熱愛プロポーズ!
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「先輩!」
その声にシルバーはようやく覚醒した。ここはオンボロ寮の玄関で、目の前にいるユウはしゃがんで不安そうにシルバーを見ている。ユウ……とシルバーが名前を呼べば、ユウは安堵の笑みを浮かべ、胸を手で押さえた。
「せ、先輩……よかった。寝ていただけで」
安心した様子のユウを見て、シルバーは思い出した。すぐさま、ユウの肩を掴んだ彼は、彼女の身に何も異変がないか問いただす。
「大丈夫か? 乱暴をされたりしてないか?」
顔を顰めているユウは、懇願するような表情でシルバーを見上げた。
「先輩……痛いです」
想った以上に力を入れて掴んでいたことにシルバーは後悔した。感情に流されて傷つけそうになるなど、騎士として言語道断である。
「す、すまない」
肩を離したシルバーにユウは、ぎこちなく小首を傾げた。
「きっと、校内の告白騒ぎを聞いたんですよね? 心配してくださって、ありがとうございます。私には何もありませんでしたよ。これでぼっこぼこに打ちのめしたので」
笑顔で模造刀を見せるユウの逞しい言葉に、心配をし過ぎたのは俺の方かとシルバーはほっと安堵の息を吐いた。
「でも、さすがに皆さんが悪ふざけで告白してきたのは面倒でした」
「悪ふざけ?」
「そうですよ。好きな相手がいるからって、わざわざ当てようと私に気持ちの籠ってない告白をしてくるんです。反応まで楽しんでいて、腹が立ったので全部振りました」
ぶすくれているユウの頬は、赤らんでいる。シルバーは聞き逃してはならない言葉に呼吸することも忘れそうな程、ユウを見つめた。そんな誰かを思う表情を目の前でされたことがあっただろうか。
「好きな相手が……いるのか」
口にすると僅かに胸にチクリと刺さる感覚がした。しまったという顔をしたユウを見て、膝の上に乗せた拳がギリと悲鳴をあげる。ユウは熟れたリンゴのような頬で告げた。
「い、います……」
その言葉で急に世界中の音が遠ざかる気がした。心地よく聞こえる小鳥の声も、肌を優しくなでる風の音も、心に暖かな波をもたらすユウの声も聞こえなくなりそうだった。
「そうか」
ユウには好きな相手がいる。それだけで心臓が石のように重くなり、動けなくなる心地がした。
顔を真っ赤にしているユウは、続け様に言葉を放つ。忙しないこまごまとした動きは普段なら愛らしいと頬を緩めるのに、今は全くそう思えない。そんな自分の心の変わり様に、シルバーは自分への嫌悪が募った。
「と、とっても素敵な人なんです! 優しくて、かっこよくて……それこそ、先輩みたいに!」
それは、俺じゃダメなのだろうか。
そんな言葉だけがシルバーの底なし沼のように深くなった胸の奥に沈んだ。
その声にシルバーはようやく覚醒した。ここはオンボロ寮の玄関で、目の前にいるユウはしゃがんで不安そうにシルバーを見ている。ユウ……とシルバーが名前を呼べば、ユウは安堵の笑みを浮かべ、胸を手で押さえた。
「せ、先輩……よかった。寝ていただけで」
安心した様子のユウを見て、シルバーは思い出した。すぐさま、ユウの肩を掴んだ彼は、彼女の身に何も異変がないか問いただす。
「大丈夫か? 乱暴をされたりしてないか?」
顔を顰めているユウは、懇願するような表情でシルバーを見上げた。
「先輩……痛いです」
想った以上に力を入れて掴んでいたことにシルバーは後悔した。感情に流されて傷つけそうになるなど、騎士として言語道断である。
「す、すまない」
肩を離したシルバーにユウは、ぎこちなく小首を傾げた。
「きっと、校内の告白騒ぎを聞いたんですよね? 心配してくださって、ありがとうございます。私には何もありませんでしたよ。これでぼっこぼこに打ちのめしたので」
笑顔で模造刀を見せるユウの逞しい言葉に、心配をし過ぎたのは俺の方かとシルバーはほっと安堵の息を吐いた。
「でも、さすがに皆さんが悪ふざけで告白してきたのは面倒でした」
「悪ふざけ?」
「そうですよ。好きな相手がいるからって、わざわざ当てようと私に気持ちの籠ってない告白をしてくるんです。反応まで楽しんでいて、腹が立ったので全部振りました」
ぶすくれているユウの頬は、赤らんでいる。シルバーは聞き逃してはならない言葉に呼吸することも忘れそうな程、ユウを見つめた。そんな誰かを思う表情を目の前でされたことがあっただろうか。
「好きな相手が……いるのか」
口にすると僅かに胸にチクリと刺さる感覚がした。しまったという顔をしたユウを見て、膝の上に乗せた拳がギリと悲鳴をあげる。ユウは熟れたリンゴのような頬で告げた。
「い、います……」
その言葉で急に世界中の音が遠ざかる気がした。心地よく聞こえる小鳥の声も、肌を優しくなでる風の音も、心に暖かな波をもたらすユウの声も聞こえなくなりそうだった。
「そうか」
ユウには好きな相手がいる。それだけで心臓が石のように重くなり、動けなくなる心地がした。
顔を真っ赤にしているユウは、続け様に言葉を放つ。忙しないこまごまとした動きは普段なら愛らしいと頬を緩めるのに、今は全くそう思えない。そんな自分の心の変わり様に、シルバーは自分への嫌悪が募った。
「と、とっても素敵な人なんです! 優しくて、かっこよくて……それこそ、先輩みたいに!」
それは、俺じゃダメなのだろうか。
そんな言葉だけがシルバーの底なし沼のように深くなった胸の奥に沈んだ。