熱愛プロポーズ!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
かくかくしかじかで、私は女とバレた。モーヴがマジカメにその情報を拡散したせいで、女と知ったここの生徒は興味本位と好きな人を探るためだけに私に告白してくる。しかし、九割九分がそれなら残った僅かな部類……今朝告白してきた彼のようなタイプは、割と以前から私に気があったらしい。そんな相手すら未練もないように振ってしまわないといけないので、なんだか私が悪役のようなこの状況が嫌になる。それに追い打ちをかけるように、私の陰口も増えているらしく実験のペアが組みづらくなったり教科書を見せてくれなくなったりと目に見えて態度を掌返ししてくる奴らもいた。くそう、腹が立つ!
「監督生ってさ、実は何人も恋人侍らせてるらしいぜ?」
「寮長クラスにだけ媚び売って、何の肩書も持たない奴だけ振っているんだってな」
フォークで皿の上のウインナーを突き刺し振り向くと、背後で陰口を叩いていたスカラビア寮生が走って逃げる。まったく、人が美味しいご飯を食べようってときに悪口なんか聞きたくない。
「ユウ、モテ期じゃん」
人生で初めてのモテ期がこれなんて誰が想像できただろうか。エースが暢気にベーコンエッグタルトを頬張っている。せいぜい頑張れとしか言われないので、まあ愚痴くらいは聞いてもらっていた。突き刺したウインナーを一口かじる。
「君らと付き合ってんじゃないのかっていう疑惑まで出て困るんだけど」
本当にそう尋ねられたのは昨日のことだ。エースとデュースがここ最近の私の状況を知って傍にいるようになったせいで、二人と付き合っているという噂もまことしやかに流れている。まあ、リドル先輩をはじめとする私たちの関係を知っている先輩方は否定してくれているのが唯一の救いとでも言うべきか。
デュースはカルボナーラを頬張るとそれを飲み込んだ。デュース、しっかり嚙まないとのどに詰まらせるからやめなよ。
「でも、ユウはし……違う人と付き合いたいんだろ?」
「そ、だから、告白は全部振ってる」
ずず、とスープに手を付けると、エースの背後に大きな影が落ちた。隣にいたグリムは私の膝とテーブルの間に隠れ、デュースもエースも背後の存在に振り向き動かなくなってしまった。見上げた私はもう驚く声すら上げられない。フロイド先輩は、エースの肩を掴んで上機嫌に言った。
「小エビちゃーん! 俺と付き合お?」
こんな感じで面倒なことまで起きるから、私の胃は穴が空かないかと心配だ。大体フロイド先輩、先週私に一回告白してきて私断りましたよね? 人の話聞かないんですか? 馬の耳でもお持ちなんですか?
ふつふつと湧いてくる怒りを抑えるのに全神経を使っていると、フロイド先輩の背後から出てきたラギー先輩が「毎日美味い料理も完璧な家事もできるラギー・ブッチはどうっすか?」と聞いてきた。ラギー先輩にはただでさえレオナ先輩というお世話をしなくちゃいけない大将がいるのにそんな余裕もないだろう。見え透いた嘘を言われているのは分かるから断ったら、ラギー先輩はちぇえと両腕を頭の後ろに回して天を仰いだ。
「あーあ、ユウくんを落とせばさっき食べてきたモストロ・ラウンジの全メニューがタダで食えるって聞いたんすけど。ダメっすか」
アズール先輩のせいか! あの守銭奴マーメイド! 私の寮だけでは飽き足らず、人を賭けの材料にして何を稼ごうとしているんだ! 私は大食い企画の激辛メニュー扱いですか?
いつの間にか張り巡らされていたアズール先輩の大きな陰謀に頭が痛くなってくる。大丈夫か、と水を差し出してくれたのはジャミル先輩だった。カリム先輩はラギー先輩とフロイド先輩の相手をしてくれている。ああ、深謀遠慮のスカラビアはさすがだ。私の頭痛がすうっと引いて行った。
「ありがとうございます。ジャミル先輩」
そう言って水を受け取ろうとした私の目を覗き込んだ先輩は、あの吸い込まれそうな目をしていた。
「瞳に映るはお前の主人(あるじ)。尋ねれば答えよ、命じれば頭を垂れよ。『蛇のいざない(スネーク・ウィスパー)』」
あ、やばい。これは本当に意識が持ってかれ
「『巻き付く尾(バインド・ザ・ハート)』」
目の前が一瞬暗くなりかけたところで、私の目の前にマジカルペンを握った素手があった。その手の主を見れば、ウツボの人魚らしい獰猛な笑顔を浮かべて笑っている。
「ウミヘビくん、横取りしてんじゃねーぞ?」
ぞくっと走る悪寒によくないものを感じた。すぐさまフロイド先輩の腕を下ろさせて、こちらに注意をひかせる。案の定、その怖い視線は私に向いた。膝が震えそうになるのを必死に堪えて笑え。私、笑え。
「先輩、とっても助かりました。今度タコパをしにモストロ・ラウンジに遊びに行きますね」
そう聞いたフロイド先輩は真顔で私をじっと見つめる。やめろ、私の意思を探らなくてもきちんと行くし、相手するから!
「あはっ♡ 小エビちゃん、約束だよ」
良かった! 機嫌が直った! ジャミル先輩も興が削がれたようで、向こうで騒ぎだしているカリム先輩の方に視線がいっている。フロイド先輩は飽きたのか、そのままどこかへふらふらと歩いて行った。きっとジェイド先輩を探しに行くんだろう。
ほっと一息ついたのも束の間で、今度は後ろからやっほーとケイト先輩が顔を出した。珍しくトレイ先輩と一緒にはいないらしい。
「ユウちゃーん、俺なんかどう? 絶対ばえるって!」
「ケイト先輩はそもそもマジカメにのせたいだけでしょう? 写真ならいくらでも写りますから」
ほら、とピースサインをすれば、ケイト先輩は私とのツーショットを撮って、マジカメにアップしていた。ケイト先輩の姿を見つけたカリム先輩がこっちに近寄ってくる。
「なぁなぁケイト! ユウの好きな奴ってどんな奴なんだ?」
「それが全然分からないんだよねー。監督生ちゃん口固すぎ」
「私の好きな人なんて、知っても面白くもなんともないですよ」
にっこりと笑顔で返せば、ずっとこの返事だから俺そろそろ泣きそうーとケイト先輩がカリム先輩に抱きつく。正直シルバー先輩への気持ちなんて、ツノ太郎とマブとグリムだけが知っていればいい。
それに泣きたいのは私だって一緒だ。好きでもない人たちの気持ちを聞かされてはそれを振らなくてはいけない。振るにも勇気がいるのだ。今後の付き合いにも影響していくというのに周りは面白おかしくはやし立てるし、挙句の果てに根も葉もないうわさ話で私の株は急落している。まあ、知っている人だけ知っていればいいやという状態でもある。
そうだ、そう考えればいいのか。私のこと理解している人は普段通りだし、理解していないなら態度を変えるとこれで分かる。あ、なんだか気分が明るくなったぞ。
「もちろん! 若様に愛を捧ぐんだろう!」
この喧騒の中でもよく聞こえる声量はあいつしかいない。ケイト先輩の肩越しに向こうを見やれば、セベクがやってきていた。どうやら話の経緯は聞いているようだが、セベクは私がシルバー先輩を好きということはもちろん知らない。でもそれで若様もといマレウスさんへ愛を捧ぐのちょっと極端じゃないか、セベク。というか、私にはシルバー先輩っていう相手がいるんだって! これ何回目だ、心の中で叫ぶの。
はぁ、私がなんでもホイホイ言うこと聞くと思っていたら大間違いだからな。再びやってきた頭痛に頭を抱えると、ポンポンと肩に手を置かれる。誰だろう。振り向いてみれば、金の瞳がこちらを覗き込んでいた。
「そんなに怖がらないで、力になりたいんです。『齧り取る歯(ショック・ザ・ハート)』」
しまった! そう思った時にはもう、私の意識はジェイド先輩の言うことを忠実に話す人形になっていた。にっこりと笑うジェイド先輩は怖い。
「ユウさん。あなたの好きな人は誰ですか?」
「私の……好きな、人は」
周囲が固唾をのんで、私の答えを待っている。いつもはやし立てているカリム先輩も、カメラを向けて私を撮っているケイト先輩も、私を催眠ではめようとしたジャミル先輩も、皆こっちを見てる。
無意識の中、呟いた。
私はシルバー先輩が好き。
「……なんて、言うわけないでしょう!!!」
ぐっと拳を握りしめて、肩にかけられていたジェイド先輩の手を両手で剥がす。デュースに脱ぎ捨てた制服のブレザーを持ってもらい、エースに実践魔法で模造刀を出してもらった。その切っ先を私に視線を向けているすべての群れに向けた。
もう我慢できない。こっちを見つめてくる好奇の目も、残念だけど受け止められない好意の目も、悪だくみで私を馬鹿にする目もまとめて全部叩き切ってやる!
「そんなに聞きたければ、魔法なしの剣術で私に勝ってみてください! さあさあ!」
私が吹っ掛けた発破に乗せられたのか数名がおずおずと前に出てきて、偉そうに剣が要らないだの、拳で十分だとか言う。まあ、私がどれだけ鍛錬を積んでて強くなっているか、そりゃ知らないよね。セベクはもう知っているからか、周囲にやめておけと一言付け加えた後に私に「鍛錬の成果を見せろ!」と言ってきた。
「言われなくても、やってやるっての!」
「監督生ってさ、実は何人も恋人侍らせてるらしいぜ?」
「寮長クラスにだけ媚び売って、何の肩書も持たない奴だけ振っているんだってな」
フォークで皿の上のウインナーを突き刺し振り向くと、背後で陰口を叩いていたスカラビア寮生が走って逃げる。まったく、人が美味しいご飯を食べようってときに悪口なんか聞きたくない。
「ユウ、モテ期じゃん」
人生で初めてのモテ期がこれなんて誰が想像できただろうか。エースが暢気にベーコンエッグタルトを頬張っている。せいぜい頑張れとしか言われないので、まあ愚痴くらいは聞いてもらっていた。突き刺したウインナーを一口かじる。
「君らと付き合ってんじゃないのかっていう疑惑まで出て困るんだけど」
本当にそう尋ねられたのは昨日のことだ。エースとデュースがここ最近の私の状況を知って傍にいるようになったせいで、二人と付き合っているという噂もまことしやかに流れている。まあ、リドル先輩をはじめとする私たちの関係を知っている先輩方は否定してくれているのが唯一の救いとでも言うべきか。
デュースはカルボナーラを頬張るとそれを飲み込んだ。デュース、しっかり嚙まないとのどに詰まらせるからやめなよ。
「でも、ユウはし……違う人と付き合いたいんだろ?」
「そ、だから、告白は全部振ってる」
ずず、とスープに手を付けると、エースの背後に大きな影が落ちた。隣にいたグリムは私の膝とテーブルの間に隠れ、デュースもエースも背後の存在に振り向き動かなくなってしまった。見上げた私はもう驚く声すら上げられない。フロイド先輩は、エースの肩を掴んで上機嫌に言った。
「小エビちゃーん! 俺と付き合お?」
こんな感じで面倒なことまで起きるから、私の胃は穴が空かないかと心配だ。大体フロイド先輩、先週私に一回告白してきて私断りましたよね? 人の話聞かないんですか? 馬の耳でもお持ちなんですか?
ふつふつと湧いてくる怒りを抑えるのに全神経を使っていると、フロイド先輩の背後から出てきたラギー先輩が「毎日美味い料理も完璧な家事もできるラギー・ブッチはどうっすか?」と聞いてきた。ラギー先輩にはただでさえレオナ先輩というお世話をしなくちゃいけない大将がいるのにそんな余裕もないだろう。見え透いた嘘を言われているのは分かるから断ったら、ラギー先輩はちぇえと両腕を頭の後ろに回して天を仰いだ。
「あーあ、ユウくんを落とせばさっき食べてきたモストロ・ラウンジの全メニューがタダで食えるって聞いたんすけど。ダメっすか」
アズール先輩のせいか! あの守銭奴マーメイド! 私の寮だけでは飽き足らず、人を賭けの材料にして何を稼ごうとしているんだ! 私は大食い企画の激辛メニュー扱いですか?
いつの間にか張り巡らされていたアズール先輩の大きな陰謀に頭が痛くなってくる。大丈夫か、と水を差し出してくれたのはジャミル先輩だった。カリム先輩はラギー先輩とフロイド先輩の相手をしてくれている。ああ、深謀遠慮のスカラビアはさすがだ。私の頭痛がすうっと引いて行った。
「ありがとうございます。ジャミル先輩」
そう言って水を受け取ろうとした私の目を覗き込んだ先輩は、あの吸い込まれそうな目をしていた。
「瞳に映るはお前の主人(あるじ)。尋ねれば答えよ、命じれば頭を垂れよ。『蛇のいざない(スネーク・ウィスパー)』」
あ、やばい。これは本当に意識が持ってかれ
「『巻き付く尾(バインド・ザ・ハート)』」
目の前が一瞬暗くなりかけたところで、私の目の前にマジカルペンを握った素手があった。その手の主を見れば、ウツボの人魚らしい獰猛な笑顔を浮かべて笑っている。
「ウミヘビくん、横取りしてんじゃねーぞ?」
ぞくっと走る悪寒によくないものを感じた。すぐさまフロイド先輩の腕を下ろさせて、こちらに注意をひかせる。案の定、その怖い視線は私に向いた。膝が震えそうになるのを必死に堪えて笑え。私、笑え。
「先輩、とっても助かりました。今度タコパをしにモストロ・ラウンジに遊びに行きますね」
そう聞いたフロイド先輩は真顔で私をじっと見つめる。やめろ、私の意思を探らなくてもきちんと行くし、相手するから!
「あはっ♡ 小エビちゃん、約束だよ」
良かった! 機嫌が直った! ジャミル先輩も興が削がれたようで、向こうで騒ぎだしているカリム先輩の方に視線がいっている。フロイド先輩は飽きたのか、そのままどこかへふらふらと歩いて行った。きっとジェイド先輩を探しに行くんだろう。
ほっと一息ついたのも束の間で、今度は後ろからやっほーとケイト先輩が顔を出した。珍しくトレイ先輩と一緒にはいないらしい。
「ユウちゃーん、俺なんかどう? 絶対ばえるって!」
「ケイト先輩はそもそもマジカメにのせたいだけでしょう? 写真ならいくらでも写りますから」
ほら、とピースサインをすれば、ケイト先輩は私とのツーショットを撮って、マジカメにアップしていた。ケイト先輩の姿を見つけたカリム先輩がこっちに近寄ってくる。
「なぁなぁケイト! ユウの好きな奴ってどんな奴なんだ?」
「それが全然分からないんだよねー。監督生ちゃん口固すぎ」
「私の好きな人なんて、知っても面白くもなんともないですよ」
にっこりと笑顔で返せば、ずっとこの返事だから俺そろそろ泣きそうーとケイト先輩がカリム先輩に抱きつく。正直シルバー先輩への気持ちなんて、ツノ太郎とマブとグリムだけが知っていればいい。
それに泣きたいのは私だって一緒だ。好きでもない人たちの気持ちを聞かされてはそれを振らなくてはいけない。振るにも勇気がいるのだ。今後の付き合いにも影響していくというのに周りは面白おかしくはやし立てるし、挙句の果てに根も葉もないうわさ話で私の株は急落している。まあ、知っている人だけ知っていればいいやという状態でもある。
そうだ、そう考えればいいのか。私のこと理解している人は普段通りだし、理解していないなら態度を変えるとこれで分かる。あ、なんだか気分が明るくなったぞ。
「もちろん! 若様に愛を捧ぐんだろう!」
この喧騒の中でもよく聞こえる声量はあいつしかいない。ケイト先輩の肩越しに向こうを見やれば、セベクがやってきていた。どうやら話の経緯は聞いているようだが、セベクは私がシルバー先輩を好きということはもちろん知らない。でもそれで若様もといマレウスさんへ愛を捧ぐのちょっと極端じゃないか、セベク。というか、私にはシルバー先輩っていう相手がいるんだって! これ何回目だ、心の中で叫ぶの。
はぁ、私がなんでもホイホイ言うこと聞くと思っていたら大間違いだからな。再びやってきた頭痛に頭を抱えると、ポンポンと肩に手を置かれる。誰だろう。振り向いてみれば、金の瞳がこちらを覗き込んでいた。
「そんなに怖がらないで、力になりたいんです。『齧り取る歯(ショック・ザ・ハート)』」
しまった! そう思った時にはもう、私の意識はジェイド先輩の言うことを忠実に話す人形になっていた。にっこりと笑うジェイド先輩は怖い。
「ユウさん。あなたの好きな人は誰ですか?」
「私の……好きな、人は」
周囲が固唾をのんで、私の答えを待っている。いつもはやし立てているカリム先輩も、カメラを向けて私を撮っているケイト先輩も、私を催眠ではめようとしたジャミル先輩も、皆こっちを見てる。
無意識の中、呟いた。
私はシルバー先輩が好き。
「……なんて、言うわけないでしょう!!!」
ぐっと拳を握りしめて、肩にかけられていたジェイド先輩の手を両手で剥がす。デュースに脱ぎ捨てた制服のブレザーを持ってもらい、エースに実践魔法で模造刀を出してもらった。その切っ先を私に視線を向けているすべての群れに向けた。
もう我慢できない。こっちを見つめてくる好奇の目も、残念だけど受け止められない好意の目も、悪だくみで私を馬鹿にする目もまとめて全部叩き切ってやる!
「そんなに聞きたければ、魔法なしの剣術で私に勝ってみてください! さあさあ!」
私が吹っ掛けた発破に乗せられたのか数名がおずおずと前に出てきて、偉そうに剣が要らないだの、拳で十分だとか言う。まあ、私がどれだけ鍛錬を積んでて強くなっているか、そりゃ知らないよね。セベクはもう知っているからか、周囲にやめておけと一言付け加えた後に私に「鍛錬の成果を見せろ!」と言ってきた。
「言われなくても、やってやるっての!」