銀
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シルバーは音遮断の魔法を解き、二階へ降りると、ソファで寝ころんでいたセベクが起き上がっていた。
「セベク、無事だったか」
「ううっ……一瞬で口の中で爆発が起きて、僕は……」
頭を押さえているセベクはまだ何が起こったのかよく分かっていないようだ。シルバーは、起き上がっている彼の前に水を置いた。
「親父殿の料理を口にしたんだ、無理をするな」
「そうさせてもらう」
珍しく反論しないあたり、相当のダメージを食らったのだろう。毎日こうも素直であれば馬は合うのだろうが、残念ながら二人とも護衛の方針からして正反対だ。セベクの気分も元に戻れば再び口論をするだろう。
シルバーが馬たちの世話をするために実践魔法で体操着に着替えると、セベクが不思議そうに彼を見た。
「シルバー。何をしているんだ」
「ああ、今から銀の様子を見に行こうかと。ユウが病気で出られないからな」
「銀……ああ、ユウがお前の名前をもじってつけた馬か」
聞き捨てならないことを聞いたシルバーは、セベクを見た。
「どういうことだ?」
「知らないのか? あの馬が来た時、ユウはいつも世話になっているからと、お前の名前を自分の国で使われていた言葉にしてつけたんだ。もっと長く、若様を褒めたたえる名前にすればよいものを。あまりに楽しそうに呼ぶから、もう僕は何も言わん」
ユウが自分の名前を元の世界の言葉にしたうえで馬に名付けている。そんなことが息を忘れるほどの衝撃と喜びをもたらした。しかし、セベクからすれば一旦停止のボタンでも押されたロボットのように静止しているシルバーがそこにいた。
「シルバー? 目を開けながら寝るんじゃない」
はっとセベクの言葉に意識を取り戻したシルバーはセベクに背を向け、玄関へと歩き出した。
「寝てない。今、厩舎に行ってくる」
こんなだらしない顔を見られては、何か言われるかもしれない。頬が赤くなったシルバーは談話室を出る前に言った。
「ここの留守を頼む」
セベクは普段シルバーが絶対にしてこないような頼みごとをされた衝撃で、頭痛が引いた。
*
厩舎は雨のせいで馬たちの匂いが立ち込めている。その中でひときわ白の毛並みが美しい馬がいた。
「……銀」
シルバーが呼びかけると、銀はブルルと鼻を鳴らし、シルバーに顔を寄せた。シルバーもその頬を優しく叩き、撫でた。
「そうか。お前は俺の名前を付けられたのか」
銀はシルバーの頭に頬を擦り付けてくる。動物言語学を学んでいるシルバーは、銀が雌であることとユウのことをとても気に入っているという話を聞かされた。
『貴方はユウのこと好き?』
そう真っ直ぐな瞳で問われ、シルバーはしっかりと頷いた。
「ああ。俺もユウが好きだ」
苦笑したシルバーに銀はそうだろうと言わんばかりに、頬を擦り付けてくる。シルバーは、彼女にだけ胸の内を明かした。
「たとえ彼女が他の誰かを愛していたとしても、その気持ちは変わらない」
その言葉は、いつの間にか地面で水滴が跳ねるほど激しくなっていた雨音にかき消された。
「セベク、無事だったか」
「ううっ……一瞬で口の中で爆発が起きて、僕は……」
頭を押さえているセベクはまだ何が起こったのかよく分かっていないようだ。シルバーは、起き上がっている彼の前に水を置いた。
「親父殿の料理を口にしたんだ、無理をするな」
「そうさせてもらう」
珍しく反論しないあたり、相当のダメージを食らったのだろう。毎日こうも素直であれば馬は合うのだろうが、残念ながら二人とも護衛の方針からして正反対だ。セベクの気分も元に戻れば再び口論をするだろう。
シルバーが馬たちの世話をするために実践魔法で体操着に着替えると、セベクが不思議そうに彼を見た。
「シルバー。何をしているんだ」
「ああ、今から銀の様子を見に行こうかと。ユウが病気で出られないからな」
「銀……ああ、ユウがお前の名前をもじってつけた馬か」
聞き捨てならないことを聞いたシルバーは、セベクを見た。
「どういうことだ?」
「知らないのか? あの馬が来た時、ユウはいつも世話になっているからと、お前の名前を自分の国で使われていた言葉にしてつけたんだ。もっと長く、若様を褒めたたえる名前にすればよいものを。あまりに楽しそうに呼ぶから、もう僕は何も言わん」
ユウが自分の名前を元の世界の言葉にしたうえで馬に名付けている。そんなことが息を忘れるほどの衝撃と喜びをもたらした。しかし、セベクからすれば一旦停止のボタンでも押されたロボットのように静止しているシルバーがそこにいた。
「シルバー? 目を開けながら寝るんじゃない」
はっとセベクの言葉に意識を取り戻したシルバーはセベクに背を向け、玄関へと歩き出した。
「寝てない。今、厩舎に行ってくる」
こんなだらしない顔を見られては、何か言われるかもしれない。頬が赤くなったシルバーは談話室を出る前に言った。
「ここの留守を頼む」
セベクは普段シルバーが絶対にしてこないような頼みごとをされた衝撃で、頭痛が引いた。
*
厩舎は雨のせいで馬たちの匂いが立ち込めている。その中でひときわ白の毛並みが美しい馬がいた。
「……銀」
シルバーが呼びかけると、銀はブルルと鼻を鳴らし、シルバーに顔を寄せた。シルバーもその頬を優しく叩き、撫でた。
「そうか。お前は俺の名前を付けられたのか」
銀はシルバーの頭に頬を擦り付けてくる。動物言語学を学んでいるシルバーは、銀が雌であることとユウのことをとても気に入っているという話を聞かされた。
『貴方はユウのこと好き?』
そう真っ直ぐな瞳で問われ、シルバーはしっかりと頷いた。
「ああ。俺もユウが好きだ」
苦笑したシルバーに銀はそうだろうと言わんばかりに、頬を擦り付けてくる。シルバーは、彼女にだけ胸の内を明かした。
「たとえ彼女が他の誰かを愛していたとしても、その気持ちは変わらない」
その言葉は、いつの間にか地面で水滴が跳ねるほど激しくなっていた雨音にかき消された。