銀
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シルバーがユウの部屋に戻ってきた時、ユウは扉の傍でしゃがんでいた。思わぬ状況に驚いたシルバーはすぐさまユウの傍に膝をついた。
「ユウ! どうした」
その状態が辛いのか、彼女は膝を抱え込んでいた。シルバーを視認したユウは、安堵したのかか細くシルバーを呼んだ。
「ど……どこにいたんですか」
「談話室で少し掃除をしていた。セベクも寝ているが、気にするな」
そのままユウのベッドに連れて行こうとマジカルペンを探すと、制服の裾を掴まれる。どうした、と尋ねれば、ユウの目が薄い膜を張って涙を湛えていた。
「その、さっきから音がしなくて……なんでだろうと思ったら、鍵も開かなくて。先輩もいないから怖くて」
そう言えば遮音と施錠の魔法を解くのを忘れていたシルバーは、そのせいでユウが怯えていたことにやっと気が付いた。シルバーは先ほどまでセベクが騒ぎ、リリアが来ていたことを教えた。そのせいでそういった魔法を使わざるを得なかったんだと半ば言い訳じみた事情を話すと、ユウは安心したように笑った。
「先輩の気遣いだったんですね……。ありがとうございます」
身体的にも精神的にも不安定であろうに、笑顔でシルバーの気持ちを汲み取るユウに、シルバーは不甲斐なさにかられた。全くこれでは彼女の看病をするどころか、カバーに回られている。
「いや、一人で心細かっただろう。すまなかった。次は善処する」
はい、と笑った彼女の笑顔は、まだ寂しさがぬぐえていない。シルバーはベッドに運ぶからユウに腕を肩に回せと言った。ユウはそれは流石にできないと、真っ赤な顔を更に赤くして咳き込んだ。こんなところにいては彼女が冷える。シルバーはユウを抱き上げた。
「せ……先輩」
あまりに軽いユウの体が、思った以上に柔らかい感触をしていてシルバーは腕が熱くて溶けそうだった。胸元で暴れている心音がばれてしまわないかと焦り、シルバーは淡々と事実だけを熱のこもった口調で告げる。
「あんな寒いところにいても体は良くならない。ベッドで寝て、体力をつけろ」
そう言ってユウをベッドに横たえると、すぐさま毛布と掛け布団を彼女にかけた。あまりじっと体を見ていては自分の気持ちが今すぐにでも悟られそうだったからだ。騎士道のために身につけた精神力は、シルバーを常人の男よりは欲望を抑制した人物にしていた。
そんなシルバーをよそに、ユウは真っ赤になりながら、シルバーに必死に訴えた。
「でも、ぎんの……世話しないと」
「ギン?」
聞きなれない名前に首を傾げると、ユウが自慢げに笑った。
「新しく入ってきた馬です。……私が名付けたんですよ」
彼女の屈託のない笑顔が見れて、シルバーは思わず微笑んだ。銀、なるほど短くて音も良いとシルバーは気に入った。
「いい響きだ」
ふふと嬉しそうに笑うユウに、シルバーは額を撫でた。それは紛れもなく安心させるための手つきだった。
「おそらくリドルたちが面倒を見てくれている。後で俺も銀の様子を見てこよう」
「先輩……ありがとうございます」
ほっと安心しきった笑顔に、ぎゅっと心臓が縮む感覚がする。もう寝たほうがいいと声をかければ、ユウはそのまますうすう寝息を立てていた。あまりに寝つきの良さに、シルバーは普段の自分はこう見えているのだろうかと思案した。
なにやら寝言を言っているユウは、不意にシルバーを呼んだ。あまりに自然な呼び方をするので、シルバーは彼女に触れてしまおうかと一瞬悩んだが、冷静な彼の思考がそれを留めた。今はただ、彼女の願いを叶えなくてはならない。そう言い聞かせ立ちあがった。くすくすと彼女は眠りの中で笑っている。シルバーはこの眠りをできればずっと安らかに、暖かなものにしたいと思った。
「ユウ! どうした」
その状態が辛いのか、彼女は膝を抱え込んでいた。シルバーを視認したユウは、安堵したのかか細くシルバーを呼んだ。
「ど……どこにいたんですか」
「談話室で少し掃除をしていた。セベクも寝ているが、気にするな」
そのままユウのベッドに連れて行こうとマジカルペンを探すと、制服の裾を掴まれる。どうした、と尋ねれば、ユウの目が薄い膜を張って涙を湛えていた。
「その、さっきから音がしなくて……なんでだろうと思ったら、鍵も開かなくて。先輩もいないから怖くて」
そう言えば遮音と施錠の魔法を解くのを忘れていたシルバーは、そのせいでユウが怯えていたことにやっと気が付いた。シルバーは先ほどまでセベクが騒ぎ、リリアが来ていたことを教えた。そのせいでそういった魔法を使わざるを得なかったんだと半ば言い訳じみた事情を話すと、ユウは安心したように笑った。
「先輩の気遣いだったんですね……。ありがとうございます」
身体的にも精神的にも不安定であろうに、笑顔でシルバーの気持ちを汲み取るユウに、シルバーは不甲斐なさにかられた。全くこれでは彼女の看病をするどころか、カバーに回られている。
「いや、一人で心細かっただろう。すまなかった。次は善処する」
はい、と笑った彼女の笑顔は、まだ寂しさがぬぐえていない。シルバーはベッドに運ぶからユウに腕を肩に回せと言った。ユウはそれは流石にできないと、真っ赤な顔を更に赤くして咳き込んだ。こんなところにいては彼女が冷える。シルバーはユウを抱き上げた。
「せ……先輩」
あまりに軽いユウの体が、思った以上に柔らかい感触をしていてシルバーは腕が熱くて溶けそうだった。胸元で暴れている心音がばれてしまわないかと焦り、シルバーは淡々と事実だけを熱のこもった口調で告げる。
「あんな寒いところにいても体は良くならない。ベッドで寝て、体力をつけろ」
そう言ってユウをベッドに横たえると、すぐさま毛布と掛け布団を彼女にかけた。あまりじっと体を見ていては自分の気持ちが今すぐにでも悟られそうだったからだ。騎士道のために身につけた精神力は、シルバーを常人の男よりは欲望を抑制した人物にしていた。
そんなシルバーをよそに、ユウは真っ赤になりながら、シルバーに必死に訴えた。
「でも、ぎんの……世話しないと」
「ギン?」
聞きなれない名前に首を傾げると、ユウが自慢げに笑った。
「新しく入ってきた馬です。……私が名付けたんですよ」
彼女の屈託のない笑顔が見れて、シルバーは思わず微笑んだ。銀、なるほど短くて音も良いとシルバーは気に入った。
「いい響きだ」
ふふと嬉しそうに笑うユウに、シルバーは額を撫でた。それは紛れもなく安心させるための手つきだった。
「おそらくリドルたちが面倒を見てくれている。後で俺も銀の様子を見てこよう」
「先輩……ありがとうございます」
ほっと安心しきった笑顔に、ぎゅっと心臓が縮む感覚がする。もう寝たほうがいいと声をかければ、ユウはそのまますうすう寝息を立てていた。あまりに寝つきの良さに、シルバーは普段の自分はこう見えているのだろうかと思案した。
なにやら寝言を言っているユウは、不意にシルバーを呼んだ。あまりに自然な呼び方をするので、シルバーは彼女に触れてしまおうかと一瞬悩んだが、冷静な彼の思考がそれを留めた。今はただ、彼女の願いを叶えなくてはならない。そう言い聞かせ立ちあがった。くすくすと彼女は眠りの中で笑っている。シルバーはこの眠りをできればずっと安らかに、暖かなものにしたいと思った。