「ツノ太郎、マレウス様への嫉妬ってどうしたらいい?」
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シルバー先輩は強い。その強くなるための中心にはいつだって『あの人』がいる。
「マレウス様たちを守るために俺は訓練を積んでいる」
気に食わない。非常に気に食わない。
シルバー先輩がマレウス様と尊敬している人物(というか妖精)なのだから、きっとそれはそれは素晴らしい人格の持ち主で、妖精らしい美しい見た目をしていて、魔力も秀でているに違いない。そして、「マレウス様」がいなければシルバー先輩はこの世にいなかったというのだから、私はこのマレウス様と「親父殿」に感謝しなくちゃいけない。……でもやっぱり。
「気に食わないー!」
そう叫んだ私とは対照的に、談話室のロッキングチェアに腰掛けながらツノ太郎が楽しそうに紅茶を飲んでいる。私はごろごろとストライプのソファの上でのたうち回った。
「人の子よ。今日はやけに気が立っているな。普段のお前らしくもない」
「ツノ太郎、ちょっと悩みを聞いてもらってもいい?」
「いいだろう」
今日もなんだかご機嫌なツノ太郎が指を鳴らすだけでティーセットを台所に移動させる。なんだかこの情景見慣れてきた自分がいるぞ。私もちょっとは心臓に毛が生えたかな。
「シルバー先輩はとある人の護衛についていて……『マレウス様』だったかな。その人はディアソムニア寮の寮長だから、ツノ太郎も知ってるよね?」
ツノ太郎は余裕の笑みでゆっくりと頷いた。
「ああ、よく知っているとも」
ああ、じゃあツノ太郎も知っている人――いや妖精に、こんなみっともない気持ち抱えてるって知られるのか。なんだか恥ずかしいような、みっともないような。それでも抱えた気持ちに嘘がつけないように素直に育てられたのだからもうどうしようもない。
「私……すごく最低なんだけど、そのマレウス様に嫉妬してるっぽくて」
「ははっ!」
ツノ太郎は口元に手を当ててまたロッキングチェアごと後ろに倒れそうになっている。しかも肩まで震わせているとか、やっぱり私の気持ちってそういうものなのかあ。
「笑っちゃうでしょ。でも、本当に羨ましいんだよ! ……あんな素敵な人に守られるくらい高貴なんだから仕方ないと思うし、一つ間違えたら国際問題にもなるってセベクも言ってた」
自分でも分かっているんだ。シルバー先輩はただ任務を全うしているだけだし、その対象である「マレウス様」とやらがそうするに値するような人物だってことは。
「でも、なんか独り占めされてるみたいで……くそう! 自分がどんどん嫌になる!」
両手で鷲掴んだ頭では分かっていても気持ちでは全然納得できない。私の心の狭さはまだ蚊やダニの胃袋の方が広いと思える位じゃないだろうか。
そんな気持ちに悶々としている私とは全く違って、ツノ太郎は楽しそうに笑いっぱなしだ。ああ、そんな風に能天気に笑って吹き飛ばしてくれるととても心が軽くなるよ。うん。
「そんなことを堂々と言えるお前は本当に面白いな。もっと聞かせろ。ディアソムニア寮の寮長に言いたいことは、全て僕に聞かせるといい」
ツノ太郎は普段から自分から何かを進んですることが少ないのに、私の言い分を聞こうというのは珍しい。それくらい機嫌がいいんだろうか。遠慮なく気持ちに甘えさせてもらうことにして、私の口はべらべらとディアソムニア寮の寮長への不満で連ねられる、はずだった。
「えー、でも嫉妬してるのは私の好きな人を独占してるみたいで嫌ってくらいで。それ以外は特に感想はない」
正直、シルバー先輩がマレウス様、マレウス様って言うからちょっと悔しくなっただけで、それ以外についてはどうとも思っていないのが実情だ。そもそもシルバー先輩は私の彼氏でも何でもないのに嫉妬するのもお門違いなのだ。
「あ、でもセベクの声はどうにかして下げてもらうように言ってもらえないかなとは思う」
「ああ見えてもあやつは殊勝なだけだ。声の大きさは、僕も煩わしいと思うことはあるが」
なんだ。セベクのいいところ、ツノ太郎も知っているんだ。
「確かに。セベク、授業の合間でも『若様が授業を受けていらっしゃるのに、僕らが休むなど1000年早い!』って言ってた。マレウスさんのこと、すごく好きなんだってわかる」
「ふっ……お前は物まねが上手いな」
また笑ったツノ太郎はご機嫌なのか、掌を一度鳴らして私の周りに花を降らせ始めた。あ、この白い花シルバー先輩っぽくていいな。後で押し花にしよう。
「セベクもシルバー先輩も慕ってるということは、とっても仕えるのにふさわしい人物なんだろうね。でもそうなると、ますます私の好きな人を独り占めにされる。……勝てっこないや」
ああ、本当に憧れっていうのは困るんだ。こんな恋焦がれるちっぽけな存在を霞ませてしまうから、こっちがいくら頑張っても振り向いてはくれない。まあ、私も憧れと恋がごちゃごちゃになっている節はあるから、一概に言えないんだけど。そもそも彼女面すること自体がだめなんですけど。
「それはどうだろうな」
「え?」
ツノ太郎は怪しく光るライムグリーンの瞳をゆっくりと細めた。まるで蛇が獲物を狙っているみたいだ。
「護衛はあくまで主人を守る者。お前がシルバーに向けている情とは全く異なる。だから、僕はお前の思いがせいぜい通じるよう連絡を待つとしよう」
花が降りやむとツノ太郎が席を立つ。今日のところはもうこれで帰るらしい。私も立ちあがって、見送ることにした。
「それと、今後も寮長に何か言いたいことがあれば、僕に言うようにしろ」
「わ、分かった!」
元気がいいな、とツノ太郎は鼻で笑った。なんだよ、ちょっと気合が入っちゃっただけじゃないか。
「それではおやすみ、人の子よ」
そう言ってツノ太郎は消えた。いつも思うけど、あの移動魔法ってちょっと車酔いみたいな気分になるのに、ツノ太郎やシルバー先輩は気持ち悪くならないんだろうか。
「マレウス様たちを守るために俺は訓練を積んでいる」
気に食わない。非常に気に食わない。
シルバー先輩がマレウス様と尊敬している人物(というか妖精)なのだから、きっとそれはそれは素晴らしい人格の持ち主で、妖精らしい美しい見た目をしていて、魔力も秀でているに違いない。そして、「マレウス様」がいなければシルバー先輩はこの世にいなかったというのだから、私はこのマレウス様と「親父殿」に感謝しなくちゃいけない。……でもやっぱり。
「気に食わないー!」
そう叫んだ私とは対照的に、談話室のロッキングチェアに腰掛けながらツノ太郎が楽しそうに紅茶を飲んでいる。私はごろごろとストライプのソファの上でのたうち回った。
「人の子よ。今日はやけに気が立っているな。普段のお前らしくもない」
「ツノ太郎、ちょっと悩みを聞いてもらってもいい?」
「いいだろう」
今日もなんだかご機嫌なツノ太郎が指を鳴らすだけでティーセットを台所に移動させる。なんだかこの情景見慣れてきた自分がいるぞ。私もちょっとは心臓に毛が生えたかな。
「シルバー先輩はとある人の護衛についていて……『マレウス様』だったかな。その人はディアソムニア寮の寮長だから、ツノ太郎も知ってるよね?」
ツノ太郎は余裕の笑みでゆっくりと頷いた。
「ああ、よく知っているとも」
ああ、じゃあツノ太郎も知っている人――いや妖精に、こんなみっともない気持ち抱えてるって知られるのか。なんだか恥ずかしいような、みっともないような。それでも抱えた気持ちに嘘がつけないように素直に育てられたのだからもうどうしようもない。
「私……すごく最低なんだけど、そのマレウス様に嫉妬してるっぽくて」
「ははっ!」
ツノ太郎は口元に手を当ててまたロッキングチェアごと後ろに倒れそうになっている。しかも肩まで震わせているとか、やっぱり私の気持ちってそういうものなのかあ。
「笑っちゃうでしょ。でも、本当に羨ましいんだよ! ……あんな素敵な人に守られるくらい高貴なんだから仕方ないと思うし、一つ間違えたら国際問題にもなるってセベクも言ってた」
自分でも分かっているんだ。シルバー先輩はただ任務を全うしているだけだし、その対象である「マレウス様」とやらがそうするに値するような人物だってことは。
「でも、なんか独り占めされてるみたいで……くそう! 自分がどんどん嫌になる!」
両手で鷲掴んだ頭では分かっていても気持ちでは全然納得できない。私の心の狭さはまだ蚊やダニの胃袋の方が広いと思える位じゃないだろうか。
そんな気持ちに悶々としている私とは全く違って、ツノ太郎は楽しそうに笑いっぱなしだ。ああ、そんな風に能天気に笑って吹き飛ばしてくれるととても心が軽くなるよ。うん。
「そんなことを堂々と言えるお前は本当に面白いな。もっと聞かせろ。ディアソムニア寮の寮長に言いたいことは、全て僕に聞かせるといい」
ツノ太郎は普段から自分から何かを進んですることが少ないのに、私の言い分を聞こうというのは珍しい。それくらい機嫌がいいんだろうか。遠慮なく気持ちに甘えさせてもらうことにして、私の口はべらべらとディアソムニア寮の寮長への不満で連ねられる、はずだった。
「えー、でも嫉妬してるのは私の好きな人を独占してるみたいで嫌ってくらいで。それ以外は特に感想はない」
正直、シルバー先輩がマレウス様、マレウス様って言うからちょっと悔しくなっただけで、それ以外についてはどうとも思っていないのが実情だ。そもそもシルバー先輩は私の彼氏でも何でもないのに嫉妬するのもお門違いなのだ。
「あ、でもセベクの声はどうにかして下げてもらうように言ってもらえないかなとは思う」
「ああ見えてもあやつは殊勝なだけだ。声の大きさは、僕も煩わしいと思うことはあるが」
なんだ。セベクのいいところ、ツノ太郎も知っているんだ。
「確かに。セベク、授業の合間でも『若様が授業を受けていらっしゃるのに、僕らが休むなど1000年早い!』って言ってた。マレウスさんのこと、すごく好きなんだってわかる」
「ふっ……お前は物まねが上手いな」
また笑ったツノ太郎はご機嫌なのか、掌を一度鳴らして私の周りに花を降らせ始めた。あ、この白い花シルバー先輩っぽくていいな。後で押し花にしよう。
「セベクもシルバー先輩も慕ってるということは、とっても仕えるのにふさわしい人物なんだろうね。でもそうなると、ますます私の好きな人を独り占めにされる。……勝てっこないや」
ああ、本当に憧れっていうのは困るんだ。こんな恋焦がれるちっぽけな存在を霞ませてしまうから、こっちがいくら頑張っても振り向いてはくれない。まあ、私も憧れと恋がごちゃごちゃになっている節はあるから、一概に言えないんだけど。そもそも彼女面すること自体がだめなんですけど。
「それはどうだろうな」
「え?」
ツノ太郎は怪しく光るライムグリーンの瞳をゆっくりと細めた。まるで蛇が獲物を狙っているみたいだ。
「護衛はあくまで主人を守る者。お前がシルバーに向けている情とは全く異なる。だから、僕はお前の思いがせいぜい通じるよう連絡を待つとしよう」
花が降りやむとツノ太郎が席を立つ。今日のところはもうこれで帰るらしい。私も立ちあがって、見送ることにした。
「それと、今後も寮長に何か言いたいことがあれば、僕に言うようにしろ」
「わ、分かった!」
元気がいいな、とツノ太郎は鼻で笑った。なんだよ、ちょっと気合が入っちゃっただけじゃないか。
「それではおやすみ、人の子よ」
そう言ってツノ太郎は消えた。いつも思うけど、あの移動魔法ってちょっと車酔いみたいな気分になるのに、ツノ太郎やシルバー先輩は気持ち悪くならないんだろうか。