銀
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念のためにと思ってシルバーはリリアとセベク、リドルにユウの体調不良を連絡しておいた。セベクが護衛くらい任せろと返信してくれたのは心強かったし、リリアもこちらは気にせずユウの看病をしろと返信してくれた。それに今日は馬術部の活動日だが、ユウの看病がある以上シルバーも必然的に休むこととなる。リドルは後で見舞いの品を持ってこようと返信してくれた。
シルバーは混ぜて冷やすだけの簡単なゼリーを作り、オンボロ寮の食器棚に仕舞われた美しいガラス細工の皿を見つけた。シルバーの手のひらほどしかないので、これくらいの寮なら食べるだろうかと盛り付け、スプーンをつける。シルバーはそれをこぼさぬよう、手で運んだ。本当は魔法で運べるが、自分の手で運んで彼女を喜ばせたかった。我ながら何とも小さな意地だとため息を吐くと、ユウの部屋をノックしそのまま入った。彼女に返事をさせては喉に悪い。
寝ているユウの隣になるよう、ベッドにシルバーは腰かけた。
「一応作ってみた。口に合うだろうか」
ユウは頬を真っ赤にしながら起き上がった。気分が悪いのか、痛そうに頭を押さえている。シルバーは無理をするなとゼリーをとりあげようとしたが、ユウは食べますと手を伸ばした。
「先輩が作ったゼリー、食べたい」
意識がもうろうとしているのか、常にある敬語がとれていて、シルバーは不意にゼリーの皿を取り落としそうになった。そっとユウにゼリーの入った皿を差し出せば、彼女の熱を持った手が触れた周囲のガラスは曇った。ユウがスプーンで一口掬って口に入れる。熱のせいで真っ赤になった唇と舌が扇情的で、シルバーは反応を伺いたくても彼女から視線をそらしてしまった。
「ん……美味しいです」
そう言った彼女の表情は、満面の笑みだ。シルバーは張り詰めていた緊張の糸が緩んで、ほっと溜息をついた。
「口に合ってよかった」
水分補給のついでに風邪薬も飲むと良い、と彼は薬の小瓶と水の入ったペットボトルをサイドテーブルに置いた。ユウはぺろりとすぐにゼリーを平らげると、言われた通り薬を飲んで再び横になった。シルバーは他に何かしてほしいかと聞いたが、彼女は弱弱しく首を横に振る。
「多分寝ます。先輩は……どうしますか?」
「今日はお前を看病すると決めたから、マレウス様に報告しなければならない。しばらく留守にするが大丈夫か?」
か細く返事をしたユウはそのまま眠ってしまった。シルバーはさてどうやって自分の主を見つけようか考えた。ガーゴイル研究会の活動として今頃どこかの廃墟を出歩いているかもしれない。それもここオンボロ寮のようなさびれたところだろう。
その瞬間、ユウの部屋に見慣れた――いや良く知っている――魔力の光が溢れた。シルバーはまさかと思い、玄関へ走って向かう。扉を開ければ、探していた主人がそこにいた。
「シルバー、何をしている」
シルバーはすぐさま片膝をついて首を垂れた。まさかこんなところで自分の主に会うとは思わず、若干混乱している。マレウスは一向に応えようとしないシルバーにもう一度尋ねた。
「何をしていると聞いているんだ。人の子はどうした」
「はっ。ユウは今風邪をひいていて、僭越ながら私が看病していました」
ふむ……と考え事をしているのか、主人の足元しか見えないシルバーは想像を巡らせることしかできない。こめかみを伝う汗がそのまま頬を通り、鼻先で零れた。
「面を上げろ、シルバー」
そう言われ、顔を上げたシルバーに、マレウスは嬉しそうに笑っていた。
「人の子の看病とは、なかなか距離を詰めたものだな。シルバー。その献身と努力に免じて、僕の代わりに人の子に渡しておいてくれないか」
手を出せと言われ、両手を出したシルバーの掌に緑の光が集まる。そこからコロコロと小瓶が出てきた。
「リラックス効果のある香油をこの前作ったのだが、体調が優れないなら仕方ない。お前に託したぞ、シルバー。しっかり看病してやると良い」
「はっ!」
受け取った小瓶をしっかりと持ったシルバーは、マレウスがその場から一瞬で消えるのを見送った。すっかり魔力の圧がなくなった玄関で、シルバーは主から託された香油を早速ユウに届けようと扉を閉めた。
シルバーは混ぜて冷やすだけの簡単なゼリーを作り、オンボロ寮の食器棚に仕舞われた美しいガラス細工の皿を見つけた。シルバーの手のひらほどしかないので、これくらいの寮なら食べるだろうかと盛り付け、スプーンをつける。シルバーはそれをこぼさぬよう、手で運んだ。本当は魔法で運べるが、自分の手で運んで彼女を喜ばせたかった。我ながら何とも小さな意地だとため息を吐くと、ユウの部屋をノックしそのまま入った。彼女に返事をさせては喉に悪い。
寝ているユウの隣になるよう、ベッドにシルバーは腰かけた。
「一応作ってみた。口に合うだろうか」
ユウは頬を真っ赤にしながら起き上がった。気分が悪いのか、痛そうに頭を押さえている。シルバーは無理をするなとゼリーをとりあげようとしたが、ユウは食べますと手を伸ばした。
「先輩が作ったゼリー、食べたい」
意識がもうろうとしているのか、常にある敬語がとれていて、シルバーは不意にゼリーの皿を取り落としそうになった。そっとユウにゼリーの入った皿を差し出せば、彼女の熱を持った手が触れた周囲のガラスは曇った。ユウがスプーンで一口掬って口に入れる。熱のせいで真っ赤になった唇と舌が扇情的で、シルバーは反応を伺いたくても彼女から視線をそらしてしまった。
「ん……美味しいです」
そう言った彼女の表情は、満面の笑みだ。シルバーは張り詰めていた緊張の糸が緩んで、ほっと溜息をついた。
「口に合ってよかった」
水分補給のついでに風邪薬も飲むと良い、と彼は薬の小瓶と水の入ったペットボトルをサイドテーブルに置いた。ユウはぺろりとすぐにゼリーを平らげると、言われた通り薬を飲んで再び横になった。シルバーは他に何かしてほしいかと聞いたが、彼女は弱弱しく首を横に振る。
「多分寝ます。先輩は……どうしますか?」
「今日はお前を看病すると決めたから、マレウス様に報告しなければならない。しばらく留守にするが大丈夫か?」
か細く返事をしたユウはそのまま眠ってしまった。シルバーはさてどうやって自分の主を見つけようか考えた。ガーゴイル研究会の活動として今頃どこかの廃墟を出歩いているかもしれない。それもここオンボロ寮のようなさびれたところだろう。
その瞬間、ユウの部屋に見慣れた――いや良く知っている――魔力の光が溢れた。シルバーはまさかと思い、玄関へ走って向かう。扉を開ければ、探していた主人がそこにいた。
「シルバー、何をしている」
シルバーはすぐさま片膝をついて首を垂れた。まさかこんなところで自分の主に会うとは思わず、若干混乱している。マレウスは一向に応えようとしないシルバーにもう一度尋ねた。
「何をしていると聞いているんだ。人の子はどうした」
「はっ。ユウは今風邪をひいていて、僭越ながら私が看病していました」
ふむ……と考え事をしているのか、主人の足元しか見えないシルバーは想像を巡らせることしかできない。こめかみを伝う汗がそのまま頬を通り、鼻先で零れた。
「面を上げろ、シルバー」
そう言われ、顔を上げたシルバーに、マレウスは嬉しそうに笑っていた。
「人の子の看病とは、なかなか距離を詰めたものだな。シルバー。その献身と努力に免じて、僕の代わりに人の子に渡しておいてくれないか」
手を出せと言われ、両手を出したシルバーの掌に緑の光が集まる。そこからコロコロと小瓶が出てきた。
「リラックス効果のある香油をこの前作ったのだが、体調が優れないなら仕方ない。お前に託したぞ、シルバー。しっかり看病してやると良い」
「はっ!」
受け取った小瓶をしっかりと持ったシルバーは、マレウスがその場から一瞬で消えるのを見送った。すっかり魔力の圧がなくなった玄関で、シルバーは主から託された香油を早速ユウに届けようと扉を閉めた。