今回は剣を振るうだけでなく、若様への理解を深めたいと思う」
おお! そういうのとっても好き!
「待ってました!」
そう言って拍手をすると、セベクはご満悦の表情で腕を組んだ。
「そうだろう。普段の鍛錬だけではなく、知識も必要だからな。若様の威厳を保つためにも従者として必要なことだ」
なるほど! 強いだけじゃ傍にいるのはだめなんだ。知識も力も兼ね備えてこその慕うものとしての資格が与えられる。なんだかもっとやる気が出てきたぞ。
「セベク……! 私も見習うね!」
「ふ、向上心があるのはいいが、少し落ち着け。焦りは禁物だ。まずは若様の一族についての歴史が載っている『ドラコニア家の歴史』を読むのがいいだろう」
「おお、若様の本」
「そうだ。まずは同志としてここは押さえておけよ」
「了解!」
威厳マシマシなセベクの言葉に敬礼をして返す。
シルバー先輩の家族って本になってるんだ! すごーい! 流石若様だなぁ!
そうなれば鏡舎からそう離れていない図書館で借りるのかな。最近は稽古漬けだったから行ってないし、楽しみだなぁ。
「じゃあ早速図書館に」
「いや、図書館の方は全くと言ってもいい程保存状態が良くない! だから俺が持っている冊子を渡そう。もちろん、第三者が閲覧するためのな」
びりびりと私の中で何かが満たされていくのを感じる。
この感覚を私は覚えている。初めて友人に本を借りようとした時、一番保存状態がいい布教用の漫画を貸してもらった時の感動だ。ああ、そうだ。セベクって若様のオタクなんだ! 同担のよしみとしてついて行かないわけにはいかない。
「……セベク! 君ってやつは!」
感謝の言葉がこぼれ出てこないほどつまる思いに、セベクは掌を突き出して余裕の笑みを浮かべた。
「ふ、なに。お前も精進するなら、これくらいの助力はできる」
「ありがとう!」
今から向かうのはディアソムニア寮! きっと、そこにはシルバー先輩もいるはず! 会えるかなぁ……。できたら、会いたいなぁ。お礼も言いそびれてるし、会ったら絶対に言わなくちゃ。
はやる胸を押さえ、セベクの背中について行った。
「気を付けて行ってらっしゃい」
ゴーストに手を振られ、私は手を振り返して走り出した。今日は久しぶりにセベクが模擬戦闘をしてくれるのだから、気合が入る。頬を嬲る早朝の冷たい風は、熱を上げた体に心地よかった。
すっかりセベクの若様に対する熱に意気投合した私は、セベクから若様を慕うならばしておかなければならない鍛錬を教えてもらっていた。
例えば、剣術。正直したことなんかなかったけど、セベクが一から稽古をつけてやると意気込んでくれた。朝のランニングの後は筋トレと素振り100回、放課後はセベクが所属する馬術部がない日だけ直々に稽古をつけてくれた。そのおかげで、筋が良くなったと褒められた。
なんで剣術を仕込んでもらっているのか分からないけど、ここ最近はオーバーブロットのこともあるし、何がこの学園で起きるか分かったものじゃない。魔法が使えないせいで一般生徒から喧嘩を売られても逃げるしかできないのも、もう嫌だ。
セベクは若様の警護につくくらいの技量の持ち主だ。ここで剣術を学んでおけばいざ自分の立場が危うくなった時に、何とかなるかもしれない。そんな保険の意味もあって、半分はもはや日課として鍛錬を重ねて早一か月が経っていた。
珍しく放課後に鏡舎の前に制服で来るようにと言われ、エースたちと別れてから向かうとセベクは私の姿を見るなり、遅いぞとぼやいた。ごめんって。わりとうちのクラスから鏡舎は遠いんだから許してほしい。
「今日は剣術しないの?」
「ああ。剣術はしない」
まじか。せっかく走って模擬戦闘のシュミレーションもしてきたのに。これは悲しいけれど、セベクの言うことにはついて行くつもりだ。持ってきた模造刀は背負っていくことにして、何をするのか耳を傾ける。
「今回は剣を振るうだけでなく、若様への理解を深めたいと思う」
おお! そういうのとっても好き!
「待ってました!」
そう言って拍手をすると、セベクはご満悦の表情で腕を組んだ。
「そうだろう。普段の鍛錬だけではなく、知識も必要だからな。若様の威厳を保つためにも従者として必要なことだ」
なるほど! 強いだけじゃ傍にいるのはだめなんだ。知識も力も兼ね備えてこその慕うものとしての資格が与えられる。なんだかもっとやる気が出てきたぞ。
「セベク……! 私も見習うね!」
「ふ、向上心があるのはいいが、少し落ち着け。焦りは禁物だ。まずは若様の一族についての歴史が載っている『ドラコニア家の歴史』を読むのがいいだろう」
「おお、若様の本」
「そうだ。まずは同志としてここは押さえておけよ」
「了解!」
威厳マシマシなセベクの言葉に敬礼をして返す。
シルバー先輩の家族って本になってるんだ! すごーい! 流石若様だなぁ!
そうなれば鏡舎からそう離れていない図書館で借りるのかな。最近は稽古漬けだったから行ってないし、楽しみだなぁ。
「じゃあ早速図書館に」
「いや、図書館の方は全くと言ってもいい程保存状態が良くない! だから俺が持っている冊子を渡そう。もちろん、第三者が閲覧するためのな」
びりびりと私の中で何かが満たされていくのを感じる。
この感覚を私は覚えている。初めて友人に本を借りようとした時、一番保存状態がいい布教用の漫画を貸してもらった時の感動だ。ああ、そうだ。セベクって若様のオタクなんだ! 同担のよしみとしてついて行かないわけにはいかない。
「……セベク! 君ってやつは!」
感謝の言葉がこぼれ出てこないほどつまる思いに、セベクは掌を突き出して余裕の笑みを浮かべた。
「ふ、なに。お前も精進するなら、これくらいの助力はできる」
「ありがとう!」
今から向かうのはディアソムニア寮! きっと、そこにはシルバー先輩もいるはず! 会えるかなぁ……。できたら、会いたいなぁ。お礼も言いそびれてるし、会ったら絶対に言わなくちゃ。
はやる胸を押さえ、セベクの背中について行った。