シルバーは今日も眠れない
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ユウに恋している。それを知っただけでシルバーの胸のうちは軽くなった。今までユウのことが気になっていたのは、いつの間にか彼女のことを好いていたわけだという理由が見つかった安堵でシルバーに今までの疲れが眠気となって襲ってきた。まだ見つけられていないが、ユウには身を守る力もある。危険な目に遭うことはそうそうないだろうと、シルバーは学園裏の森で倒れてしまった。
森の動物たちはシルバーの姿を認めると、いそいそと集まり、何やら話しあうと二手に分かれた。一方はそれまで通りシルバーの周囲を守るように囲み、もう一方は小鳥が一匹飛び去って行った。小鳥が去ってから30分経ち、なになに? と言いながら小鳥に導かれながら近寄る姿があった。寮章のないブレザーを身につけたその人物は、森で倒れているシルバーの姿を認めるとすぐに彼の元まで駆けだした。
ユウはシルバーの傍に腰掛けると、リスや小鳥たちと一緒にシルバーの目覚めを待った。日が傾き始めてもなお、彼女はそこを動くことはなく、たまにシルバーを見ては暗くなる森を眺めていた。そろそろ手元も見えるか怪しくなったところで、ユウの隣から声がした。
ユウは足元を見れば、うすぼんやりとオーロラシルバーの瞳が開かれていることに気づいた。
「こんばんは、先輩」
彼女の挨拶に、シルバーは身を固くした後、何度か目を瞬かせた。
「ユウ、どうしたんだ」
ユウは頬を指先で掻くと、言葉を詰まらせながら小鳥にここへ連れてきてもらったことを話した。頬に走る朱が嫌にシルバーの目に焼き付く。
「それと、実は寝ている先輩を見守っていました」
「見守る?」
首を傾げたシルバーに、ユウは恥ずかしそうに後頭部を掻いた。
「はい。私になんか守られなくても先輩は強いですけど、先輩に悪戯する輩からはこういう時ぐらいしか守れそうにないので」
シルバーはその言葉で確かに心臓が不自然に撥ねるのを感じた。そして、今まで不整脈と感じていたこれが、恋なのだと確かに感じていた。ユウは黙って見つめてくる彼にいたたまれない気持ちになって、泣きそうな気持ちを笑ってごまかした。
「なーんて! おこがましいにもほどがありますよね! すいません!」
「謝る必要はない。俺は嬉しい」
シルバーはつい自分が無表情で見つめていたことを思い出し、謝った彼女にそうする必要はないと言った。しかし、ユウは泣きたそうな顔で、シルバーに言う。
「……嬉しそうに見えません」
そんな顔をされれば応えたくなるのが男の性だ。シルバーは彼女がなんとか笑顔になるようにと、意気込んで答えた。
「わかった。善処する」
いかにも真面目な返事を返すシルバーの表情に、ユウは思わず噴き出した。
「あははっ先輩、嬉しいの善処ってどうやってするんですか。面白いなぁ、もう」
シルバーにはなぜユウが笑うようになったのか分からないが、楽しそうに笑う彼女を見られただけで胸がつまるほどの幸せを感じた。同時に強欲なことに、ユウの小さな体を抱きしめてしまいたいとも思っていた。それをするには、まだまだ先の話だというのに逸る心はどうやら言うことを聞けるほど余裕はなかった。
「……先輩、もういいんですか? 頭の中に、私住んでません?」
離れたほうがいいのだろうかと迷っているユウに、シルバーは横に首を振った。
「正直、まだお前はいる」
「じゃあ」
「だが、俺はこれでいいんだ」
そう断言したシルバーに、ユウは目を丸くする。
「え、邪魔じゃないですか?」
「お前のことを考えていると、温かい気持ちになる。そして、もっと鍛錬に励もうという強い気持ちにもなる。……この感情は邪魔じゃない」
なによりもう、傍にいられないのが辛くて仕方ないのだ。シルバーは胸に手を当て、ユウを見つめた。ユウもその様子に安堵して、頬を染めて口角を上げた。
「邪魔にならないならよかったです」
ユウはかねてから考えていたことがあった。それはシルバーに恋するようになってから常々考えていたことでもあり、言おうか言うまいか考えていた時にシルバーから会えないと言われ、一時判断を棚上げにしていた。
星を見上げているシルバーの横顔はいつ見ても美しい。ユウは意を決して緊張で掠れそうになる言葉を伝えた。
「馬術部……入ってみたいんですけど」
シルバーは思わぬ申し出にがばりと起き上がると、ユウの方に身を乗りだした。あまりの勢いにユウは背中を反らして、シルバーから一定の距離を取ろうとする。あまりに期待に満ちたオーロラシルバーの瞳は星々よりも輝かしい。
「見学に来るか? 今から」
「え、でも流石に今じゃ迷惑じゃないですか?」
「大丈夫だ。リドルには明日俺が伝える。馬たちも喜ぶだろう」
突然決まった見学にユウは目を丸くして立ち上がることも忘れていた。リドルは許してくれるだろうが、今すぐ行くというのはそれほど部員が足りないのだろうかと的外れな心配をしている。一方シルバーは、ユウに自分の所属する部活動に興味を持たれたことが嬉しくて、すぐさま立ち上がり光魔法で足元を照らす。そして、座り込んだままのユウに手を伸ばした。
「それに、お前がいると馬術にも身が入る」
ユウがいる馬術部を想像したシルバーは、我知らず微笑んでしまっていた。その笑顔の意味を知らないユウは、口元に手を当てて溢れそうになる絶叫を押さえた。彼の微笑みに弱いユウは、真っ赤になりながらシルバーの手を取る。ユウの手を掴んだシルバーの手は、彼女がどこにも行くはずがないのに、しっかりとその手を放さぬよう掴んでいた。
森の動物たちはシルバーの姿を認めると、いそいそと集まり、何やら話しあうと二手に分かれた。一方はそれまで通りシルバーの周囲を守るように囲み、もう一方は小鳥が一匹飛び去って行った。小鳥が去ってから30分経ち、なになに? と言いながら小鳥に導かれながら近寄る姿があった。寮章のないブレザーを身につけたその人物は、森で倒れているシルバーの姿を認めるとすぐに彼の元まで駆けだした。
ユウはシルバーの傍に腰掛けると、リスや小鳥たちと一緒にシルバーの目覚めを待った。日が傾き始めてもなお、彼女はそこを動くことはなく、たまにシルバーを見ては暗くなる森を眺めていた。そろそろ手元も見えるか怪しくなったところで、ユウの隣から声がした。
ユウは足元を見れば、うすぼんやりとオーロラシルバーの瞳が開かれていることに気づいた。
「こんばんは、先輩」
彼女の挨拶に、シルバーは身を固くした後、何度か目を瞬かせた。
「ユウ、どうしたんだ」
ユウは頬を指先で掻くと、言葉を詰まらせながら小鳥にここへ連れてきてもらったことを話した。頬に走る朱が嫌にシルバーの目に焼き付く。
「それと、実は寝ている先輩を見守っていました」
「見守る?」
首を傾げたシルバーに、ユウは恥ずかしそうに後頭部を掻いた。
「はい。私になんか守られなくても先輩は強いですけど、先輩に悪戯する輩からはこういう時ぐらいしか守れそうにないので」
シルバーはその言葉で確かに心臓が不自然に撥ねるのを感じた。そして、今まで不整脈と感じていたこれが、恋なのだと確かに感じていた。ユウは黙って見つめてくる彼にいたたまれない気持ちになって、泣きそうな気持ちを笑ってごまかした。
「なーんて! おこがましいにもほどがありますよね! すいません!」
「謝る必要はない。俺は嬉しい」
シルバーはつい自分が無表情で見つめていたことを思い出し、謝った彼女にそうする必要はないと言った。しかし、ユウは泣きたそうな顔で、シルバーに言う。
「……嬉しそうに見えません」
そんな顔をされれば応えたくなるのが男の性だ。シルバーは彼女がなんとか笑顔になるようにと、意気込んで答えた。
「わかった。善処する」
いかにも真面目な返事を返すシルバーの表情に、ユウは思わず噴き出した。
「あははっ先輩、嬉しいの善処ってどうやってするんですか。面白いなぁ、もう」
シルバーにはなぜユウが笑うようになったのか分からないが、楽しそうに笑う彼女を見られただけで胸がつまるほどの幸せを感じた。同時に強欲なことに、ユウの小さな体を抱きしめてしまいたいとも思っていた。それをするには、まだまだ先の話だというのに逸る心はどうやら言うことを聞けるほど余裕はなかった。
「……先輩、もういいんですか? 頭の中に、私住んでません?」
離れたほうがいいのだろうかと迷っているユウに、シルバーは横に首を振った。
「正直、まだお前はいる」
「じゃあ」
「だが、俺はこれでいいんだ」
そう断言したシルバーに、ユウは目を丸くする。
「え、邪魔じゃないですか?」
「お前のことを考えていると、温かい気持ちになる。そして、もっと鍛錬に励もうという強い気持ちにもなる。……この感情は邪魔じゃない」
なによりもう、傍にいられないのが辛くて仕方ないのだ。シルバーは胸に手を当て、ユウを見つめた。ユウもその様子に安堵して、頬を染めて口角を上げた。
「邪魔にならないならよかったです」
ユウはかねてから考えていたことがあった。それはシルバーに恋するようになってから常々考えていたことでもあり、言おうか言うまいか考えていた時にシルバーから会えないと言われ、一時判断を棚上げにしていた。
星を見上げているシルバーの横顔はいつ見ても美しい。ユウは意を決して緊張で掠れそうになる言葉を伝えた。
「馬術部……入ってみたいんですけど」
シルバーは思わぬ申し出にがばりと起き上がると、ユウの方に身を乗りだした。あまりの勢いにユウは背中を反らして、シルバーから一定の距離を取ろうとする。あまりに期待に満ちたオーロラシルバーの瞳は星々よりも輝かしい。
「見学に来るか? 今から」
「え、でも流石に今じゃ迷惑じゃないですか?」
「大丈夫だ。リドルには明日俺が伝える。馬たちも喜ぶだろう」
突然決まった見学にユウは目を丸くして立ち上がることも忘れていた。リドルは許してくれるだろうが、今すぐ行くというのはそれほど部員が足りないのだろうかと的外れな心配をしている。一方シルバーは、ユウに自分の所属する部活動に興味を持たれたことが嬉しくて、すぐさま立ち上がり光魔法で足元を照らす。そして、座り込んだままのユウに手を伸ばした。
「それに、お前がいると馬術にも身が入る」
ユウがいる馬術部を想像したシルバーは、我知らず微笑んでしまっていた。その笑顔の意味を知らないユウは、口元に手を当てて溢れそうになる絶叫を押さえた。彼の微笑みに弱いユウは、真っ赤になりながらシルバーの手を取る。ユウの手を掴んだシルバーの手は、彼女がどこにも行くはずがないのに、しっかりとその手を放さぬよう掴んでいた。